みなさんが満ち足りた世界で
死にたい
と言葉が出る前に ため息をついた
死ぬ理由が欲しい
緩やかに死んでいくだけなのに
ため息が溶けて
世界は淡泊だ 白と黒の濃淡が山や川や人を表している
わたしたちは生死の狭間にいて
ろうそくを吹きかける程度の風で 些細に命を手放してしまう
幼児がおもちゃを手放すように 未練も無く
ため息が溶けて
わたしは半ば義務感のようにセンセーショナルな動画を見る
人は簡単に死んでしまうとわかる
無くなっていき 終わりがあると理解する
死と生は相反するものではない それが普通だから
世界にため息が溶ける
1000回目のためいきの後
世界が目から溶け落ちていく
光が地球を一周する前に
わたしが わたしで 溶けていく
ため息は もう溶けない