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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第2章 目覚める魔王達
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24時間目 不届き者は近くにいる、ならば真意を突き止めよ

 夏もいよいよ残暑という言葉をあちこちで耳にするようになった頃、俺とガルムは時にアヴィスを交えて本気で剣の鍛錬に励むうちに3人共がそれぞれの戦術に特化した技を会得し始めていた。


「わざわざ立ち合いの相手に指名したりなんかしてごめんね、アヴィス君」


「気にすんな、アユムのダチはオレのダチ、現にお前はオレらと肩を並べられるまでに強くなってきてるんだ。そんな遠慮してばっかだと殻籠もりになっちまうぜ?」


 そう、今日はたまたま俺に野暮用が入った為、アヴィスが俺の代役を引き受けてくれたのだ。


「でももう夏も終わっちゃうね……」


「だな……夏季休暇にアユムがイチゴ酒飲んでぶっ倒れたり、フィリアとかルーダの可愛い水着も堪能できたし。何よりこの短期間の間に俺達魔王も改めて自分の戦力について見つめ直せたから、結果的に良い休みだったって事でいいんじゃね?」


「はははっ……さ、今日もお願いします!」


「おうよ……お前が生み出した新技、ドーンと叩き込んできやがれ!」


「うん……じゃあ……行くよっ!」


 ガルムは左の剣の柄に手を掛けつつも素早く駆け出しながら左手で氷の礫を生成し、アヴィスの目の前まで近付いた。


「チッ、魔術と剣の二段構えかよっ!」


 アヴィスは舌打ちしながらも自分に迫ってきた礫を左手に持った銃で全て相殺しつつ後ろに下がった。


「せやぁあっ!」


「うおっ……ここまで力を出せるようになったか……!」


 アヴィスとガルムは鍔迫り合いになったが、明らかにアヴィスの方が押されており、両者の剣からは火花が激しく散っていた。


「へへっ、今までアユムと何回も剣でやり合ったが……お前みたいに純粋な力のぶつかり合いは初めてだぜ!」


「アヴィス君の方こそ、僕の礫を壊せるだけの術を持ってるなんて驚いたよ」


「そりゃご丁寧にどうもっ……!」


 アヴィスはギリギリのところで鍔迫り合いに勝ち、今度はアヴィスがガルムを押し飛ばした。


「やっぱりアヴィス君は強いね……アユム君の友達だけはあるね……あはっ」


「何言ってんだ……勿体ぶってるお前も大概だぜ……」


 その頃、生徒会室では怪しげな本を片手にした生徒がそこで複数の化け物を召喚していた。


「まさかここまでこの学園の警備が甘いとは……お陰で何の苦労もなくお前達を呼べた訳だが……くれぐれも目立ってくれるなよ?」


『グルル……』


『ギョルル……』


『ガギャァ……』


 その生徒からの指示を受けた化け物達はそれぞれ影の中へ溶け込むように消えていった。


 そして、事が動いたのはその翌日の朝だった。


「ん……あぁ?何だ……いや、何かうちの学園で動いてやがるな、これは」


「アヴィス、お前も気付いたか……」


「ったり前よ!数からして3体、実力にして割と厄介な連中のお出ましか……」


「俺は元凶を突き止める……アヴィスは先に化け物の足止めを頼む!」


「無茶すんなよ、クロム(・・・)!」


「お前もな、アヴィス」


 俺は校舎に入ってすぐに感じた違和感の正体を突き止めるべく、気配のする方へ急いだ。


 この学園は生徒一人ずつの個別の魔力を記録しているから、過激派達が偽造工作を働いたとしても無意味になるはずだが……一体誰がどんなカラクリを講じたとでも言うんだ?


「アァ……」


「なっ……アンデッドだとっ!」


 服こそ学園のものだったが、俺に襲いかかってきたのは間違いなく生ける屍……アンデッドだった。


 この時代……というか、この世界にはそもそも死霊術師なんて存在しないはずだが……


 俺は内心で疑問を抱きつつも峰打ちでアンデッド達を無力化し、気配が濃くなっていく方向へとひたすら走った。


「気配は……ここからかっ!」


 俺がたどり着いた場所は……生徒会室だった。ガルムから届いていた手紙には確かに〈生徒会に妙な動きがある〉とあったが、その真相は相当闇が絡んでいるだろうな。


「やれやれ……せっかく完成させた肉人形も役に立たず、前もって用意した囮も他の魔王が注意を惹きつけるだけ……忌々しい限りですねぇ、全く」


「貴様か……俺が留学でここを離れている間に学園に妙な噂を立てるきっかけを作ったのは?」


「そうですよ……僕は過激派の司祭様に言われて学園を拠点にしようとしていただけですよ?」


「それにしては随分と手の凝った事をしてくれたじゃないか」


「魔王を相手にするんです……それくらいはやりますよ?」


 この男からは何も感じない……という事はやはり、過激派はここを拠点にするつもりは無いと見て問題は無いな。


「魔王を恐れる事はいい事だ……だが、お前は相手にする魔王が誰かまで想像してなかっただろう?」


 俺は右目を紫色に光らせ、その場に張られていた結界を術式ごと消滅させた。


「僕が半日かけて構築した魔法陣がっ……お、お前はぁっ……何者なんだ!?魔王でも破壊出来ないはずの結界をどうして……」


「そうか……やはり俺はお前達の間では比較的新参者として認識されているのか。少し残念な気もするが……己のプライドにかけて名乗らせてもらおう。我が名は……〈黒鉄〉の魔王クロムだ!」


 俺は制服の内ポケットから黒色の鉄の仮面を取り出してそっと装着し、その姿をかつてこの世界に君臨した時のそれに変えた。


「〈黒鉄〉……最初に崩御した魔王が……どうして生きているんだ!」


『お前に知る権利はない……何故なら俺が貴様をここで即刻滅するからだ』


 俺は久しぶりにエコーをかけたような声で目の前の愚か者を脅した。

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