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ハンリベ  作者: 今木照
銃と悪、君と夏
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EP.13 長い1日の終わり

前回のあらすじ


シモ、消え失せる。




悪王討伐遠征 1日目 夕方頃




(あれ?シモ、消え失せたんだが?)



・・・・・・・・・・


僕の脳内で必死に目の前で起こったことを整理していく。


すると、ある一つの回答に行きついた。



(......あれ?これヤバいんじゃね?)



僕はやっと事の重大さを理解し、慌ててクレマに問いただす。



「ちょっとクレマぁ!シモ消えちゃったじゃん!!戻せる時間3時間位じゃなかったの!?戻りすぎちゃってシモがお父さんとお母さんの一部だった頃になっちゃったんじゃないのぉ!?」



このパーティの最高戦力を失った僕は嘆く。


クレマは僕に体を揺さぶられるだけだ。


この女がやらかした損失の大きさは計り知れない。



僕はそこら辺の草むらに、かつてシモだったモノがないか探し始めた。


そんな僕を見かねて、クレマが呆れながら声をかける。



「おいバカ王子。向こう見てみろ。」



僕はほぼ殺人鬼の彼女の指示に従い、指がさされた方角を見る。



涙目で映し出すその光景に、人影が見えたような気がした。


いや、気がしたではない。居たのだ。


そう、そこには.......




棒立ちしているシモが居た。




「あれ?悪獣は?」



僕の視線の先に居るシモは、拍子抜けするような声で質問を投げかけてきた。


僕は安堵と疑問と、その他もろもろの感情が入り混じった顔で、シモに駆け寄った。



「いや、悪獣はさっきシモが...っていうかどういう仕組み!?ホントーに心配したんだからぁ!!」



僕はクレマに全身全霊で疑問をぶつける。


クレマはなんだか面倒くさそうに視線を空に向けてため息をこぼした。



「はいはい、説明するから一旦話聞け。」



そういうと、クレマは一呼吸置き、状況が理解できていない僕とシモに『巻戻』の解説をした。



「簡単に言うと、ウチの掌力を人間の体全体に使うと、その時居た場所に戻って、記憶も戻るんだ。...どうだ?面白れぇだろ??」



クレマが混乱する僕に至極簡潔に説明してくれた。


成程、彼女の言っていることは理解できた。


けど、なにが面白いのかは普通に理解できん。



....という事は、さっきの発言からすると、シモは悪獣と対峙したとこら辺まで記憶が戻ってしまったのだろうか。


僕たちの会話を聞いて、今の状況を理解したシモが、慌てたように聞き返す。



「え!?もしかして、シモを巻き戻ししたの!?クレマ!」



クレマは何も言わず首を縦に振るだけだ。


シモは悔しさに顔を歪ませながらクレマを糾弾する。



「じゃあ悪獣との戦いはどうだったの!こっから悪獣と闘う良い所だったのにぃ~~!!」



クレマが今まで頭の上に乗せていたサングラス?をカチャリと掛け、真顔のまま淡々と答える。


目を隠す時点で、彼女がやましい考えをしているのが良く分かる。



「あぁ、それなら大丈夫だ。あの三体の悪獣はこのオーゴさんが一瞬で片付けてくれて、シモとウチはなんもしてなかったぞ。で、ウチの能力を見せるために、数分前のお前は()()巻き戻しの見本になってくれたんだ。なぁ、オーゴ?」



クレマは言い終わると、サングラスの横から鋭い視線を僕に突き刺し、同調圧力をかけてきた。


こんな真顔で淡々と嘘をつけるなんて......恐ろしい子!!


しかも何故か僕を持ち上げやがった。



...とはいえ、僕としてもシモにはそう思って貰っていた方が都合がいいので、素直にクレマに協力した。


しかし、幾らシモだからってこんな何の根拠もない釈明じゃ流石に......



「じゃあいいや!シモが死んでないなら意味ないしね!!」



ですよね。



「それで、オーゴはどうやって一瞬で片付けたの??」



シモが純粋な目で僕に問いかけてくる。


まるで、少年が勇者の輝かしい武勇伝を聞くように。


クレマのホラの影響で、シモの中での僕の戦闘力が大幅アップしてしまったようだ。


僕は目を泳がせながら必死に嘘を考える。



「そ、それはアレだよ!!あの~、僕の入替を使って悪獣を惑わして....、ザシュザシュ!ズガーーン!!みたいな...?」



僕は擬音マシマシで架空の武勇伝を語ったが、なかなかに酷い出来になってしまった。


クレマはサングラス面で「いいね!」っといった感じでグッジョブサインをしてきやがった。


この女、覚えとけ....。


シモはなんだか腑に落ちないようだったが、ギリギリ納得してくれたようだ。



「じゃあ今度その、ズガーーン!!ってやつ見せてね!」



「お、おう!何発だって見せてやんよ!だから、今日はここらへんで寝よう!うん!」



辺りはかなり薄暗くなっていた。


僕はこの話題を切り上げるために、そそくさと焚き火の準備をし始めた。





シモ「でも、なんか掌力使ってる感じするんだよねー。少しスタミナ減ってる気がするし。ねぇクレマ、ほんとにシモ戦ってなかった?」



クレマ「(ギクゥ!)....と、当然だろー??ウチのこと信用できねぇのか~??」



シモ「ん~....。ま、いいや!オーゴが火つけるの困ってるから、てつだってくるね~!」トコトコー



クレマ(ふぅ、危ない所だったぜ...。暫くはシモをオーゴに押し付けておこう....。)




シモ「オーゴ!火つけるの手伝うよ!」



オーゴ「ちょ、おいシモ!掌力で火をつけてくれるのはありがたいけど、火力は気を付けてよ!」



シモ「大丈夫だって!任せて!」



     ボンッ!



オーゴ「グァァ!!あっつ!熱い熱い!ちょっと燃えてる!僕が燃えかかってるぅ!!」



シモ「あれ?間違えちゃった!てへっ」



オーゴ「いや、てへっっじゃねぇんだよ!普段可愛い感じ出さねぇのにこういう時だけ可愛さ盾にすんじゃねぇ!アァ火が広がってきたァ!クレマァ!」



クレマ「おう!今肉持ってくからそのまま肉に抱き着いてくれ。」



オーゴ「いやそれ焼きあがった頃にはどれが食用の肉か分からなくなってると思う!てかアッツ!!結構笑えないとこまで来てるからァ!!」





その日の草原はいつもと違い、賑やかであったという....





悪王討伐遠征1日目、終了。

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