EP.22 オーゴの憂鬱
前回のあらすじ
この世の全ての食材に感謝を込めて、いただます!
晩飯後....
「ふぃー、食った食った。お腹いっぱいだよ。」
僕は空になったお皿を地面に置く。
僕の横で寝ころんだシモがゆっくりと目を閉じた。
「シモはおなか一杯になったから、今日は寝るね.....スピー.....」
「何寝てんじゃ。片付けもあんだよ。」
クレマがシモの膨れたおなかを叩く。
シモは苦しそうな声を漏らしながら体を起こした。
「そんじゃあ、ウチは食器かたすから、シモは調理器具、オーゴはその鹿のまだ食えそうな肉を取ってくれ。」
「「うぃー。」」
僕とシモはクレマの指示に従って片づけに取り掛かる。
僕は鹿さんの死体から、明日以降も食べれそうな肉をそぎ取っていく作業をしていく。
........ふと、ある疑問が脳内に浮かんだ。
「ねぇクレマ。クレマの巻き戻しってさ、死んだ生き物に使ったらどうなるの?」
それは実に単純な疑問。
触れた物の時間を巻き戻すクレマの掌力、『巻戻』を死体に使った場合、その対象は果たして生き返るのか...!?
クレマは片付けの手を一旦止め、僕の方を振り返る。
「どうって、そりゃあ、.....あれ?どーなるんだ?確かにやったことねぇな。」
クレマは自分の顎を手でさすりながら考えている。
「じゃあさ、試しにこの鹿で試してみようよ、死んでからまだ3時間も経ってないし。......もし生き返ったら凄い事だよ......!」
「まさかな....、けど、やってみる価値はあるか。」
クレマが鹿の死体に近づく。
シモも僕たちが何か面白そうなことをしているのに気が付き、トコトコと近づいて来た。
「じゃ、じゃあ、やるぞ....?」
クレマがゆっくりと鹿の死体に触る。
僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
クレマが巻戻の力を使うと、鹿の死体は一瞬発光した!
そして、鹿は....!!
「戻った.......」
「.....が、やっぱり死んでるな。」
クレマが手を離した鹿の体は、僕たちが解体する前の綺麗な状態になっていた。
.....しかし、やはり鹿が生き返ることは無かった。
「け、けど、なんか少し安心したよ。一度死んだものを生き返らせるなんて人間ができていい事じゃない気がするし....。」
クレマは再び片付けに戻り、少し退屈そうに口を開いた。
「まぁ何となく予想はできてたけどな。ウチの『巻戻』は、状態は巻き戻せても、掌力を使った後のスタミナも回復できねぇって知ってたし。....きっとそういう概念的なとこまでは作用できねぇんだろうな~。」
クレマはそう言い残すとスタスタ片付けの方に帰ってしまった。
まぁそこまで神がかっていない方が安心できる。
クレマよ....、人は完璧じゃない方が魅力的なんだぞ。
僕も片づけを再開しようとした時、シモが何やら大きな声で喚いた。
「....ねぇ!」
僕とクレマはシモの方を振り返る。
彼は何やら、少し苛立ったように体を震わせて立っていた。
そしてシモが再び口を開く。
「おなかすいたんだけど!!」
僕とクレマは、予想外のその言葉に拍子抜けした。
「お腹がすいたって....。あのなシモ、お前は成長期かもしれないが、食えばいいってもんじゃ__」
グぅ~~
....ん?
なんだ?
僕の言葉を遮るように変な音が聞こえた。
それも、僕のお腹から。
この音、もしや.....!
「は、腹が、へ、減ってる......だと....!?」
その時、僕の体の中で異常事態が発生した。
(おいおいまてまて僕はさっき飯を食べたばかりだ。まぁ18歳の青年は食欲旺盛で普通かもしれないが、先ほどあそこまで満腹になっていたのに今空腹になっているのはおかしいだろう!!)
僕が自分のお腹と対話をしていたその時!
クレマが気づいたように口を開いた!!
「鹿の体巻き戻したから、ウチらの腹の中に会った鹿の肉が巻き戻ったんだ...」
な、なななななななな
「なにぃーーーーー!?」
(時間を巻き戻したら、一回体の中に入った物も戻されるのかよ!!ってかどうゆう仕組みだこれ!!気づかない間に口から肉出てた!?それとも腹の中から肉に瞬間移動してんの!?じゃあ今鹿についてる肉は僕たちが一回咀嚼したものなの!?キモチワル!いやけど時間は戻ってるからこの肉は腹に入ってなくて....、いや!入ってたから!!間違いなく!!.....キョエーーーーーー!!)
「キョエーーーーーーーー!!」
「ねぇクレマ、オーゴが空腹でおかしくなっちゃった。」
「アイツはほっとけ。...ってか、これって、もう一回調理して食わないとだめなのか....?」
頭の中に大量の考察が渦巻き、僕は半狂乱になってしまう。
その僕の横でクレマが絶望的な顔をし、クレマの袖を引っ張ったシモが早く料理しようとせがんでいる。
(キョエっ、.....おっと、いけないいけない。僕としたことが半狂乱になるところであった。)
本当は今にでも暴れ出したいところだが、ここはリーダーとしてシモの模範になる行動をとらなくてはいけない....!
となれば今するべき行動は一つ...!
「ふぅ.....まずは精神を落ち着かせて....」
バサァッ!
「よし。寝よ。」
「....うん。」
クレマと僕は至って冷静に寝床を作り始めた。
なんという事でしょう!
さっきまで吹き曝しであった地面に寝袋と掛け布団が...!
「そんじゃ、いい夢みろよ....。」
「あぁ....。」
こうして忙しかった一日は幕を閉じ__
「ちょっと!!二人共なんで寝ようとしてんの!!」
「ブッフォゥグアッ!!」
シモが横になった僕の腹にダイビングをかましてきた。
僕はその衝撃でのたうち回る。
「お、おいクソガキィ!もし胃袋の中に鹿のお肉が入っていたら、間違いなくキラキラだったぞ!」
しかし、シモは僕の寝床の上で駄々をこね続ける。
「お腹すいたお腹すいた肉が全部でたー!!」
クレマがシモのダダに耐えかねたのか、身を起こして反論をする。
「あの鹿の肉は一回ウチらの腹ン中入ってたんだぞ!!さっきまで満腹だったのに今空っぽって.....もう今この感覚が気持ち悪くて食欲わかねぇよ!!ってか今からもう一回飯作りたくねぇ!」
「けどお腹減ってるからシモ食べたい!!」
シモとクレマの口論は続く.....
そして数分後......
「お前はアカデミーの時からいっつもそうだよな!!じゃあいいさ!食いたきゃ自分で調理して食え!!ウチは手伝わねぇけどな!!」
「クレマの意地悪!!いいよ!シモひとりで食べちゃうから!!」
(うぅ...この二人の喧嘩には巻き込まれたくない....ここは穏便に寝たふりで.....。ってあれ?シモ今から料理すんの?一人で?)
僕はシモが本当に料理をする気なのか気になってシモの方を振り返る。
「おい、シモ、どうやって料理する気...」
しかし、そこで僕の目に映った調理方法は、料理というにはあまりにも暴力的であった。
「うん?こうやって!」
シモはそう言うと僕の目の前で鹿の体に触れた。
「ぴとっ」
見る見るうちに赤く膨張していく鹿の体。
このイカレ少年は自身の掌力、『爆破』で肉に火を通そうとしやがったのだ。
「なっ!?ヤバい!!逃げろクレマ!!」
僕は急いで寝袋から出ようとするが間に合いそうにない!
せめてクレマだけでも....!!
僕はクレマの方に目を向ける!
「クレッ__!?」
彼女の寝袋はすでにもぬけの殻であった。
「サヨナラ、オーゴ。」
彼女は少し離れた木陰から、こちらに手を振ってきた。
「おいテメッ....!!なに自分だけ逃げてんだクソアマァ!!」
僕は今にも爆発しそうな鹿と、恍惚な表情を浮かべながらよだれを垂らしているイカレ少年の横で懸命に布団から這い出ようとしている。
その時!僕は自分の力を思い出す!
(はっ!!そうだ!!僕には入替の掌力がある!!こんな時こそ入替を使って逃げなくては....!!何か入れ替わるものを考えろ!考え_)
シモ「ぼーん!」
「ぼ?」
ボガァーーーーン!!!!
クレマ「汚ねぇ花火だぜ....」カチャ....
※爆散した鹿さんは後で美味しくいただきました。




