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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第2章 目覚める魔王達
23/56

23時間目 もっと強くなりたい

「剣術を教えてほしい?」


「はい!もっと強くなりたいなって思ったので……アユム君さえよければどうかなって」


「なるほどな……なら、放課後に剣道場に来い。だが、いきなり剣を振らしてやる事は出来ないから、前もって了承してくれ」


「分かったよ、アユム君」


 相変わらずガルムは強くなる事に関しては俺に負けず劣らず貪欲だな……


「アユム様、最近教室にいる事が増えましたね?以前みたいに図書室に行かないのですか?」


「あぁ……俺の調べたい事は大方調べ尽くしたし、たまにはこうして教室にてゆっくりするのも悪くない」


「じゃあ、私と……屋上で一緒に昼食でも、どうですか?」


 フィリアは小さな包みを片手にそんな事を聞いてきた。俺が断るとでも思ってるのか?


「俺もちょうどフィリアに話しておきたい事があったところだ……一緒に昼食といこうか」


 という事で俺とフィリアは2人で屋上庭園に向かい、そこで昼食を取る事にした。


「昨日ローヴァからのテレパシーにて、最後の魔王たる〈裂風〉のシャギアが覚醒したとの情報が入った。つまり、この大陸を支配していた魔王達が全員揃ったという事になる」


「それはつまり……クロムとして本格的に過激派の人達を相手に戦いを仕掛けるという風に捉えていいんですか?」


「そうだな……だが、今度はフィリアに心配をかけなくてもいいように出来るだけの配慮をしようと思うんだ」


「配慮……と仰いますと?」


「本物の俺は戦地へ、そして俺とは別に分身をここに残そうと思っている。どちらの俺も実力に差を出さないようにする……その方が万が一、戦いの中で学園が狙われるような事があっても対処が間に合うからな」


 レイディア城にてフィリアにあんなにも泣きつかれ、心配されたんだ……これくらいの事はしてやらないとな。


「でもそれは魔力消費が激しいのでは?いくら最強の魔王でも、魔力が無ければ……あっ」


「俺は魔術のみが取り柄じゃ無いからな。寧ろ俺は魔術よりも剣で次々と斬り倒していく方が好きだから魔力の総量ならば分身を作るには十分だろう」


「流石はクロム様!でも、気を付けてくださいね……何だか大気中の精霊達が騒がしいような気がするので」


「それはつまり、奴らの動きに何か良からぬものを感じ取ったという事か?」


「はい……なので、念の為無理はしないで下さいね?」


「フィリアにそう言われてしまうと、俺もそのように動くしかないな……」


 俺は半ば呆れ気味になりつつもフィリアと約束したのだった。


 そして、放課後になり剣道場に来てみると約束通りガルムが扉にもたれかかって待っていた。


「すまないな、実験室の片付けが思いの外長引いてしまった」


「大丈夫、それで……一体何をするの?」


「取り敢えずガルムに似合う剣を用意するところから始めよう。さ、まずは中に入ろうか」


「う、うん……」


 俺はガルムと共に中に入ると彼の足元に紫色の魔法陣を展開した。


「えっと……今から何をするの?」


「お前の為の剣を用意してやるのさ……俺はこれでも大気中のあらゆる物を剣に変換する事ができるんだ。まずはお前の心をこの魔法陣で読み取って、そこから剣を生成するぞ」


「わ、分かった……とりあえず、目を閉じとくからまた合図してね」


「了解した」


 俺はその後魔法陣に魔力を込め、目を閉じたガルムの心を読み取ってみた。すると、彼の目の前に青と白の双剣が出現した。


「よし、剣ができたから目を開けてくれ」


「ありがとう……まさか、僕の心から……こんな物が作られるなんて」


「正直な事を言うと、俺も驚いたよ。こんな大人しげな少年の心からこんな形の剣が一度に2本も作られるとはな」


「アユム君でも予想外だったの!?」


「あぁ……さて、剣もできた事だし早速次のステップへ進もう。まずはお前の好きなように打ち込め」


 俺は左手に出現させた黒い魔法陣から自分の剣を取り出して構えるとガルムにそう言った。


「2対1……剣の数なら、僕の方が上だ……うおおおおっ!」


 ガルムは2本のうち、青い方を俺の剣に当ててきた。もう片方を振り下ろそうとしてきたタイミングで俺は青い剣による一撃を受け流すと同時にその勢いを活かして白い剣の追撃をもカットしてみせた。


「2本を用いた鍔迫り合いではなく、一本ずつによる怒涛の攻め……か。初めて剣を握った割には中々いい判断だ」


「ホント?」


「嘘は言わないさ……だが、改めてガルムの剣の才能に可能性があるのも伝わってきた。俺が基本を叩き込みさえしてしまえば、後はメキメキと実力が付き、俺を超すのも不可能ではないな」


 俺に攻撃を仕掛ける時に腰を低くした事、更に利き足を下げてバネのように瞬間的な動きで俺に迫った事……この数分間だけでここまで見せてくれたんだ。なら、せめて過激派が目立った動きを見せてない今のうちに基本だけでも教えておこう。


「もう一回、今度こそは後ろに下がらせてみせるよ!」


「その調子でどんどん来い!」


 今度は先程よりも勢いが増していた分、俺とガルムの剣が激しくぶつかった為、剣道場一帯に鈍い金属音が木霊した。


「勢いはいいが、県に力を入れ過ぎているぞ。剣は握る上で力を込めればいい……振る時は全身を使ってなるべく力を抜いて振れ!獣人族なら力を抜いていても人間より勢いのついた振りができるはずだ」


「分かった……せやぁぁあっ!」


 ガルムの覚えの速さもあって、俺は彼の一撃を剣で受けたが、既に右手に軽く電撃が走ったような痛みを感じていた。


 そしてこの後も日が落ちる寸前まで彼に自分の編み出した技の全てを教えられるだけ教えたのだった。

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