第二十六話 なんで私が暴走族に?
前回のあらすじ
自身の掌光病、『入替』を駆使して、西尾との勝負に決着をつけた山根源!
しかし!それは、西尾の関心を引いてしまう力であった!!
2018年 5月 東京都世田谷区 とある公園にて....
「気に入った!ジブン、『愛暗無狂』に入れ!!」
「.........は?」
俺はコイツの、目の前の暴走族族長である西尾の言ったことの意味を理解できずにいた。
....いや、正確には理解しないようにした。
(な、なななな、なんでそうなるゥ!?)
あまりに突然の勧誘に、俺の脳が状況を処理しきれていない。
しかし、このままいけば、確実に俺の未来がよくない方に傾くことだけは瞬時に理解できた。
そんな、半混乱中の俺を余所に、西尾はベラベラと続けている。
「いや~実を言うとなぁ、今度、関東最強と謳われとる、『裂撃斬弩・悪威』っちゅうトコとドンパチやり合うことになってんねん。そこでな!ウチも戦力補強したいと思ってたところだったんや!!丁度ええやろ!!な!?」
「ヒャッハァー!!よかったなアンちゃん!丁度良かったなァ!!」
(いやだ、絶対嫌だァーー!!)
こんなくだらないエロ本がキッカケで、そんな危険な抗争に巻き込まれてたまるか!
俺は持てる全ての勇気を振り絞り、この悪質な勧誘を断ろうとした。
「え、えっと~、丁度いいのはそちらの都合であって、自分的には丁度良くないみたいな.....アハハ、」
と、断りかけた俺に西尾が顔を近づけてくる。
「入るよな?ん?」
「あ入りますハイ。」
(......あーあ、終わっちゃった。俺の平和な人生、ここで終わっちゃった...。)
ふと、目の前が真っ白になった気がした。
そして直後に俺を襲ったのはどうすることもできない絶望感。
どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないんだ?
俺はただ健全な男子中学生として、少しばかりの癒しを求めていただけじゃないか!
なのに、なのにどうして...!
「....っていうかドンパチって、どこでやるつもりなんですか?このご時世、そんな大きな抗争難しいんじゃ...?」
俺は絶望の最中、一般人として至極当然の事を聞いた。
西尾は手をブンブンと横に振りながら、大袈裟に口を開いて見せた。
「逆や!!この戦争中の今だからこそ、大人たちはワシらみたいな族に構ってられなくなんねん!ちなみに会場は多摩川河川敷や。」
(.....なるほど。確かに戦争の長期化につれて、少しずつ治安の悪化が見えてきたが、こういう輩たちも元気になり始めたのか...。あーこの国の未来が心配すぎる。....いや、今心配すべきなのは自分の身なんだけど。)
というわけで、俺は半強制的に『愛暗無狂』に加入することになり、来る『裂撃斬弩・悪威』との抗争に参戦することになってしまった。
俺は西尾に、一週間後の午後6時に多摩川の河川敷に来るように一方的に命令され、一旦解放された。
当然、そのころには本来の目的だった、ピンクの雑誌を買う元気など一切なくなっている。
俺はただ茫然と、アスファルトのシミを数えながら、手ぶらで帰るのであった。
(ごめん、優人。俺は今、エロ本どころじゃなくなりました....)
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一方そのころ....とある空き地にて....
「ほう、『愛暗無狂』はここに来て新戦力を加えたか。しかも掌光病罹患者....」
その男は黒々とした、その角ばったメガネをクイっと持ち上げる。
「......よし、決めた。お前らはこの辺の掌光病罹患者の情報を集めろ。俺達も新たな戦力を迎えることにする。俺達のモットー、油断強敵だ。」
眼鏡をかけたその男が一声かけると、周りに整列した数十人の男たちが雄々しい声を張り上げる。
「「「了解ですッ!」」」
その数十の声を一身に受けた眼鏡の男はゆっくりと立ち上がり、空き地の外へと歩き出す。
「さぁ行くぞ。関西の田舎野郎共を東京から追い返す。そして俺達、『裂撃斬弩・悪威』が関西に侵攻だ。」
「よっしゃー!!坂東さん最高!!」
「やっぱ負ける気しねぇッ!!」
「そういえばこの間ニュースになってた掌光病のヤツが、この近くに住んでるってネットでみたぞ!」
後ろで騒々しく歓声を上げる男達を尻目に、坂東と呼ばれるその男は不敵な笑みを浮かべた。
(....愛暗無狂、お前らがどんな戦力を組み込もうが関係ない。俺には、全てがお見通しだ。)
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