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黒鉄の魔王と降りたて女神の学園生活  作者: よなが月
第2章 目覚める魔王達
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10時間目 衣替えと海賊

「あーつーいーよー……死んじゃうよー……」


 ルーダは真新しい夏用の制服をパタパタさせて何とか涼を取ろうとしていたが、あまりにも暑いのか遂に音を上げていた。


 そう、ここバルビアにもそんな季節が来てしまったのだ……一般的に夏と呼ばれるこの時期のバルビアは世界4大陸の中でもトップクラスで酷暑な事で有名である。


「確かに……随分と暑くなりましたよね。あ、ガルムさんにクロム様……おはよう御座います!」


「おはよう、2人共。夏服、とっても似合ってますよ!」


『あぁ……俺も衣替えしてみたが……まだ少しこの姿に慣れるには時間が必要だ』


 今の俺の姿は傍から見れば人間の少年……だが、実際は身体機能の大半を機械に任せている所謂サイボーグだ。


「へぇ……暫く保健室で寝てたと思ったら、凄い変わりっぷりじゃない」


『まぁ、ルーダもフィリアも専用カリキュラムで中々俺の元に顔を出せなかったんだ。そう思うのも仕方がないさ……』


「そういえばクロム様も今日から授業に出られるんですよね?」


『あぁ、そろそろ本格的に学生として勉学に励もうと思ってな』


 そして暫くして教室に担任が入ってきたので、俺達はそれぞれ自分達の席に座った。


「えー……皆さんも分かっていると思いますが、今日からこの学園では夏の制服での登校が可能となります。それと同時に夏のカリキュラムが始まります。春と違い外での実習がメインとなりますので気を抜かないように。それから……アリシアから交換留学生が来るので紹介します」


 担任からの案内の後、教室の扉が開き……入って来たのは何処かで見た事のある青い海賊の羽織を着た少年だった。


「よっ、オレはアヴィス!アリシアを支配してた……元、魔王だ!よろしくなっ!」


 やっぱりか……アイツはどれだけ時が経ったとしても変わらないな。


 夏のカリキュラムでは男子限定で剣の立ち合いが行われるという事で、俺は早速アヴィスと組む事となった。


「ヘヘッ、まさかお前とこんな形で再開できるとはな……嬉しいぜ」


『相変わらずそのオレ様口調は変わらないんだな』


「さ、久々に派手にやり合おうやぁ!」


 アヴィスは学園から実習用に貸し出された剣をクルリと一回回しながらも腰に提げた銃を発砲しながら俺に迫ってきた。


『流石は海に囲まれた街で荒くれ者を相手取って返り討ちにしただけの事はあるな。そしてそんな腕が落ちてないのも驚くばかりだよ』


「へっ、そっちだって蘇っておきながらブランク一切無さそうじゃねぇか!」


 周りの生徒達も各々剣同士で火花を散らしていたが、俺達元魔王組はというと……完全に自分達だけの世界に入り込んでしまっていた。


「お互い魔王とは思えねぇ姿になっても、身のこなしだけはあの頃と大差がねぇ……だがなっ!」


 ギャリィンという独特な金属音と共に俺の手から持っていた剣が離れ、足元に突き刺さった。


「そこまでだぜ」


『今回ばかりは流石に俺の完敗だ……』


 そして昼放課になった時も俺はアヴィスに呼ばれてガルム達のいる食堂ではなく、屋上庭園に向かった。


「悪いな……学友がいるのにわざわざ呼び付けたりしてよ」


『重要な話なんだろう?なら寧ろ呼んでくれて構わないさ。で、その用件とはなんだ?』


「お前ももう分かってんだろ……魔王に変わる何か(・・・・・・・・)が少しずつ動きを見せている事を、な?」


『分かっているさ……目覚めた時に自分の姿が少し異なっていた事で薄々と感づいてはいたが、やはりお前も気付いてくれていたか』


「海が騒がしいんですぐに状況は理解できた。何より……クリスタルが壊されてたのが決定的な証拠だな」


 なっ……た、確かに俺が城で目覚めた時には既に台座に安置していた鋼のクリスタルは破壊された後だった。


『クリスタルの破壊が何を意味するか……奴らは分かっているのか?』


「多分半々だろうな……つまり、奴らは」


『過激派残党……という事か』


「そう考えるのが妥当だろうな……となった時に奴らの指揮を執ってんのは誰だって話だが……」


『奴らは司祭なる存在の下で動いているらしい。現に俺はその司祭と交戦している』


「セクシャメスとかいう奴か……アイツ、まーだこそこそ生き延びてやがったのか」


 アヴィスは物凄く呆れたような顔でため息をついた。


『安心しろ……奴は俺の精神世界に干渉してきたが、俺の手で葬ったばかりだ』


「精神干渉……って、アイツいつの間にそんな奇怪な術を覚えてやがったんだ!?」


『さぁな……だが、以前俺が勇者でお前がまだアリシア海域の賊だった時に戦った頃よりも格段に実力を付けていた』


「これで司祭が一人じゃねぇとしたら……たまったもんじゃねぇ」


 全くその通りだ……クリスタルが砕かれ、世界の均衡が静かに崩れている中で過激派の動きがさらに活発になれば……!?


『今蘇ってる魔王の数は……』


「俺が知る限りでもまだ4人……オレ、お前、クレイオン、カルラだけだ。だがまぁ、クレイオンもカルラも連絡が付かねぇ訳でよ」


『なるほどな……では俺はカルラとコンタクトを取ってみるから、お前はクレイオンに繋いでくれ』


「分かった……んじゃ、オレはこの後学校案内があるんでこれで。また何かあったら、使い魔の1つでも飛ばしてくれ」


『あぁ、分かったよ』


 これで全て理解したよ……やはり世界は少しずつ変わり始めている。クリスタルがこのまま世界から全て消えてしまうような事があれば……あの日と同じ悲劇(・・・・・・・・)が繰り返されてしまう。


 フィーネやアイオンが望んだ未来の為にも……今ある世界の歪みは……必ず潰す!

皆さんどうも、よなが月と申します!

遂に第2章開幕です!


夏の南国は暑いと昔から言われてますが、本作の南国バルビアも絶賛灼熱地獄でございます(笑)


そんな中唐突に登場した新キャラはクロムの盟友で元海賊の海王アヴィス!


彼もまたクロムと似た経緯で昔と異なる姿で蘇った魔王で酒と人魚が大好きな子です。


更に2章は魔王が続々登場するのでお楽しみに!

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