第二十二話 山根源の(彼女の)消滅
前回のあらすじ
愛日の「消滅」をなんとかして防いでみ隊!
「愛日の掌光病で消せない物を見つけよう!」と提案してから2時間後...
「遅れてごめん!俺も見つけてきたぜ!」
優人が遅れて愛日の家に戻ってきた。
先に見つけてゲームをしていた俺達3人は、一斉に優人の方を振り返る。
「よーし、じゃあ皆揃ったなー!....それでは、第一回!チキチキ!愛日の消滅を防げるかな?!最強防衛大会スタートだ!」
「本当にやんのぉ?」
俺達は各々、自信ありげな表情を浮かべる。
まぁ愛日は相変わらず乗り気ではないようだが。
「それじゃあ!トップバッターは私が行くね!」
まず最初に名乗りを上げたのは馬酔木さんであった。
「私が持ってきたのは....じゃじゃーん!これです!」
彼女がリュックから取り出したもの、それはフライパンであった。
「真紀ちゃん、有我は車を真っ二つにしたんだぜ?フライパンなんて余裕じゃないか?」
優人がそのフライパンを不安げに見つめる。
「ふっふーん。優人君は分かっていないな~。....これは、ダイヤモンドコートなのです!」
馬酔木さんは自信ありげにフライパンを突き上げた。
説明しよう!
ダイヤモンドコートとは、フッ素樹脂の中に人工ダイヤの粒子を混ぜることで、より高い耐久性を実現したフライパンなのだ!
馬酔木さんは自信満々だが、愛日の方はやはり心配そうだ。
「さぁさ!愛日、このフライパンに向かって消滅を使ってみて!」
「本当に良いの....?そのフライパン使えなくなると思うけど....」
「大丈夫!これもう使わないってお母さんも言ってたし!」
馬酔木さんもなんだか楽しそうに目を輝かせて、自信満々にフライパンを体の横に構える。
愛日も仕方がなくそのフライパンに手の平を向ける。
「じゃあ、やるよ?」
「ばっちこーい!」
そして、愛日の手の平からフライパンへの空気が一瞬揺れた!
これは消滅がフライパンの方へ伸びた合図だ!
俺達はすぐさまフライパンを確認する。
そこには....
「あ、空いている....。穴が....!空いている....!」
手の形に穴が空いたフライパンがあった。
愛日はため息をついて腰に手を当てる。
「だから言ったのに...」
「やはりフライパンでは無理であったか....。しかしフライパンは我が四天王(三人)でも最弱!次は俺が行こう...!」
フライパンを抱きかかえる馬酔木さんを励ましながら、今度は優人が名乗りを上げた。
そして彼の足は玄関へと向かう。
「おいおい、外行くのか?」
「あぁ。ついてきてくれ。」
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優人は俺たち三人を引き連れて、とある解体現場のような場所に来た。
「俺の考えたものはこれだ!」
彼が指さした先、そこには....
コンクリートの廃材が積み重ねられていた。
「このコンクリートだ!」
愛日は少し遠慮したような顔でコンクリートを眺める。
「これって勝手に手をだして良い物なの...?」
「もともと今解体されてる家に使われてたコンクリートで、今じゃただの廃材だから多分大丈夫!(適当)」
優人は無責任に説明を投げだした。
それでも愛日は穴をあけてしまった時のことを心配しているようだ。
「けど、コレやっぱり消したりしたら...」
「大丈夫だって!少しだったらバレないよ!先っちょだけでいいから!先っちょなら大丈夫でしょ?!先っちょ!先_」
「優人君?一回黙って?」
「ごめんなさい。」
愛日はため息をつくとそのコンクリートの廃材に手の平を向ける。
「一回だけだからね...?」
彼女はそう言うと、消滅を使う。
再び、空気が揺れ、シュッという風を切るような音が聞こえた。
コンクリートには、
穴が開いていた。
「馬鹿な!最高硬度のコンクリだぞ...!?」
優人がコンクリートに空いた穴をまじまじと見ながら嘆く。
「だから言ったでしょ。消滅は硬さとか関係なく全部消せるって」
愛日は当然かのように髪を払う。
(これは確かに強力だな....。しかし!俺の作戦は通用するかもしれないぞ...)
俺は満を持して声を上げた。
「最後は俺の番だ!愛日、そこに立って居てくれ!」
俺はバックから、普段から愛用しているまな板を取り出した。
「おい源、コンクリでも無理だったんだぜ?まな板なんて絶対無理だろ。」
「分かっていないな、優人よ。俺は硬さで勝負をしない。俺の作戦は....距離だ!」
愛日は心底興味がなさそうにぼうっと俺達の会話を眺めている。
「...よし!じゃあ俺が距離を取るから愛日はそこに居てね!」
俺は彼女にそう言い残すと真っすぐに道を進み距離を取る。
そして、およそ100mほどの距離を取った後、そのまな板を自分の横に掲げた。
「愛日ー!もういいぞー!このまな板めがけて消滅を使ってみてー!」
(つまり俺の作戦はこう!硬度が意味をなさない消滅の前では、どれだけ硬い物を持って来ようと意味がない。つまり俺は、距離で消滅の効果をなくすのだ!!)
「見せてもらおうか!消滅の症状の実力とやら__」
シュッ
(.....ん、んん?)
今、確かに俺の横で空気が震えた。
そして、あの、コンクリートが消えた時と同じ音が聞こえた。
俺は恐る恐る横に掲げたまな板を見る。
そこには、今までの貧乏飯を共にした愛用のまな板の、見るに堪えない痛ましい姿が映し出されていた。
「空いている....だと....」
100m先では愛日がこちらに手を向けて立っていた。
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「それにしても、有我の掌光病チートすぎないか?硬さも関係ない距離も関係ない、で手の平の延長線上全部消すって....、どっかの位置を入れ替えるだけの山根さんも見習ってほしいよ。」
「『入替』は使い勝手がいいんだ!お前みたいな下衆がこの症状を持っていたらきっと犯罪に使用してるぞ。」
愛日の家までの帰り道、俺達は掌光病について議論をしていた。
前方を歩いている女子二人は、もうどの店のスカートが可愛いだとかどこの高校の制服が可愛いだとか俺達がついて行けないカワイイ世界の話をしている。
それでも、俺達男はまだ掌光病の話を続けている。
「掌光病って知れば知るほど謎だよなぁ。」
「なぁ。俺も何かしらの症状を持ちたかったぜ。カッコいいし。」
「お前なぁ、それは掌光病罹患じゃないから言える台詞だ。俺が小学校不登校だった理由も知ってるだろ?」
俺が反論すると優人は少し申し訳なさそうに頭をかく。
(でも、この世で一番デタラメな掌光病は、ほんとに愛日の『消滅』かもしれないな。)
なんて考えていると、一つ、以前から気になっていたことを思い出した。
俺は隣を歩く優人に問いかける。
「なぁ、優人。お前のお姉さんって掌光病罹患者だったよな?」
「ああ、そうだぜ?名前は『黒江 ユリ』だから、もし中嶋勇みたいにテレビに出てたら覚えといてくれよな。」
「その、お姉さんの症状はどんなものなんだ?」
俺は何気なく聞いたが、優人は何かを思い出したのか立ち止まってしまった。
「ちょっと待て....!そうだ!姉貴の症状は、『遮断』!!どんなものでも防いじゃう壁を作り出すんだ...!」
「ど、どんなものでも...!?」
「ああ....。俺が何度姉ちゃんを怒らせてその壁に潰されかけた事か....」
優人は過去の記憶を思い出したのか、身を震わせた。
「じゃあ、それって、なんでも貫通させる愛日の『消滅』と、なんでも防ぐ優人のお姉さんの『遮断』が衝突したら....」
「「ゴクリ....」」
俺達は想像の範疇を超えたその議題に、思わず固唾をのんだ。
「矛盾だ....!きっとこの世に存在してはいけないなにかが生まれるぞ...!」
「あぁ、愛日とお前のお姉さんを会わせない方がいいかもしれない....!」
俺達が二人で震えあがっていると、そんな世界の危機なんか露知らずな愛日が、こちらを怪訝そうな目線で睨んできた。
「ねぇ真紀、また男たちがしょうもないことを考えてるわよ....」
「そうなのかなぁ?」
「絶対そうよ!見てあの怪しげな表情....」
俺達は愛日の冷めた目線に感づき、この世界の危機を考えることを一旦放棄した。
優人が気を紛らわすように口を開く。
「ま、まぁそもそもその二人が会わなければいいんだ....。けど、その二人とこれだけの接点を持ってる俺って....うぅ....」
優人は自分で自分を納得させようとして、それに失敗してしまったようだ。
確かに、自分の姉が「遮断」の掌光病を持っていて、友人が「消滅」の掌光病を持っているなんて、まぁ災難としか言えないな。
「落ち着けよ優人....。今は愛日の家に帰ってマリオカートで何のキャラを使うかだけ考えてようぜ...」
「あ、あぁ、そうだな。俺はノコノコを使う.....」
こうしてこの世界にまた一つ新たな謎が生まれたのであった。
消滅と遮断がぶつかると何が起こるのか?
俺達はこの謎の答えを知る日が来るのだろうか.....。
「にしてもお前、ノコノコは渋いな...」
※山根源は今も穴の空いたまな板で調理しているそうです。




