EP.14 二丁拳銃の男
前回のあらすじ
なんだかんだあった1日目を終えた一行。
あれから少しだけ時間が進み、悪王討伐遠征は3日目へ!
国歴248年 悪王討伐遠征3日目
「おい二人共、前を見てみろ。」
僕よりも10歩先に行くシモの、更に3歩前を歩いていたクレマが足を止めて、前方を指さした。
そこには、僕たちを待ち受けるかのように鬱蒼と茂る森が鎮座していた。
「わぁ、凄いね!森だ!」
「はぁはぁ.....わぁ、すっごーい、森や....。二人共歩くの早すぎ.....。」
シモは未だに元気そうな声色を保っているが、僕は声を絞り出すので精一杯だ。
僕は相変わらず二人の歩調について行けず、最後尾を定位置としてこの旅を進めていた。
しかし、この3日間で悪獣の襲撃にはそれなりに慣れてきた実感がある。
今の所、「狼型」「鳥型」「魚型」の三種類は簡単に対処できるようになっていた。
(まぁシモパワーが大きいけど。)
けれど、こんなに順調に旅を進めていても尚、クレマに油断の二文字は無いようであった。
彼女は僕たちに忠告をする。
「この先は森を突っ切るぞ。視界が悪いから注意して進むよーに。」
彼女はそう言うと、先陣を切って森の中に歩みを進める。
「らじゃー!早く悪獣出てこないかな~!」
その後を、何故かウキウキしているシモが軽快に付いていく。
「はぁ、森のマイナスイオンで癒されてこよ....。」
そんな調子で、僕たちは静かな森の中に足を踏み入れていったのであった.....。
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「ねぇねぇ、なんか暗いんだけど~クレマさ~ん。」
「っるせーなぁ。森なんだから薄暗いに決まってんだろ。」
「それにしても、全然悪獣でないね〜。つまんないなぁ。」
僕たちはひとりひとりの距離を縮め、急な襲撃にも対応できるような布陣で歩みを進めていた。
...............しかし、実際のところ悪獣なんかの気配もせず、なんだか拍子抜けしてしまうような森である。
「なんか悪獣出てこないしさぁ、この森で適当に動物狩って今日の夜ご飯にしない?」
「油断すんのはよくねぇ。今はこの森を抜けるのが最優先事項だ。」
クレマはこちらを見向きもせず返答し、歩みを進める。
彼女はこの森を抜けるまで、ずっとこのスタンスで行くのだろう。
シモもその後ろをトコトコとついていくだけだ。
僕はふと、あたりを見渡した。
すると、一ヶ所だけ木々の間から光がさしている場所を見つけた。
そこはまるで童話の世界ような、神々しさと癒しを纏っていた。
その下では小鳥たちが歌い、リスがドングリを集め、帽子を被ったひとりの男が鼻歌を歌っていた。
なんて平和的な絵面なんだろう。
__ん?
男?
僕は暫く、その場を動けずにいた。
その異様な雰囲気に、呆気に取られていたからだ。
しかし、その男の違和感に気づいた。
僕はとっさに全身に力を入れ、体を無理矢理動かす。
「二人共、隠れろ!」
僕は二人の腕を引っ張って近くの倒木に身を潜めた。
「どうしたんだ、オーゴ。悪獣か?」
「いや、人だ。人がいる。」
僕は静かにクレマとシモに伝える。
ふと、自分が冷や汗をかいていることに気づく。
隠れる瞬間、あの男がこちらを見ていた気がした....。
「でも、人ってだけなら商人とかなんじゃないの?」
シモは相変わらず、能天気に首を傾げている。
「......いや、オーゴの判断は正解だ。商人は森を通らない。視界が悪くて危険が多いし、何かあった時に救助が遅れるからだ。....つまり、こんなとこに人が居んのはおかしい。」
クレマもこの状況の異常性に気づき、警戒をしている様子だ。
しかし、僕が違和感を覚えたのは、それだけではない。
「それだけじゃない....。二人共、アレを見て。」
僕が静かに指をさした先、そこは男の腰のあたり。
そこには黒光りする金属があった。
拳銃だ。
「あ!あれって!クレマが持ってる拳銃ってやつじゃん!」
シモが珍しく大きく反応を示す。
それもそうだ。
クレマの言うことが本当なら、拳銃という物は非合法のルートでしか手に入らない代物である。
「マジかよ.....。どこで手に入れたのか知らねぇが、あんなのを持ってるってことは只者じゃねぇ...。」
僕の横でクレマが固唾をのんだ。
向こうはこちらに気づいているのだろうか?
もしこのまま逃げられるのなら、逃げた方がいい。
....僕の直感がそう告げている。
「....ヘイ!君たち!隠れる必要はないよ!ワタシは君たちの顔を見て会話がしたいんだ!!」
突然、謎の男が声を張り上げる。
僕は驚き、思わず倒木の横からこっそりと覗き込んでしまう。
しかし、僕はその行動を後悔することになる。
彼と目が合ってしまったからだ。
その男は笑顔だったが、その目線は刃物のように鋭く、一瞬目が合っただけで全身の鳥肌が立った。
....これはかなり厄介な人物と出会ってしまったかもしれない。
けれど、彼を敵だと決めつけるのはいささか早計だ。
僕は少し考え、やがて倒木越しに質問を投げかけることにした。
「まずはこちらの質問に答えてくれ!隠れる必要はないと言ったが、貴方は何者だ!?そっちの素性を教えてくれ!」
この答えによって、今の状況が一変することになるだろう。
シモはクレマの横で「もうやっちゃおうよ~。」とかずっと言っている。
僕は、彼が意味もなく森を散歩するただの平和主義者な紳士だと願うばかりだ。
「それも含めて顔を合わせて話がしたいんだよ!.....君たちは警戒をする必要はない!攻撃するつもりなら君たちが気づく前にしているよ!そうだろう?!」
確かに、相手の言い分は筋が通っている。
暫くして僕はクレマとシモに指示を出した。
「向こうの条件を飲もう。ただし、シモは爆破できる石を握っておいて。クレマもいつでも掌力を使えるように準備しておいてくれ。」
僕たちはゆっくりと倒木の影から立ち上がり、10数メートル程の距離を置いて謎の男と対峙した。
その男はカウボーイハットを深々とかぶっている男性で、顔があまり見えない。
しかし、帽子から出た髪の毛はシモと同じ、金色だ。
年齢は意外にも、50代くらいであった。
表情はにこやかなものの、目を合わせるだけで心臓を鷲掴みにされる様な、おどろおどろしい雰囲気を醸し出している。
腰には拳銃を装備しているが、クレマと違う箇所がある。
二丁装備しているのだ。
明らかに異様なその男に、僕達は未だ警戒心を捨てきれない。
「さぁ!こちらは貴方の言う通り身を晒した!次はそちらが答える番だ!」
謎の男はこの張り詰めた空気の中でも、ヘラヘラと笑っていた。
しかし、それでも彼には隙が見当たらないかった。
「貴方なんてやめてくれよー!シオン、と呼んでくれ!ハッハ!」
その男は、僕がその答えに対して業を煮やしているのを察し、へらへらと笑うのをやめた。
シオンと名乗るその男は、少し落ち着いた後、再び口を開いた。
「ハイハイ、素性ね、スジョー。君たちに分かるように言うなら.....」
その男はそこまで言うと、何やら考え始めた。
暫くして、彼はひらめいたかのように笑うと、屈託のない笑みのまま答えを出した。
「『悪王の幹部』ってとこかな!ハハ!」
シオンの笑い声が静かな森に響く。
彼の目が何故あそこまで恐ろしかったのか理解できた気がした。
それは、今まで沢山の命を奪ってきた者の目だからだ。
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