EP.16 悪王幹部の実力
前回のあらすじ
オーゴが新しく編み出した必殺技、「剣投背中斬」でシオンの背後をとった!
悪王討伐遠征3日目 対シオン戦
「背後、取ったりっ」
僕の目の前に、シオンの無防備な背中がある。
彼はまだ僕の掌力を知らないし、対応はできなくて当たり前だが、ここまで上手くいくとは正直思っていなかった。
あとは僕の手で決着をつけるだけだ。
僕は勢いよく、シオンの背中に向かって剣を振り上げる。
その時....
「 なんてね。 」
シオンと目が合った。
その予想外の出来事に、体が固まって動かない。
シオンは脇の間から、銃口をこちらに向けていた。
(予測されていた...!?でも、一体どうして__)
「パァンッ!!」
至近距離で銃声が鳴り響いた。
今度は石では無く、僕に向かって。
「オーゴ!!」
少し遠くから、クレマが僕の名前を叫ぶのが聞こえた。
僕は.....
死んでいなかった。
しかし、瞬間的な激痛が右手に走る。
「クッ.....!」
僕は入替を使い、初めに隠れた倒木の影へと戻った。
右腕を見ると、肘の少し下から血がダラダラと垂れていた。
......しかし、ここまで綺麗に予測されるのはおかしい。
僕の掌力はヤツからしたら初見のはずだ。
「変な演技してゴメンね~。けど君が『入替』の力を持っていることはリサーチ済みなんだ。」
奴は僕が逃げ込んだ倒木の方へと笑いかけた。
僕達の情報がもう悪王側に漏れているという事か...?
けど、シモの爆破の掌力を見た時のリアクションはまるで初見のようだった。
という事は、知られている情報は僕だけなのか...?
いや、今はそんなことどうでもいい。
とにかく、入替を知られてたのなら今生きてるだけでもラッキーだ。
今から作戦を立て直して...
「ケドさぁ、君たち素人だよね。....ホラ、今も。」
唐突に、シオンが退屈そうに喋りだした。
彼はそう言うと、両手に持った拳銃の銃口を、シモとクレマの方へと向けた。
「マズイ....!」
身を隠していなかった二人は、銃口から射線を切ることができない....!
「バンッ バンッ!!」
二発の銃声が森に響き渡る。
「...ッ!!クレマ!シモ!」
僕は無我夢中で近くにあった石や草に触れた。
そしてそれをクレマとシモへと入れ替える。
「二人共!死んでない!?」
僕はすぐに二人の顔を見た。
「チッ....!なんとかな。腕を撃たれただけだ、このくらいウチの巻戻で治せる...。お前ら、撃たれた所をウチに見せろ....!」
「銃って痛いんだね~。けど何で頭狙わなかったんだろ。外したのかな?」
二人は相も変わらず元気そうに口を開く。
「二人共ぉ、生ぎででよがっだ~.....!」
僕は思わず涙を浮かべ、鼻水を垂らしてしまう。
猛烈に二人に抱き着きたくなったが、抱き着こうとしたらクレマに銃で撃たれた右腕を蹴られたので我慢することにした。
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今のところ、何故かシオンは追い打ちをかけてくる気配がない。
僕たちは一旦、奴から少し距離のある倒木の裏に隠れ、クレマの巻戻治療に専念することにしている。
それにしても、シオンと言うあの男、一体....
「おーい!君たち!今はその倒木の影に隠れてていいよ!ただ耳だけ貸してくれ!!」
奴が少し離れたところから声を張ってきた。
こんな状況で話しかけるなんて、一体何を考えているんだ....。
「君たちは本来、この数分間で何回殺されていたと思う?ワタシは今日、君たちを殺すつもりはないんだけどさぁ、このままこの調子なら、次は本気で心臓を狙うよ~?」
彼は相変わらず陽気な口調で話しているが、その内容が笑えない。
クレマが舌打ちをして、険しい表情をした。
「チッ....!やっぱりわざと致命傷を避けて撃ってたのかよ...。」
「頼むから失望させないでくれ!もっと楽しませてくれ!!」
奴はこの状況を、まるでお遊びのゲームかのように言い放つ。
しかし、こんなところで死んでいたら念願の黒髪乙女と出会うことは永遠になくなってしまう.....
「クソッ!こんな所で!一体どうすれば....」
僕は思わず地面を叩いた。
その横で、シモはのんきに雲を眺めている。
「アイツつよいよ~?オーゴの掌力は読まれたし、シモの爆破も避けるか防がれるし。....本当にここで死ぬかもね~。」
シモはまるで他人事かのように言い放った。
「死んでたまるか!こんな所で死んでいたら、悪王なんて(黒髪乙女も)夢のまた夢だ!」
しかし実際、奴を倒す手段が思いつかないのも事実だ。
あの50代位の外見と不釣り合いな運動神経、そして圧倒的な射撃能力と動体視力。
アレを突破できる作戦はあるのか__
「ある。」
僕の耳が、その二文字を捉えた。
その言葉を呟いたのは紛れもない、クレマだ。
「クレマ、あるって、何が?」
僕は身を乗り出してクレマに迫る。
「あいつを倒す方法はある。」
そう言い切ると彼女は自身のサングラスをおでこにかけ、僕とシモを見つめた。
彼女の表情からは焦りは消え、いつものように気怠そうで、面倒くさそうで、そして冷静そのものだった。
「耳の穴かっぽじれ。今から作戦を伝える。」
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