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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第4章 波乱の留学
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48時間目 狙われたアストラル

『ノルス大陸に生ける全ての生命に告ぐ。自分が機械皇国の創始者ゼロであります。自分の要求は唯一つ……アリシア全土を引き渡してもらいたい。もし自分の要求が汲めない場合、攻撃を開始する』


 これは……私の夢……?だとしたら何故このような光景が……


「あ、起きましたね……ここが何処か分かりますか?」


『学園の……医務室でしょうか?』


「アユム様が倒れてしまった貴方をここまで連れてきてくれたんですよ?」


 そうか……あの後私は脳にダメージを負って倒れてしまったのだったな。それはいいとして……やはり夢で見たあの光景が私と深く関わるものならば無碍には出来ません!


『せっかく良くして頂いた所で悪いのですが、少し外を歩いてきます……何か良からぬ者の気配を感じたので』


「無茶だけはしないで下さいね……?」


『分かっています……では、失礼』


 何時までも貴女の温もりに浸っていたい……今日に至るまで、返しきれない程の恩を貰ったんです。どうか自分の身勝手を……お許し下さい!


「アストラルが医務室から出たとはどう言う事だ!?」


「おっ、落ち着いて下さい……アユム様。私も引き止めたんですが……」


 こんな時に何してるんだアイツは……!


『こんな所で1人歩いてるとは……随分と丸くなったみたいだなぁ、アストラル!』


『その青いダメージマント……貴方は……リッパーですね!』


『覚えててくれて良かったぜ。お陰で痛ぶりがいがあるってモンだぁ!』


 リッパーの双剣による最初の一撃を素早く剣で受け止めたアストラルだったが、相手の勢いに負けて近くの木に叩きつけられてしまった。


『ぐっ……ううっ、相変わらずとんでもない強さですね……!記憶が断的に戻ったから分かります……貴方は強い、だけど間違ってる!機械族の文明はもう終わりを告げた……文明無き今、私達は争いの種を捨てて平和に生きるべきなんです!』


『甘いなアストラル……お前1人が平和を訴えたところで何も変わりやしない!今更お前に何が出来る!?』


『私は決めたんだ……必ずやこの世界に生きる生命の全てを守り抜くと!不要な戦闘で犠牲を払うなど……あってはならない!』


『争いってのはどっちかが尻尾巻くか死ぬまで続く!お前は今オレを殺しにかかってるんだろ……!』


『殺しはしません……立てなくなるまで攻撃した所で皇国再建の取り消しを願い出るだけです!』


『ハハッ、そいつぁ面白い話じゃねぇか。ヴェルーデの野郎がそんな事を考えてたなんて初耳だ……ま、知った所でオレはお前さえ殺せればそれでいいんだよ!』


 リッパーの猛攻は彼の激昂に合わせて更に激しさを増し、次第にアストラルは追い詰められてしまった。


『2対1でズルいってか?はんっ、争いに綺麗も汚いも端っからねぇんだよ!』


 アストラルは胸部を強く切りつけられ、そのまま地面に崩れるように倒れてしまった。


(剣は力の象徴なのかもしれない……だからこそ、その扱いは常に気を付けなきゃいけない……分かるな?)


『あぁ……分かっているよ、アユム。剣を持つ者は常に持つ剣に責任と誇りを持たなければならない……!例え惨めに地を転がったとしても……私に命があるのなら、この剣は私が守りたいと思う者の為に振るう!私は……お前などに引けは取らん!せやぁぁぁあ!』


『コイツ、急に動きが変わりやがった!?』


『僕はかつてのような争いばかりの世界はもう見たくない!そんな世界には絶対にさせない!おおおおっ!』


 アストラルは胸部の怪我を押し切ってリッパーに肉迫すると、やがて彼の左腕を付け根ごと一気に切り飛ばした。


『クソォッ、何て事しやがる……俺の腕に何て事をぉおっ!』


『そんな動きで僕に勝てる訳……無いだろっ!』


 アストラルは余裕を無くして狂乱状態に陥っていたリッパーの左胸に勢いよく自身の剣先を突き立て、彼を沈黙させた。


『僕は……君達とは違うんだ。一方的に民を押さえつけるような国を作ろうとしている君達とは……違うんだ』


 アストラルがそう呟いてその場を去ろうとしたその瞬間、彼の目の前にヴェルーデが現れた。


『ヴェルーデ……何故あの時アユム達を攻撃したのです。彼らは無抵抗だったのでは……』


『フッ……剣先1つでリッパーを黙らせるとは。余程今を生きる人間達に感化されたようだな、アストラル。だが、お前のような素晴らしい戦士には不要の感情だ』


『何だと……例えかつて肩を並べた相手であっても人間を悪く言うのは許しませんよ、ヴェルーデ!』


 僕は苛ついていたのか、ヴェルーデの喉元に青い冷却液が付着した自分の剣を向けた。


『おっと、失礼……ですが事実ですよ。貴方には冷徹な機械兵であって欲しかったものですよ……』


『さっきから何を言ってるんだ……がぁっ!』


 僕が言葉を紡ごうと口を開いた次の瞬間、僕は再び謎の頭痛に襲われだした。


『フフッ、何故頭が痛むか教えて差し上げましょうか?それはですね……貴方が|私の手で目覚めさせられた《・・・・・・・・・・・・》からなんですよ!』


 な、何だって……それじゃあ私の記憶が無かったのは単なる目覚めのミスじゃなく、初めから仕組まれた罠だったのか……!


『何でこんな事を……うぅっ!』


『フフッ、苦しいですよね……彼らの敵に戻る事が何より辛いですよね……良ければ私が解放して差し上げましょうか?』


 そう言うとヴェルーデは赤色のメモリースティックのような物を取り出して見せてきた。


『それは……!?』


『さぁ……今こそ冷徹な機械に戻るのです!』


 え……?


『ぐっ……がっ……あああっ!』


 距離を置くのが遅かったのかな……あぁっ、ごめんなさい……フィ……

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