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転生家族〜異世界で主夫しています〜  作者: mikami_h
終幕 儚き夢の物語
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第六十五話 家族と転生と

「ハッ!!【追撃乱舞】!」


スミレの剣舞は冴えわたり、四方八方から剣戟が襲い掛かる。

ゲンタは防戦一方で、かわす余裕すらなかった。


「レベル1にしては頑丈だな。やはり転生者は普通の人と体の作りが違うのか?それとも久しぶりで私の腕が鈍ったのか?」


スミレは不思議そうに思いながらも攻撃の手は一向に緩めることはなかった。


【ステータス】


スミレが呟き何もない空間に目を向ける。


「うん、能力値は魔王を倒した時のままだな。新しい世界を作るために言霊を全力で使ってるから魔力はほとんど残ってないな、」


ゲンタは不思議そうにその光景を眺める。


「これか?自分の能力値を見れるんだよ。ステータスって唱えてみなよ」


ゲンタは半信半疑になりながらも呟いた。


【ステータス】


-----------------------------------------------------

ゲンタ・シライ レベル ◆4Λ

職業 戦士


体力 200/720 

魔力 15/15

経験値 320/1200


ステータスポイント 50


力 50 ▲

素早さ 30 ▲

知力 5 ▲

運 20 ▲


スキルポイント 10


スキル ▼

-----------------------------------------------------


ゲンタの前に数値が表示される。あまりの情報量に呆然とする。


「ふふ、驚いたかい?それが君の能力を現す数値だ。レベル1だから数値はどれも10か20か、そのくらいだろう?ちなみに私の力は800、これだけで力の差がどれほどあるかわかるだろう?」


スミレのいう事が本当ならば二人の差は数十倍にもなり、逆立ちしても勝てない差だ。


「本来なら魔物を倒してレベルを上げ、能力値を割り振ってスキルを習得する、そうしてやっとたどり着ける領域だが、君にそんな時間は与えないよ。このあと世界を壊さないといけないからね。君にばかり構ってられない。」


スミレの話しでゲンタはふと疑問に思う、まずは自分のレベルだ、これは文字化けしていて何故か読み取れない、しかし経験値が中途半端に入っている。これはすでに魔物との戦闘経験をこなしていることを意味しているのではないか。

ゲンタは試しに力の横にある▲に触れてみる。



-----------------------------------------------------

ステータスポイント 49


力 51 ▲

-----------------------------------------------------


力の数値が上がっている、どうやらこのステータスポイントが割り振れる能力値の数みたいだ。

すでにゲンタのなかで一つの仮説が出来上がっていた。


(以前行った地下遺跡、そこはこの世界の遺跡だったのか。あの時もバグった声が聞こえて自分の身体能力が向上するのを感じた。)


ゲンタは一心不乱にステータス画面から、自分の能力値を高めていく。


「はは、いくら操作しようとレベルを上げて、ステータスポイントを稼いでいないと能力は上がらないよ。そのレベルを上げる方法も、敵である私を倒すしかない、まさに八方塞がりだね。」


ゲンタは少しでも時間を稼ぐためその場から逃げ出す。


「悪いが、力だけでなく素早さも800超えてるんでね。」


逃げ出したゲンタの前にスミレが現れる。そのまま剣を振り下ろし、ゲンタの左腕を難なく切り落とす。


「ぐわぁぁ、」


腕から血が噴き出し、あまりの激痛に声を上げてその場にうずくまる。


「軽く振っただけなのに簡単に千切れ飛んだな、人の体とは脆いものだ。」


剣に着いた血を払いながら、スミレはそっけなく答える。


「次は苦しまぬように首をはねて、それで終わりだ。下手に動くなよ。」


スミレは、痛みで這いつくばるゲンタの首筋を見定めて告げる。ゆっくりと剣を掲げ、そのまま垂直に打ち下ろす。


「うぉぉぉぉ!!」


ゲンタの命を刈り取ろうとしているその刹那、スミレは横から急に体当たりされる。

スミレは態勢を崩され、振り下ろした剣は無残にもゲンタをかすめて地面へと刺さる。


「貴様らいつの間に!!」


スミレの前には、三人がゲンタを守るように取り囲んでいた。


「お父さん!!今治すわ、頑張って。【金蘭之契】」


セナはゲンタの千切れた腕を繋ぎ戻すために言霊を発動する。

柔らかい光と共にゲンタの腕は繋ぎ止められる。


「ありがとうセナ。」


「ごめんなさい、呪文が使えないから傷を完全に治すことが出来なくて。」


「くっついただけで十分さ。」


セナも今や呪文の力を失い、残されたのは言霊の力だけだった。


「ちっ!!まったく力が入らねぇ、剣も消えちまって攻めることも守ることも満足にできねぇな。」


スミレに体当たりをしたコウタが体を起こしながら呟く。


「コウタ!言霊も失ったお前があんまり無茶するんじゃないよ!!」


マリがコウタに注意を促す。


「そうか、娘の言霊で家族を繋ぎ止めていたか。それでいち早くここに来れた訳か、」


スミレが体を起こしながら四人を睨みつける。


「何人レベル1が集まった所で事態は変わらないのにな、わざわざ死にに来たようなもんだぞ?」


「そんなのやってみなくちゃわからねぇ!」


スミレの威圧に気圧されながらも、コウタは果敢にも突っ込んでいく。

先ほどとは違い今度はしっかりコウタの攻撃をスミレは受け流すと、剣の背でコウタの体を数か所打ち付けた。

コウタは血を吐きながらその場へ倒れる。


「骨の数本は折れたか?切り捨てても娘の言霊ですぐ繋がれてしまうからな。なぶり殺してやるよ。唯一私に対抗出来たお前の言霊が使えなくなっていたのは幸いだったな、これで恐れるものがなくなった。」


コウタの言霊【唯我独尊】、単騎ならば無類の強さを誇り、レベル差で上回るスミレすら圧倒した可能性は高い。しかし、孤独を捨て、仲間を思い、家族を愛することを選んだコウタには以前の想いは失われ必然的に言霊も失っていた。


「さぁ、今度は家族みんなで地獄へ行くといい。」



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