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ハンリベ  作者: 今木照
銃と悪、君と夏
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EP.21 オーゴ達の日常

前回のあらすじ


逃がしてはしまったものの、見事悪王幹部相手に勝利を収めたオーゴ達!

彼等は疲れを癒すために少し豪華な晩御飯を食べることに!

これは第1章完結目前の日常回である!




国歴248年  シオンと戦った次の日の夜......




「.....うし!今日は一旦ここら辺にして、晩飯でもひっ捕まえるか。」



森を抜け、少し歩いたところでクレマが足を止めた。


周囲は少しだけ暗くなり始めているし、狩りをするなら今のうちにしておく必要がある。



「今日は鹿がいいなー!」



「鹿かぁ....。あれ獣臭くない?」



シモが頭の上に指を立てて、鹿のジェスチャーをしている。


彼の大好物はパンだが、パンの次に肉が好きらしく、よく鹿肉を食いたがっている。


僕は牛肉が大好きだが、鹿の肉はなんだか独特の獣臭さがあって少し苦手だ。


だが、クレマはシモの希望を通すつもりらしい。



「まぁたまにはシモの願いも聞き入れてやろうじゃねぇか。今日は鹿狩りじゃあ~。」



「やったー!狩りなら任せて!」



シモは嬉々として小ジャンプを繰り返しながらはしゃいでいる。


しかし、クレマはそんなシモの頭にチョップを食らわせ、静止させた。



「シモは狩りダメだ!お前がやると焦げ臭くなって敵わん。」



「え~、焼く手間省けるのに~。」



確かにシモが狩ってきた動物は、大体が焦げてしまって可食部が少なくなる。


クレマはそう言うと、僕の方を振り返った。



「ってことで、オーゴ!ヨロシク!」 ニコッ



クレマは普段ならしないような笑顔でこちらに親指を立ててきやがる。



「.....クレマは美人だから許されてる部分が多いぞ....」



「ハハッ、知ってる。」




______________________________________________________________________________________________




「ほら~、お前たち~、お肉取ってきたぞ~。」



「「わ~い」」


ワチャワチャ


僕は目の前の草を触って、さっき狩った鹿の体と入れ替えた。


本来なら鹿の死体を引きずってこなきゃいけないのだろうが、入替の掌力があるとこういう時にラクチンだ。



「じゃあ、僕は狩りしてきたから!今日の仕事終わり!!」



僕はそう言って、シモとクレマが作ってくれていた焚き火の前でゴロンと仰向けになった。



(あー、お星さまが綺麗!あれがデネブ、アルタイル、ベガ!ウフフ)



「ほら、二人共ボサっとしてないでさっさと料理作って」



僕は寝ころびながらシモとクレマに催促する。


クレマが、ただでさえ鋭い目つきを更に尖らせて、僕を睨みつけた。



「お前が今度糞したらソレ巻き戻して腸の中に詰めてやるよ。....まぁオーゴに料理作らせるとクソ不味くなるし、二人でやるぞ。シモ。」



「いいよ!シモ料理好き!」



クレマはぶつぶつ言いながらも鹿の解体を始め、シモは焚き火にかかるように金網をセットしてくれていた。



....そう、実際この二人に料理を作らせた方がみんなの為なのだ。



僕はただの王子なので、今まで人生で料理なんかしたことがない。


全ての食事を使用人たちに任せっきりにしていた。


つまり僕は料理力が皆無なのだ。



この間僕が、川で釣った魚を料理した時なんかは本当に酷かった。


調味料は自然由来の物しか使用していなかったのにも関わらず、焼き終えた魚が到底自然界には存在しない色に発光していたのだ。


そのダークマターを、クレマが毒見と称して僕の口にねじ込みやがった後はしばらく原因不明の腹痛に悩まされた。



それ以降僕一人での料理は免除されているのだが.....


意外なことにシモとクレマの二人は料理の腕があるのだ。



特に驚きなのはシモ。


この子はこんなにもガサツで、狂犬じみた戦いをするような性格なのに、まるでどこかで料理を習っていたのかのように上手い。


これは将来いいお嫁さんになる。(確信)



ふと、星空を見ていると、なんだか眠くなってしまった。


まだご飯ができるまで時間もありそうだし、少し目を瞑っておこう.........。




Zzzz.....



_______________________________________________




「は~い!オーゴ!ご飯できたよ!」



シモが僕の顔を叩く。


僕はうとうとと目を開ける。



「んぁ?もうできたの....?」



体を持ち上げると、クレマが焼いた肉を3人分に切り分けていた。



「今日はシンプルに塩焼きだ。オーゴのバックに調味料が大量に入ってて助かるぜ。」



「僕は舌が肥えてるからね、しょうがないね。」



クレマは、「はいはいそーですか。」なんて受け流しながら僕とシモに肉を渡す。


さぁ、皆が座ったら、一緒に手を合わせて.....



「「「いっただっきまーす!」」」



僕たちは旅の疲れを癒すように鹿の肉を喰らう。


この瞬間がこの旅の至福だ。


まぁ僕は獣臭さが苦手なので、ちびちびと食べているが。




ふと、このお肉の元となった鹿さんの死体を見る。


鹿の死体をしばらく眺めたが、今回はそれほどの感情の起伏は起こらなかった。


.....けれど、確かにあの時、昨日シオンが死にかけていた時、僕の心には恐怖に似た感情が沸き上がっていた。


僕が命を奪うという事実、そのことに対してきっと僕は覚悟が足りていなかったのだと思う。


それをシオンにも見透かされていたし、シオンが逃げたという事を知った後、少し安堵してしまった自分もいた。


殺す相手が悪王の幹部であるのなら、このような自責の念に苛まれることは無いと思っていた。


けれど実際、人は人なのだ。


鹿を自分の手で殺しておいて、悪王の幹部を殺すことにはためらう。



(結局自分が弱いだけかな....)



クレマはあの時、少なくとも僕よりは殺すことに対して覚悟ができている様子だった(シモは.......きっとためらいなく殺すんだろうけど)。


僕は何となく、敵を「倒す」と思って戦ってきたが、それじゃあこの先の戦いでは通用しないのかもしれない。


僕は敵を「殺す」んだ。


....それを忘れないよう、僕たちのためにお肉となってくれた、この鹿さんに誓おう。



「鹿さん...僕頑張るよ....!」



そしてこの鹿さんのお肉に感謝を込めながら、一口ずつ噛みしめて食べるのだ....!


(モニュッ...モニュッ...)


ふとクレマが僕の皿を覗き込んだ。



「どうしたオーゴ、進んでねぇな。」



「オーゴが食べないならシモが食べちゃうよ?」



「だぁー!それはダメ!この肉は全部僕のもんだ!!」



こうして僕達は鹿さんを糧に英気を養うのであった。



続く!


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