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極楽日和  作者: 秋月流弥
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5.脱衣場

 カッパたちを脱衣場の床に寝転がせ看病する。


「全員十匹……よし。助け忘れもなし」


 そよそよ、うちわで風をおくり水を与える。

 脱衣場の床に並べられたカッパたちはとてもシュールな光景だった。

「無料のウォーターサーバーとうちわが置いてあってよかった」

 銭湯で事件遭遇とか嫌すぎる。

 皿の上にドボドボ水をかけていたら、

「あの、口からでけっこうです……」

「そ、そう」

 弱々しく喋る黄色い嘴に水を飲ませると皿に水気が潤うのが見えた。カッパの神秘的な生態を目撃。


 全カッパが回復し、拓巳はあまりの疲労に汗だくでベンチに仰向けで倒れる。

倒れていると頭上から声をかけられた。


「暑そうだねお兄さん。汗がひどい。顔が真っ赤だよ」


 白い髭が長いお爺さんだった。


「これ使うかい?」

「え?」

 お爺さんは拓巳に大きなうちわを渡した。

 大きくて紅葉の葉のような変わった形のうちわだった。こんなうちわ脱衣場に置いてあったっけ。


「ワシの私物じゃ。涼しい風が吹く」

 お爺さんは風呂あがりらしく、服を着ていて首にはタオルをかけている。

のぼせたのかお爺さん自身も拓巳より顔が真っ赤だ。


「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて……ふあああああ」


 顔に向けてひと扇ぎするとあまりの強風に顔のパーツがもげそうになった。

前髪が数センチ削れた。


「良い風じゃろう。風呂あがりはこれに限るホッホッホ」

「ふぉうふぇふふぁ(そうですか)」


 めくれあがった歯茎のままうちわを返却する。

 今さらこの赤い顔のお爺さんの正体が天狗だということに気づいた。

「じゃ、ワシはこれで」


 天狗はみのを着るとスゥゥ……と姿が消えていった。


「無銭風呂!?」


 よく考えたらチラシを持っていれば無料だし問題ないが、あの天狗はチラシを持ってたのだろうか。

「いや、あの感じだと常習犯だな」

 拓巳は呆然と呟いた。


次回、最終話です!

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