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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第3章 南陸決戦
37/56

37時間目 世界は無情に牙を剥く

「おや、イフが倒されてしまいましたか。まぁ初戦魔女は魔王を超えられなかった……という事ですか。それもこれも全て私の想定内の結果でしか無いのですが」


「ラジエル様、間もなく〈終極兵〉の祖たる兵器〈始祖〉の建造が完了致します。如何なさいますか?」


「〈紅〉のクリスタルとの同調率はどれくらいかな?」


「現在最高値は75%です……」


「そうか……ならば、私が出るしかないな」


 最早奴らを静観してなど居られんという事か……まぁ、私の力は神にも相当する故、遅れを取るなど無いでしょう。


 ルヴィリスではグゥリル、オルカ、そしてクロムの3人が巨兵を立て続けに倒している為、少しずつその数は減ってきていた。


 しかし、魔王では無いオルカはその最中でとうとう魔力が底をついてしまった為、やむを得ず戦線離脱していた。


「クリスタルの破片で動いてるとはいえ、我らが全力出せばこんなものか!」


「“螺旋の旋風よ、貫け”!」


「“凍てつけ雑兵”……!」


 クロム達の頭上から緑色の風の渦が飛ぶと同時に氷柱の雨が降り注いだ。


『風と氷……シャギアか!?』


「クロムくん、大丈夫ですか?」


「待たせてごめんよ、皆」


『ガルム……何故お前がここに?』


「勝手に来た事は謝るよ……だけど、見てわかる通り今の僕はクロムくんと同じ魔王なんだ……友達の危機に何もしないなんて……僕には出来ないよ!」


(道を開けろ、同胞よ)


 クロムとガルムが再開を喜んでいた直ぐ側で地面から無数の火柱が発生し、今いる巨兵が全て焼滅した。


『我を忘れるな、愚か者共!』


 紅の鎧姿が最早魔王と呼ぶには相応しくないオーラを放つ大柄な男……〈灼炎〉のローヴァが遂に表舞台に顔を出した。


「これでようやく、サウシア4魔王が全員集合したね!」


『俺達だけじゃない……俺の親友や仲間の家臣もいる。こちらの布陣は完璧に整ったさ』


 俺は心の底から無限に近い程力が湧いてくるのを感じた。


「魔王が揃いも揃って私を歓迎ですか。それはそれは……大変嬉しい限りですね」


 水色の司祭然とした服装の青年が嬉しそうな表情でこちらへ歩いてきた。


『お前が〈神聖騎士団〉などという愚か者共の親玉か!』


「えぇ、そうですとも。では改めて、私の名はラジエル……〈神聖騎士団〉の創設者にして最高司祭たる者……故に、貴方達を粛清します」


 ラジエルは炎やら雷やらを魔法陣も無しにいきなり発射し、俺達を問答無用で攻撃してきた。


 対する俺達も障壁を瞬間的に展開して相殺すると、その際に発生した黒煙を裂きながらラジエルとの戦闘に入った。


「5人も相手にする日が来るとは……私としては不本意なので、彼らに相手をしてもらいましょうか」


 ラジエルが指を鳴らしつつ後退りすると、俺達の目の前には先程まで戦っていた赤色の巨兵が4体出現した。


『クロム、お前はラジエルを!』


『だが、そいつは一体倒すだけでも骨が折れるような奴だぞ?』


「行って、クロムくん!ラジエルって奴を倒さなきゃこの戦いは終わらないから!」


 ただでさえ消耗しきっているはずだが……俺達魔王はこんな事で臆したりしない。お前達の為にも……必ず首を取ってみせる!


『分かった……だが、死ぬなよ』


「うむ!」

「任せてよ!」

『十分に気を付けるのだぞ』


「また、あの4人で笑い合う為にも……ね!」


 俺はガルム達に巨兵の相手を任せると、後退し続けているラジエルの後を追った。


『逃げても無駄だ、ラジエル!』


「フフッ、やはり勇者から堕落しただけの事はあるようですね。では私も魔術のみならず……(こちら)で相手をしましょうか」


 崩れ去った時計塔の展望台で足を止めたラジエルは俺の方を振り向くと、腰から聖剣らしき剣を引き抜き、その切っ先を向けた。


『剣の立ち合いをお望みか……いいだろう。俺も魔術ばかりの派手な争いは好みじゃないからな。そのお前の下らん野望諸共その剣をへし折ってやろうじゃないか』


 俺もラジエルの後に続いて剣を引き抜き、右足を後ろに下げつつ腰を低く構えた。


「全く……これだから魔王は救えないんですよ。骨身残さず切り刻んであげましょう!」


『魔王が救われないのは今に始まった事では無いだろうに!』


 同じ頃、港町ラクドニアではアヴィスとオルカが合流し、残っていた〈神聖騎士団〉の雑兵を捕縛していた。


「オルカ……魔素欠乏症を発症してまで巨兵と戦うとは……随分とまた熱い男になったじゃないか」


「私はただ、先生の為に最善を尽くしただけです。先生との……約束でしたから」


「なるほどな……さぁて、オレらもそろそろこの大陸から身を引こうぜ。ガルムって奴もオレ好みに強くなったし、クロムは人間だった頃の情熱を取り戻してくれたし……後の事はアイツらに任せよう」


「また……先生と肩を並べて戦える日は来るんでしょうか……」


「そのうち……な?」


 2人は他愛無い会話をした後、青色の転移門を使ってアリシアへと戻っていった。

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