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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第2章 目覚める魔王達
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18時間目 精霊を守る剣姫

 国王の任を受けてから早2日が経った頃、しつこく追いかけ回してくる魔獣の群れを退けながらも何とかラグラスの管轄区域に来ていた。


「言葉が何1つ通じない魔物達にああだのこうだの言ったところで意味は無いと分かってても……2日も繰り返してたら愚痴の1つも言いたくなるじゃんか!」


『グオオオオ……!』


 村が見えてきた頃、僕の後ろから突如見た事も戦った事も無い巨大な狼が襲いかかってきた。


「大臣から渡された依頼書通りの見た目だな……ま、これまで通りにやるしか無いよね」


 僕が腰の剣に手をかけたのと時を同じくして目の前に立っていた巨躯から突如首だけが転がり落ちた。


「えっ……何で……どうして!?」


「私が来たからよ、剣士さん」


 鈴のような声のした方を見てみると、すぐ近くの木の上に薄い金髪の少女が立ちながらこちらを見つめていた。


「えっと……キミ、誰?」


「あっ、ごめんなさい……名乗りもしないで自慢げにしちゃって。私はフィーネ、この近くの国の剣士よ!」


 フィーネ……そう名乗った少女は立っていた木から飛び降りると僕の目の前まで迫ってきた。


「もしかして……ラグラスに向かう途中だった?」


「うーん……というかこの辺の魔獣討伐の任を受けてたんだよ、僕」


「じゃ、じゃあ私は……君の仕事を取っちゃったって事になるよね?あ、君……名前は?国まで案内した後でお詫びさせてよ」


 何だか僕の想像してたエルフとは物凄くかけ離れてる子だな……


「僕はアユム、ちなみにホームグラウンドは特に決めてない……所謂流浪人ってやつだよ」


「うん、その装備からしてそうだと思った!王国の剣士なのに水晶の付いてないベルトしてたり、マントも新造品にしてはボロボロだもの。ほら、私に付いてきてよ」


 僕はひとまずフィーネの後に続く形で森を抜けてそのままその先にある小さな国へと入った。


「ここがラグラスかぁ……前から来たいとは思ってたけど、凄くのどかだね」


「でしょ?私はこの国を守る剣士として戦ってるんだけど……正直アユムを見てたら私もまだまだだなって思っちゃったわ」


「いや、僕の技は僕が短期間で多くの敵を攻撃出来るように改良に改良を重ねた化け物染みた芸当だよ?」


「けど、現にバルグラスの樹海の魔物の大半を倒したのはアユムじゃない」


「あはは……」


「さて、そろそろ城につくから、くれぐれも失礼の無いようにね!」


「う、うん……」


 あれ、今の今までずっと街を歩いてたけど、街ゆく人達は皆僕らの方を見て驚いたような顔してたな……それに、城の番人も身元確認無しに通してくれたし。


 僕が内心で疑問を膨らませている中、いつの間にかラグラス城の王の間に着いていた。


「貴公の事はヴェインより聞いている。何でも近隣の森の魔物達を狩る事を生業としているそうじゃないか」


「は、はい……」


「その腕、我が娘と大差無いと見ていいのだな?」


「はい……って、え!?我が娘って……」


 突然エルフの王様が口にした言葉に僕は驚いたあまり、声が漏れていた。


「私の事よ、アユム」


 僕の驚きはこの一瞬で一気に天井まで到達した。さっきまで砕けた口調で話していた女の子が胸を張ってそう言ったんだから。


「えっ、じゃあ……フィーネは……」


「お前の察する通り、我が国の姫君であるが?まぁ、妹と違い城を空ける事が多い故、疑うのも無理はないか」


「は、はぁ……」


「さて、任を満了したお前に我から1つ試練を与えよう」


「試練……ですか?」


「そう、試練だ。我が国ではお前くらいの年の若者に聖剣の間にて己に合う聖剣を与える事にしているのだ。お前程の実力ならば聖剣も力を貸すであろう」


「わ、分かりました……」


 僕はそのまま大臣に連れられて、王の間のすぐ下にあるという聖剣の間へと向かう事になった。


 名前の通り部屋に入った途端に僕の目の前には階段と小さな台、そしてそれと向かい合う形で壇があった。


「これが……聖剣の間……」


『良くぞ来た、流狼の剣士よ……さぁ、そこの台に立ち、己の心の声に耳を澄ませるのです』


 僕は何処からか聞こえたその声に従ってその台の上に立って目を閉じてみた。


 しかし、その次の瞬間に僕の体に異変が起きたのか、全身が電気を帯びてるんじゃないかと思うくらいに激しい痛みと痺れが走った。


「ぐっ……うぁっ……!」


 バチンという音と共に僕は台から吹き飛ばされ、近くの壁に勢いよく叩きつけられてしまった。


「あ、あれ……何が起きたんだ……?」


 背中の痛みが残る中、ゆっくりと体を起こしてみると、僕が先程まで立っていた場所には本来現れるはずの聖剣は柄の部分すら現れておらず、その上足元だった部分は真っ黒に焦げていた。


「やはり、いくら腕の立つ者でも流浪の身に聖剣が宿る事は無かったようですね……」


「大臣さん……僕が流浪の身って分かってたんですね」


「そうであると同時に……貴様のような薄汚い者がこの地に踏み入った事に対し、処罰を下す!」


 大臣はそう言いながらいきなり僕に切りかかってきた。


「ちょっと、いきなり何するんですか?」


「お前のような奴が姫と親しくするなと言いたいんだ!」


「そ、そんな……くっ!」


「止めなさい、エルス!」


 大臣からの圧に押されかけた僕を助けてくれたのは仲良くなったばかりのエルフの少女……もといフィーネだった。


「姫……しょ、承知しました」


 大臣も流石に姫には逆らえないのか、剣を納めて僕を一睨みしながらその場を去っていった。

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