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ハンリベ  作者: 今木照
旅の始まり、全ての始まり
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EP.7 予想外の挑戦者

前回のあらすじ


オーゴは自身の父に抱きしめられ、その温もりを心に刻む。

父の滅多に見ることのできない涙を思い出し、旅への第1歩を歩み出すのであった!




国歴248年 悪王討伐遠征1日目




父との別れを無事に済ませ、今度こそ門を出る。


文字通り、僕たちの冒険の第一歩の瞬間だ。


冒険が始まり最初の一言を発したのは、意外にもクレマだった。



「いやぁ、さっきは感動させてくれたねぇ~。親って全員あんなモンなのか。」



クレマが腕を上に突き出し、体を伸ばしながら問いかけてくる。


最初僕は、その質問の意味がよく分からなかった。

しかし、暫く考えるとその質問のワケが理解できた。


それはクレマは普通の市民、つまり、アカデミー生活だったということだ。



「そうか、普通はずっとアカデミー生活だから、親を知らないのか。」



僕は馬鹿にした訳ではなかったが、自身のデリカシーのなさにハッとする。


クレマはわざとらしく目を細めて嫌悪感を押し出していた。



「ま、事実だからいーけど。」



クレマはプイっと顔を背けてしまった。


僕は謝罪をしながら先ほどの問いに答える。



「ご、ごめんって...。僕は一人っ子だから色々面倒見られながら育ったけど、父があんなにスキンシップを取るのは初めてだよ。」



「一人っ子か。ならその性格も納得だな。」



クレマはもはや興味がなさそうに冷たい返答をする。


けれど彼女は、すぐに興味のある話題へと舵を切ったようだ。



「あ、そういえばおっさん。アンタとまだ喋ってなかったな。あんたの掌力は?」



おっさんと言われてジンマはピクリと肩を動かした。


旅に出てからパーティメンバーの掌力を聞くなんて、本来なら有り得ないんだろう。


....でも、確かに僕もジンマの掌力を知らない。


ジンマは歩みを止めずに、クレマの質問に丁寧に返答をした。


「私は『おっさん』ではなく、『ジンマ』です。私の掌力は...内緒です。ですがご安心ください。私の武器はこの洗練された剣術!お二人のお手を煩わせるような事態には決してなりません。」



クレマがジンマの返答に、分かりやすく不満気な表情を浮かべる。


「なんじゃそりゃ。剣が武器だとしても、とりあえず教えてくれりゃあ戦術の幅も広がんのに。なぁ?おっさん。」



クレマは相変わらずおっさん呼びをやめなかった。


すると、少し先を歩いていたジンマがぴたりと足を止めた。



「ジンマ?どうしたの?怒った?」



「お二人とも、お待ちください。前の岩影に人がいます。」



ジンマが足を止めた理由は、クレマによる過剰なおっさんイジリではなかった。


ジンマの言う方を見ると、確かに人がいた。


人というだけなら、狩人や行商人が国の外に居ることもあるので然程おかしくはないのだが、目の前の人間は明らかに目立つポイントがある。



アカデミーの制服を着ているのだ。



「なんでアカデミーの生徒がこんな所に?」



僕が呟くと、横にいたクレマからバツが悪そうな声が聞こえてきた。



「げ!!嘘だろぉ!?何でこんなとこにいんだよ...」



クレマは心底嫌な顔をしている。


その口ぶりからして知り合いなのだろうか。



「なに、クレマ、知り合い?」



そう聞く僕の問いにクレマが答えるよりも先に、問題の人物がこちらを向き、声をかけてきた。



???「ねぇねぇ~!みんなって悪王討伐のパーティでしょ~?!」



少し遠くから声を張り上げているその人物をよく見ると、思っていたよりも幼かった。


そして、特徴的な金色の髪を靡かせている。


性別は...女の子か?


その子が声を張り上げ、続ける。



「君たちのパーティの『ぜんえい』って人ー!戦おー!」



あの子が言う『ぜんえい』は、『前衛』だろう。


...という事は、この宣戦布告はパーティの前衛、ジンマに向けられているということになる。



「あいつの名前は()()。」



横にいたクレマが唐突に教えてくれた。


そのシモと呼ばれる少女は、僕たちにまだ声をかけ続ける。



「それでぇ、もしそのぜんえいの人に勝ったら、その人の代わりにシモをパーティに入れてよ~!」



え?


パーティに入れて...?


唐突かつ想定外の申し出に三人ともポカンとしてしまった。


つまり、前にいるシモという子は、ジンマと決闘をし、ジンマに勝てばその空いた席に就こうと言うのだ。


こんな挑戦、一体何のために...?



「ジンマ、分かってると思うけど乗る必要はない。こちらに何のメリットもないし。」



僕は念のためジンマにストップをかける。


けれどジンマは笑って相手にしてくれなかった。



「はっはっはっはっは!オーゴぼっちゃん!このジンマを少々侮りすぎでは?これから続く冒険のために、ここで実力を示しておくのもいいでしょう!」



(いやいやいや、相手は子供だぞ...?)


僕はジンマのその対応にも多少呆れた。


ジンマはそう言うと、腰の剣を抜きシモの方へと近づく。



「そこのアカデミー生徒!私がこのパーティの前衛、ジンマと申します!この精鋭パーティに勝負を挑む心意気は認めましょう。しかし!勇気と蛮勇は違う!それをアカデミーの教員に代わり、この私が教えて差し上げましょう!」



「わ!シモと戦ってくれるの!?やったー!」



ジンマが挑戦に乗ると分かると、シモは分かりやすく興奮した。


そしてシモとジンマが開けた場所に移動する。


双方、決闘の準備は整ったようだ。


けど、10歳前後ほどのあの子を相手にするなんて、ジンマもやっぱり大人げない気がしてしまう。

そんな事を考えながら眺める僕に、クレマが話しかけてきた。



「なぁ、オーゴ。ジンマって強いのか?」



僕とクレマは、少し離れたところで観戦することにしていた。

僕は彼女の質問に、正直に答えた。



「まぁ僕の剣術の師匠だし、かなり強いよ。僕もジンマの掌力は知らないけど。」



実際、ジンマは僕に剣術を教えていた張本人で、城内一、いや、下手したらルート国一の剣豪かもしれない。


僕は今日に至るまで純粋な剣技の勝負で、彼に勝てたことが一回もない。


僕の回答を聞いたクレマは、何故か難しそうに眉を寄せる。



「そうか...。なぁ、ウチの成績表、覚えてるか?」



「え?まぁうん。ほぼ一位でのやつね。」



喫茶店でクレマが見せてきた成績表を思い出す。


たしか、「座学部門」「運動部門」「総合」が全学年で一位だった。


そんなクレマがシモを睨みながら口を開く。



「その通り。ウチは『ほぼ』一位だ。『全部』一位になれなかった理由はあいつだ。」



「え...、ってことはまさか、あの子が...?!」



「ああ。」




シモの金色の髪の間からこぼれた青く大きい瞳が、ギラリと輝いていた。





「シモは、模擬戦闘部門『1位』だ。」




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