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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第3章 南陸決戦
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38時間目 始祖の審判

「がはぁっ!」


「ぐっ……!」


「わっ……!」


『ぬぅ……』


 ガルム達4人はラジエルが呼び出した取り巻きの赤い巨兵に苦しめられ、先の戦い同様に息が上がっていた。


「やっぱりコイツら強いよね……流石は大物の取り巻きってだけの事はあるね」


「だが、ここで我らが膝を付けばコイツらは確実に……」


『クロムの元へ向かうだろうな』


「アユムくん……」


 僕は君に感謝してもしきれない恩を感じてるんだよ?だから……君も……負けたりしないでね。


「どうかね……私の愛剣ハルペーの切れ味は」


『お前のその剣と太刀筋で全て思い出したぞ……天界一の剣士にしてかつて俺を暗殺した堕天の聖者だったな、お前は!』


「やはりお前も堕した存在と呼びますか……だが、私が堕したのは私自身がそうしたかったからです!」


『何だと……!?』


 クロムとラジエルは互いに剣を交えながらも会話していた。しかし、その実力はほぼ互角の為、両者共に大したダメージは無かった。


「天界は外界の弱者を導く使命がありました。ですが、弱者が真に求めたのは救済ではなく力だった!弱き者が力を振りかざす世界……強弱の天秤が崩れたともなれば私がしてきた事の馬鹿馬鹿しさに嫌気が差すのも当然だろう!」


『確かに人間は愚かだ……魔王を超える力を得たなどと豪語しておいて、その力で自ら滅亡の道を突き進む。だが、全ての人間が同じとは限らん!』


「人間上がりの魔王だからそんな事が言えるのでしょう……ですが、私は貴方のような存在が一番許せないんですよ!」


 ラジエルの怒りの一撃が遂にクロムに命中し、鋼鉄の体から火花を散らしつつ彼は床を転がった。


『ハッ、天界の者が俺を嫌うのは当然だろうな。だが、そこで俺以外の者に刃を向けようなどというお前の下らん復讐心こそが俺を心の底から苛立たせるんだよ!』


 ラジエルの追撃を跳ね除け、クロムはラジエルの胸当てを破壊した。


「流石は元最強の勇者ですね……私とここまで渡り合うとは、貴方は本当に素晴らしいですよ!」


『何が言いたい……』


「私とこうして話してくださったお陰で……かの戦役の負の遺産を復活させる時間稼ぎが出来たのですから!」


 ラジエルはそう言うと懐から紅く輝くクリスタルを取り出し、怪しげな笑みを浮かべた。


『まさか、〈紅〉のクリスタルを……!?』


「そうですとも……結局、何日待っても王は賢明な判断を下せなかった。ならば私がする事は一つ……この大陸の力そのものでこの大陸諸共愚かな人間共に裁きを下す事です!」


『お前……一体何をっ……!?』


 ラジエルがクリスタルを天に掲げると、そのまま赤色の閃光を放ち、地響きが発生した。


「さぁ、目覚めるのです……かつて〈天魔戦役〉にてこの大陸に終焉をもたらした厄災の化身……偉大なる救済の神よ!」


 時計塔が地響きによって完全に崩壊するのと同時に俺が目にしたのはかつて起きた大戦の果てで両軍に壊滅的な被害を与えた生ける災厄の姿だった。


「はぁ……はぁ……な、何とかあと一体までは追い詰めれましたね」


「そうだね……!?皆、何か来るよ……!」


『この気配……まさか!?』


「あの外道め……なんて事をしてくれるんだ」


 取り巻きの〈終極兵〉を4機倒したガルム達の目にもその圧倒的な威圧感を放つ巨躯の姿が目に映った。


(申し訳ない……ラジエルが〈始祖〉を覚醒させてしまった。俺はこのままここで奴を何とかして倒す……お前達は外側から奴の相手を頼む!)


『クロム……少々素直に了解出来んが、お前がそれを為す事によって勝利を掴めるというのなら、やむを得まい』


「であれば、奴が本格的に起動する前に我らの全力を尽くして止めに行くぞ!」


「そうだね……あれが暴れたら、また大陸は海に沈んでしまうかもしれないからね!」


「そんな事……絶対にさせない!」


 4人は時計塔が建てられていた場所へと急行した。


 そして〈始祖〉の体内ではクロムとラジエルによる戦闘が引き続き行われていた。


『何故〈始祖〉を目覚めさせた!?』


「理由など簡単な事です……貴方のような魔王達を跡形も無く滅ぼす他にどんな事が必要でしょうか?」


『何処までも猟奇的な聖職者だな、お前は!そんな事で本当に世界を救済したなどと言い張るつもりか!』


「魔王は世界が生み出した末期の癌!ならば私達がそれを消し去るのは当然の事!お前達のような醜い正義を振りかざす愚者に感化され、そうやって悪人が増えていく!そんな世界が平和だとでもいうのか!」


『誰一人として意見のぶつからない世界程つまらんものは無い!ぶつかった先で得るものが大であれ小であれ……それでより良き方向に世界が傾くのならば争いの一つや二つに目を瞑ってもいいはずだ!』


 2人の剣による戦闘は先程までよりも激しさが増し、ほぼ至近距離での剣戟が繰り返された。


「黙れ、勇者上がりの出来損ないの魔王風情がぁ!」


『息づく種の自由を無視してまで得る平和に価値があるなどとほざくお前如きが俺を侮辱するなぁ!』


 〈始祖〉の出現とラジエルの怒りが頂点に到達した事……それは、この長く続いた争いが最終局面に入った事を意味した。

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