EP.24 人型悪獣
前回のあらすじ
紛失したリュックを探していたオーゴが見つけたものは、自分のリュックを漁る一体の悪獣。
しかしそれは、異形の悪獣、『人型悪獣』であった。
悪王討伐遠征7日目...
早朝...
僕は思わず目を見開いていた。
視線の先に居たそれは、とても見慣れた狼型なんかではなかったのだ。
もっと異質な形であり、そして更に、もっと見覚えのある形状.........
僕はこんな型の悪獣なんか見たことがない。
(なんだ、アレは...!アレは、狼型なんかじゃない!あれはまるで...まるで、『人型』じゃないか...!!)
そう、僕の目の前に佇んでいたソレは、僕たちの良く見慣れたシルエット。
...つまり、人の形をしていたのだ。
人型と言っても、体は悪獣のように黒鉄で構成されていて、とても生物だとは思えない。
それこそ、二足歩行になった悪獣と言うべきだろう。
(どういうことだ....?あんな型の悪獣なんて見たことも、聞いたこともない!!そ、それにしてもあの人型は、ここで何をしているんだ?ずっとしゃがみこんで何かをしてるけど...)
僕はその人型悪獣に気づかれないように、ひっそりと観察を続けた。
人型は僕に背を向けたまましゃがみこみ、何か作業をしているようだった。
その光景は異様そのものである。
そして、僕はその時に気が付いた。
その悪獣が何をしているのかを。
(ん.....?アイツが手に持っているのは....リュック!?)
そう、人型がしゃがみこんでいじっていたのはリュックであったのだ。
それは紛れもない、僕の失くしていたリュック。
(一体何のために...?何をしている....?わざわざリュックを奪うのなら、何故直接攻撃してこなかったんだ...?)
僕の頭の中に、ふつふつと様々な疑問が浮かぶ。
だが、今はそんなこと気にしている場合ではなかった。
この異常事態、寝ているあの二人にも伝えなくては....!
僕はそう思い、一歩ずつ静かに後退しようとした。
...その時だった。
僕の目線の先の『人型悪獣』が立ち上がり、こちらを振り返ったのは。
「!!」
悪獣は僕の方を振り返ると、あからさまに動きを止めた。
気づかれたんだ。
僕は思わず声を漏らす。
「...クソッ!」
僕はしゃがんだままその人型悪獣の顔を睨みつける。
その人型悪獣の顔面には、悪獣特有の赤く光る、大きい眼球のような球体がついていた。
今までの悪獣のパターンからして、その球体は目の役割を担っているのだろう。
しかしその人型の顔面は、決定的に人間と違う所があった。
一つ目なのだ。
黒鉄で構成されたその顔面に、大きな赤い球体が一つだけついていた。
その赤い球体に黒目があった訳ではないが、僕は直感して分かった。
コイツは今、僕を見ていると。
「やるしかないって事かよ....!」
僕は腰の剣を抜き、こちらを凝視したまま動かない人型の前にスクリと立ち上がった。
コイツも他の悪獣と同じなら、きっと間髪入れずに攻撃をしてくるハズ。
僕は唾を飲み込み、剣を構えて、いつでも反撃に出れる体勢を取る。
僕と人型悪獣が対峙したその場に、一瞬の静寂が訪れた。
夜風が僕の髪を撫で、遠くで夜の終わりを告げるような鳥のさえずりが聞こえる。
月は徐々に見えなくなり、代わりに地平線に、太陽が姿を現し始めた。
この異常な雰囲気に飲みこまれまいと、早くなっていく心臓の音が聞こえる。
目の前にいる人型は一ミリも動くことなく、僕を見定めるように眺めていた。
そして、直感した。
(この悪獣は、今までと何か違う...!)
それは見た目だけでは無い。
もっと根本的な所から、今まで戦ってきた悪獣達と何かが異なっているのだ。
僕がそんなことを考え、自分の頬に冷や汗が滴っていると気づいたその時、一瞬にも永遠にも感じられた静寂が打ち破られた。
それは目の前の、人型悪獣によって。
「対象識別可能?......可能。所属、ルート国。識別名、オーゴ。」
僕の耳に届いたその音は、間違いなく人の言語であった。
その男とも女とも分からないような声は、確実に人型悪獣から発せられた声であったのだ。
「....コイツ、喋るのか!!しかも、僕の名前を....!」
僕は更に警戒心を高め、無意識の内に一歩後ずさりをしてしまっていた。
この悪獣に見つめられていると、加速度的に自分の心拍数が上がっているのが分かる。
「命令達成確率低下。現在実行可能ナ対処方法ヲ計算中....。計算完了。」
しかし悪獣はそんな僕の状態なんかお構いなしに、淡々と言葉を並べ続ける。
その言葉には、到底感情と言ったものが込められていない、鋼のように冷たい文字の羅列だ。
そして次の瞬間、人型悪獣は今まで以上に冷たい音声でこう喋った。
「計算結果、対象ノ排除。」
続く!!
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