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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第2章 目覚める魔王達
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11時間目 魔王×魔王=圧倒的勝利確定

「まだ行けるかい……アヴィス!」


「へっ、聞くまでも無いってもんよ!」


 俺達2人はいつも背中を預け合ってあらゆる敵を倒してきた。勇者と海賊……ほぼ真逆の立場でありながらそんな風に戦えたのは偏に俺達が世界の影を相手にしていたからだ。


 それは例え俺達が魔王の道に進んだとしても、決して変わる事は無かった。


 3年前のあの時も……俺の側には彼が居て、そしてそこには俺が魔王に身を落としてもなお側にいようとしたフィーネが居た。


「おい……おい!」


『う……ん……アヴィスか。一体何だ?』


「ったく、休みの日だってのにいつまで寝てやがるんだお前は!」


 アヴィスは呆れつつも俺の被っていた布団を勢いよく剥がした。


『何故俺を起こす……今日はゆっくり寝かせてくれ……休校日なんだから』


「忘れたのか、オレらは今2人共オーブが無いから他の魔王達に連絡を取る手段が実質ゼロだろ……使い魔を出そうにもよくよく考えたら学園内でそんな事したら一発で停学処分だぜ?」


『それもそうだな……ではどうする?』


「郊外に出て、そこでコイツを使う」


 アヴィスはマントの内ポケットから赤色の水晶のような物体を取り出して俺に見せてきた。


『お前……いつの間にそんな物騒な物を取り寄せていたんだ』


「取り寄せたんじゃねぇよ!元々オルカの野郎が持ってたものを譲ってもらっただけだよ!」


『そうか……そういえばオルカは今どうしているんだ?』


 海将オルカ……かつて俺が魔王になって間もない頃に剣の手解きをしたアヴィスの右腕だ。少し生真面目さが目立つが魔王の重臣としてはこれ以上ない程優秀な奴だな。


「アイツもオレと同じく力の大半を失っちゃいるけど、相変わらず剣の腕を落として先生にお叱りを受けないようにって鍛錬ばっかだぜ」


『そうか……ならいいんだ。さ、そういう事ならさっさと行こうか』


「へへっ、一度起きてしまえば行動の速さはピカイチだな!んじゃまぁ……行こうぜ」


 俺とアヴィスは学園を出ると、そのまま街へ出た。


「しっかしまぁ……随分と平和になったよな、ここも」


『昔に比べればな……だがこれでも世界崩壊へのカウントは始まっているんだ。俺達だけでも動いて影を叩くしか無いだろうな』


「その為の足が乏しいんじゃお話になんねぇけどな」


『そう言うな……あれは……』


 俺達の目の前をほんの一瞬ではあるがローブ姿の男が通ったような気がした。


「見えたな……」


『あぁ、追うぞ!』


「言われなくたって!」


 俺達はローブ姿の男が走っていったであろう方向へ向けて走るうちに本来の目的地である郊外へ出た。


『な、何だね……1学生の者達がどうしてこんな場所に!?』


「生憎オレらはアンタらに用があってね……オレらとしては事情聴取したい所だけど?」


 アヴィスは黒いローブの男達を前に何も躊躇うことなく銃口を向けた。


『一体何を目的としてそんな事をしている?答えによってはお前達を斬る!』


 俺も彼に続く形で腰に提げていた剣を引き抜き、その切っ先を敵対者に向けて威嚇した。


『やはり魔王ともなれば姿が変わっても我らの計画などすぐに気付いてしまうか……』


 数名程いた黒ローブの集団の真ん中にいた男がフードを外し、その素顔を見せると同時に俺達に重力波を飛ばして吹き飛ばした。


「まさかコイツ……例の司祭様かよ!?」


『如何にも……私は地の司祭ラヴィド、遙か西の国より南国の全てのクリスタルを破壊すべく参りました過激派の一角に御座います』


「ハンッ、ナメられたもんだなぁ……海の魔王と黒鉄の魔王が揃ってんだぜ?そんなデカい口叩いていいのかぁ?」


『口を慎むべきは貴方達の方で御座いますよ!』


 ラヴィドは何も無かった場所から楔状の岩を生成して俺達に飛ばしてきた。


『西の国の者がそんな事の為だけにここまで来るとはな……だが、俺が扱う力を見誤らないうちに身を引く事をお勧めする』


 俺は左手に固有の魔法陣を展開してラヴィドが放った礫を打ち消して剣に纏わせた闇の波動を放った。


「海じゃないが……好きに荒らさせてもらうぜ!オラオラオラァ!」


 アヴィスは左手に持った銃を乱射しながら相手の集団の中へ飛び込んでいき、早速乱闘騒ぎに発展した。


『ぐっ……流石はセクシャメスが破られるだけの事はありますね。ですが、私が土魔法のみを扱うとは思ってませんよね?』


 急に耳鳴りがしたかと思えばその次の瞬間には既に俺の片膝が地面に付いていた。


「おい、大丈夫か……!?」


『まさか……お前も重力魔術が使えるとでも!?』


『鋼のクリスタルが消えた今、力の一端すらも弱まった貴方に私が劣る訳が無いでしょう!』


 重力魔術がより一層強まったのか、とうとう苦しくても超えが出せなくなる程にダメージが重なってしまった。


「くっ……野郎っ!」


『問題無い……これしきの術如きに屈する程俺は弱くはない!』


 俺は何とか動かせた左手で重力魔術を打ち消すと、少しよろけながらも構え直した。


『むぅ……何と小癪な真似を……!』


『お前は重力魔術をただ使っているだけに過ぎん……重力魔法は……こう使うものだぁっ!』


 俺は無詠唱で自分に重力魔術を付与し、傍から見ればかなり遅い挙動でラヴィドを斬りつけた。するとラヴィドはかなり遠くまで吹っ飛び、未だに乱戦状態の他の仲間達諸共近くの岩壁に叩きつけられた。


『がっ……何と……いう事……だっ』


「ほぉぅら言わんこっちゃない!いいかお前ら、クロムを相手にするって事がどんだけバカな事かこれで分かったろ?」


『分かったのなら今すぐ西の祖国へ帰り、己の悪行を全て白状しろ!』


『ククク……私の目的は間もなく果たされる!今更学園に引き返した所でもう遅いのです……』


 ラヴィドは捨て台詞のように意味深な言葉を残して自爆し、仲間共々消滅した。

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