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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第2章 目覚める魔王達
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21時間目 明かされる最後の希望

 もう1人の自分との戦いの後、俺は剣の城を探索する中で無事にフィリアと再会する事ができた。


「あら、クロム……様?何だか雰囲気が以前とは全く異なるような気がしますが……」


「あぁ……俺は自分の本当の名前と力を取り戻したんだ。だから、その……これからはアユムと呼んでくれないか?クロムというのはあくまで敵対勢力と対峙した時にだけ用いようと思ってるからな」


「アユム様……アユム様……はい、覚えました!えへへ、何だかもっと好きになっちゃいそうです」


 フィリアは俺の本名を繰り返し呟いた後、こちらをじっと見つめながら頬をほんのり赤く染めながら嬉しげに言った。


 言われた俺は思わず心臓が早く脈打つようになり、恥ずかしさのあまり返す言葉が出なくなってしまった。


「さて……ここに来るまでにクリスタルの祭壇を見てきたが、ここのクリスタルもやはり破壊されてしまっていた」


「という事はここもアユム様の城と同じように荒廃した後だったと?」


「あぁ……この国もいずれ崩壊してしまうかもな。だが、そうなっていない事も前から引っかかっているんだがな……!?」


『久々だな、クロム……』


 俺がクリスタルについてそんな事を思った時、急に自分に向けて聞き覚えのある声によるテレパシーが響いてきた。


「その声、まさか……ローヴァか!?」


『如何にも……我も遅れながら覚醒したのでこうしてお前に挨拶をしに来たのだ』


「相変わらず律儀な奴だな……だが、お前の事だからただ挨拶をしたい訳じゃ無いだろ?」


『そうとも……お前は今日までの間、何故各国のクリスタルが破壊されているにも関わらず荒廃の速度が遅い事に対し何も思わなかったか?』


「それは俺も疑問に感じていたんだ……もしかして何か掴んだのか?」


『我らが再びこの地に覚醒出来たのも、こうして各国がクリスタルを破壊されてもそこまで打撃を受けてないのも……全ては〈紅〉のクリスタルがまだ残存しているからだ……』


「何だと……なら、次に過激派が狙うのはそれか!」


『そうと見ていいだろう……既に我が配下とその他、この大陸にて覚醒めた魔王達が動き始めている。無理にとは言わん……お前の力を借りたい』


「分かった……何とかしてそちらに手を貸す事を約束しよう。では、失礼する」


 俺はそっと目を開け、もう一度フィリアの方を向いた。


「誰と話していたんですか?もしかして、アヴィスさんですか?」


「いや、今話していたのは俺の古き友であるローヴァだ。彼は南の国ロースティアの王で、別名〈灼炎〉として一躍名を馳せたんだ」


「それで……そのローヴァ様は何と?」


「この南の大陸全ての生命の源たる〈紅〉のクリスタルが過激派の連中に狙われていると情報が入った。もうすぐ俺達の留学期間も終わる頃だ……バルビアに戻り次第、俺はすぐにでも奴らを叩き潰しに向かうつもりだ」


「そ、そうですか……」


 フィリアは俺がこれからしようとしている事に対して不安に思っているのか、少し悲しげな顔でそう呟いた。


「俺は学生である前に魔王だ……自分の国が崩壊の危機に晒されているのを無視する訳にはいかないんだ」


「またそうやって……魔王だからと言い訳をして……」


「フィリア……?」


「私は確かにまだ女神になってから数ヶ月程しか経ってないかもしれません……それでも……そんな私を助けてくれたアユム様が……こんなにも身を削るような事ばかりするのはもう見たくありません!」


 フィリアは怒っているのか、俺の言葉を遮るように叫びながら俺の右腕に強く抱きついてきた。


「また……姉さまの時みたいに……失いたくないんです……私の大切な人を。少しは……自分の体を労って下さい!」


 俺は魔王だ……女神や天使とは相対する闇の象徴だ。だが自分にとって良からぬ動きがあると分かったならば率先して動かねばならない……従者のいない俺のような者は特にな。


「分かったから……泣かないでくれ。でも、分かって欲しいんだ……俺の立場を。俺がお前の思う以上に強いという事を」


「アユム様……」


 俺は彼女を少しでも安心させる為に左手で彼女の頭を優しく撫でた。


「さて、レイディアの学院へ戻るとしようか」


「はいっ……アユム様!」


 俺はこれまでのように足元に転移の魔術を発動し、留学先の学院付近まで移動した。


 そして、それと時を同じくしてレイディア郊外では過激派の者達が集まり、集会を開いていた。


『はじめまして……私の名はサディス、貴方達に協力する司祭でございます』


「司祭殿……今この大陸には魔王が5人いるそうですが、勝てる見込みはあるんですか?」


『彼らはまだ不完全に覚醒しているようなので、今のうちに私の手で再度封印しようと思います』


「既にセクメシャス様やラヴィド様が奴らに敗れていまして……」


『知っていますよ……だからこそ、私は彼らを倒せるだけの術を組む時間が取れましたし、既に完成しています』


「おおっ、では……いよいよ本格的に魔王掃討計画を実行に移せるという事ですね?」


『はい……皆さんは少数のグループに分かれて大陸全土で同時に騒ぎを起こしていただければいいですよ』


 サディスの怪しげな指揮の元、着々と魔王狩りの準備が進められていた。


 それは同時に南の大陸全土を巻き込む総力戦へのカウントダウンが始まった事を意味していた。

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