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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第2章 目覚める魔王達
22/56

22時間目 久々の日常は時に己を困らせる

 一月半の留学を終えた俺達は再びバルビアの学園に戻って来ていた。


「フィリアちゃーん……と、誰?」


 ルーダはいきなり雰囲気の変わった俺を見ながら直球な質問をしてきた。


「すまないなルーダ、俺は留学先で自分の影と出会ってな……まぁそこで色々あってご覧の通りの姿になったんだ」


「なるほどね……にしても変わりすぎよ!」


「だが、こうして右腕のみは機械のままだな……と言う訳で引き続きよろしく頼む」


「あっ、誰かと思えばフィリアさんにクロム君じゃないですか!留学、お疲れさまでした!」


 ルーダもガルムも相変わらずで何よりだ。


「あぁ……えっと、ルーダとガルムに1つだけ伝えておきたい事がある。俺はご覧の通り人間に戻った訳だ……だから俺の事はアユムと呼んでくれ。クロムとしての名を捨てる訳じゃないが、この名は敵対する者だけに用いたいと考えてるんだ」


「なるほどね……てか、人間に戻ったとか言ってるけど右腕はそのままなのね」


「これは俺があえて残したんだ……俺と俺が初めに倒した魔王とのたった1つの絆の証なんだ」


 俺は鋼で出来た右腕を軽く擦りながら言い聞かせるように言葉を紡いだ。


「これでまた春に組んだグループの皆が揃いましたね!またこれからよろしくお願いしますね、アユム君!」


 学園に戻った俺は昼放課にアヴィスと屋上庭園にて留学先で得た情報をいくつか提供する事にした。


「なるほどな……レイディアの〈剣〉のクリスタルもやられちまってたと。で、頼みの綱である〈紅〉のクリスタルも過激派に狙われている……となると俺たちが取るべき選択肢は1つしかなさそうだな」


「残されたクリスタルを何としてでも守り抜き、その上で過激派を……根絶やしにする」


 アユムは声を低くして……クロムとして決意を新たにした。


「だが、今回は生憎オレが手を出す事が出来ないって事は理解しろよ?」


「そうだな……アヴィスはあくまでも古傷を癒やす為にこの大陸に足を運んだんだったな。それに……アリシアの魔王がロニア大陸の争いに首を突っ込んだなんてアリシアの馬鹿共の耳に入ったりでもしたらオレが帰る頃に内紛が起きちまうかもしれねぇな」


「そこまで分かっているのなら後はそれを行動で示せよ?」


「おまっ、オレがあたかも首突っ込むような物言いしてくれるじゃねぇか!まぁでも、手薄になる学園の守りはやらせろや。転入してきたとはいえ、俺もあの学園の生徒だ……自分の校舎も守れねぇでそんな立場にいる訳にはいかねぇよ」


 全く……昔から自分の利のみをひたすら得ようと躍起になるのは変わらないようだな、この男は。


 まぁ、それがコイツの良さであり俺が唯一気に食わない一面であるんだがな。


「さて……午後の授業へ戻ろうか」


「おう!さーて、今日こそはあの作戦で完璧にセンコーの目を欺いてみせんぞぉ!」


 アヴィスはスティックのりをくるくると回転させながらそんな呑気な事を呟きつつ、俺と共に教室へ戻った。


 同じ頃、ロースティア城ではローヴァが玉座につき、早速配下達を招集していた。


『まずはお前達に一言詫びさせてくれ……長きに渡る封印、申し訳なかった。魔王という身でありながらこのような醜態を晒した事、本当にすまなかった!』


「謝らないで下さいませ、ローヴァ殿!現にロニア大陸の魔王は皆崩御あるいは封印されていたと耳にしている故、そんなに頭を下げられると困ります……」


 薄紫の長髪と整った顔がとても中性的ながらも薔薇のような雰囲気を放っている青年は呼ばれていきなり主が取った行動に驚いていた。


『現在この大陸で目覚めた魔王は我を含め、〈黒鉄〉のクロムと〈焦火〉のグゥリルの三人……残る〈裂風〉が無事に目覚めてくれるかどうか、というところまで来ている。そして二人共我に協力する事を約束してくれている……お前達〈四焔将〉に頼みたいのは民に溶け込み、なるべく過激派に感づかれぬように奴らの寝床を突き止めてもらいたいという事だ』


「なるほどな……それで俺ら四人が総動員って訳か。て事は全土ひっくるめた1大戦争でもおっ始めんのか?」


『そうとも……今一度お前達の力を貸してはくれないか?』


「いいでしょう。私も物書きとして二度目の人生を歩みだしたところでしたので。障害になりうる連中は私の手で葬って差し上げますよ」


「あのっ……く、クロム様は何と……?」


 四人の魔将の中では一番小柄な少女が恐る恐る質問した。


『彼は現在とある学園の生徒であるという関係上、過度な干渉が難しいとは言っていたが……彼の事だ、何かしらの手を打つと信じている』


「そっか……よかったです……」


『では改めて……〈灼炎〉のローヴァの名の元に命ずる……ロニアに巣食う虫けら共を足一つ残さず殲滅せよ!これはかつてのような醜い虐殺でも報復でも無い……騎士達とは違う視点で世界を見てきた我らによる……大陸を取り戻す為の聖戦である!』


「御意っ!」


 クロムよ……そろそろお前も動くべき時かもしれんぞ……事が小さき今のうちに行動を起こせ……!


 配下達に指示を出した後、1人城に残ったローヴァはクロム……アユムに向かってテレパシーを飛ばすのだった。

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