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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第4章 波乱の留学
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47時間目 反乱の芽

『良いか、アストラル……いつか私は斬首せねばならん。だがな、私亡き後も私が教えた優しき心を忘れるでないぞ……』


 私は……機械ながら夢を見ていたのか?


『フィリア……あの人はとても暖かった。もしこの世界にもう一度機械の国が立てられようとしているのなら、私はそれを止めねば……!』


「やはりここに居たか……アストラル。いつまで寮の裏庭で過ごすつもりだ?」


『お前は……アユム、と言ったか?私をどうするつもりだ?』


「どうもしない……ただ、お前に共闘の申し出をしに来たんだ」


 アストラルは俺の言葉を聞くとすぐに剣を納め、俺をじっと見つめてきた。


「俺はこの街にある大図書館の地下に位置する古の書庫にて始まりの魔王が遺した手記を読み、そして真実の一端を知った」


『それが私への共闘の申し出と何の関係がある?』


「再建派が何を考えているのかは分からないが、恐らく国を立て直した暁には更なる力を求める筈だ……奴らが国を作るよりも前に奴らを叩きたい……同胞を討つ事になるかもしれないが、それでも俺に付き合う覚悟はあるか?」


『私は目覚めた時から既に覚悟は出来ている……フィリアと触れ合って改めて感じたのだ……暖かな世界こそが安泰の歴史を作る礎になるとな。それに今朝見た夢でも……私はどうやら皇国に対する粛清を担う者らしい。ならば、私の答えは唯一つ……お前に力を貸すだけだ』


「フィリアを巻き込む可能性はある……もっと言えば、アリシア全土に著しく被害を齎しかねない……俺達の望まぬ結果が待っているかもしれないぞ……」


『戦士ならば覚悟一つで全て済ませよ……私を作った博士の教えです。博士との約束の為にも……戦います!』


 アストラルは俺からの申し出を快く承諾してくれた。


「交渉成立ってか!ハハッ、そいつぁいい知らせだな!」


「これから僕らが改めて敵対する事になるのは何人刺客を揃えているのか分からないような相手ですよね?」


「一概に残党と言っても何人編成かは分からない……だから同じ機械族の彼に協力してもらう事にした」


 俺は後ろで待機していたアストラルの背中を軽く押した。


『はじめまして……私はアストラル、かつて機械皇国が作り出した機械兵の一人で、最近になって覚醒したばかりの者です。以後、お見知り置きを』


「あーっ、お前覚えてねぇかもだけど、一度オレの心臓潰しかけてんだからなぁ!それだけは絶対忘れんじゃねぇぞ!」


 アヴィスはアストラルを一目見ると勢いよく指差しながらそんな風に叫んだ。


「僕はガルム、こんな見た目だけど……一応アユムくんと同じく魔王だよ?良かったら仲良くしてくれるかい?」


『勿論です、ガルム。しかし……この地に魔王が3人も揃っているとは驚きましたね』


「へっ、当然だ!アユムもガルムも留学でこっちに来てるんだからな!んで、アストラルさんよぉ……機械兵は何体いるんだ?」


『私が知る限りでは残党が数名……しかし彼らは皆揃いも揃って単独戦闘を前提に開発されたモデルです……』


 個々が強いという事か……それは少々厄介かもな。


「一騎打ちに持ち込まれたら面倒くせぇな……確かにオレらも何だかんだ強いけど、単独特化なら押し切られる可能性はゼロじゃねぇよな」


「だからこそ……僕らはもっと強くならないとですね!」


『その必要は無い……!』


 ややエコーのかかった声が聞こえた次の瞬間、俺達の足元が一気に凍り付くと同時にそこから無数の尖った氷柱が生えてきた。


「誰だ……!」


『私は誇り高き機械皇国の剣士ヴェルーデ、永き眠りの中で私は魔術を扱えるようになったのだ……私はこの力でこの地にもう一度皇国を築く!貴様らはその礎にでもしてやる!』


 緑色のローブを纏ったヴェルーデと名乗った男はそう言うと続けて水色の光線を放った。


『ヴェルーデ、何故貴方がここに!?』


『ほう……アストラルか。何故魔王達の味方をしている?』


『黙れ!私が彼等に力を貸して何が悪い!私は……私は……』


 アストラルはヴェルーデに反論しようとした途端、頭を抑えて苦しみだした。


「アストラルくん……!彼に何をしたんですか!」


「聞いても無駄だ……なら、全力で打ちのめしてやるだけだ!オラァァ!」


 アヴィスは腰から取り出した銃でヴェルーデを威嚇した。


「やっぱ躱してくるよな……なら、これでも喰らえぇ!」


「待て、アヴィス!今ここで無理に戦うな!ここは学園だぞ!」


『ほう……鋭い気を放つそちらの少年はかなり冷静な判断が出来るようだな。なら、その冷静さに敬意を払い、身を引いてやろう』


 ヴェルーデはそのまま一言残すとローブを翻して姿を消した。


「アストラル……大丈夫か?」


『はぁ……はぁ……な、何が起きたんですか……彼らに敵意を向けた途端、何故このような事が……!』


 アストラルは痛みが限界に到達してしまったのか、そのまま倒れ込んでしまった。


「まさかとは思うが……アストラルは共鳴でも引き起こして脳に負荷がかかったんじゃねぇのか?」


「僕らに襲いかかってきたのもアストラルくんと同じ機械兵だったね……ただの共鳴にしては少し違う風にも見えたよ」


 確かに……共鳴は一般的に力が増幅するだけのはずだ。だが、他者の脳に悪い意味で干渉するなどは聞いた事がない……


 アストラル……君は一体、何を目的に生み出されたと言うんだ……?


 俺は意識を失って動かなくなってしまったアストラルを見ながら心の中に新たな疑問を募らせたのだった。

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