第六話 国王と主夫と
「ようこそ我が王国へ、異世界人さん」
今、俺の目の前には少しお腹の出た中年が立派な椅子に腰を下ろしている。
「あぁ、オイラはスミス・バークロットこの国の国王さ」
そう言って国王は眠そうに欠伸をしている。
「失礼、国務が忙しくてね。」
それにしても、無精髭でツナギ姿とは、国王と言われても信用出来ないな。鍛冶屋の親父と言われた方がまだ信じられる。
「さて、この時期に異世界人とは珍しい」
国王は品定めするかの如く三人を見比べる、その眼光はさすがの威圧を放っていた。
「まぁ、何も分からず不安だろう、まずは自分のことから調べてみるか?」
そう言って国王は側近を呼びつけると手のひらサイズの水晶玉を持ってこさせた。
「これは握って念じた者の能力を簡易的に表すもんだ。自分の能力が分かればできることも見えてくるもんさ。」
そう言って水晶玉をコウタに渡した。
「握って念じるねー面白そうじゃないか。」
コウタはこの状態でもどこかワクワクしている。
コウタが念じると水晶玉は赤い光を発した。
「おぉ、これはすごいな。なかなかの素質だ」
国王は喜びとも驚きとも言える声を発した。
「どうやらお前さんには戦士、いや騎士団長並みの素質があるな、まぁいくら素質があっても努力しなくては一般兵と変わらないけどな。」
国王は淡々と言う。コウタは水晶玉を握りしめて打ち震えていた。
「この力があれば俺は1人でも生きていけるな。」
コウタはつぶやいていた。
「さて、次はお嬢さんだな」
国王に促され、水晶玉はコウタからセナの手に渡った。
セナも水晶玉を握りしめ念を込めた、またも水晶玉は眩く白い光を発する。
「この子もまた素晴らしい素質だ。しかも呪文の才能まであるとは。」
国王は嬉し気に声を上げた。
「お父さん聞いた聞いた?」
セナも褒められて嬉しそうである。
「セナ、才能があるからってそれに胡坐をかいてちゃダメだぞ。」
俺はセナから渡された水晶玉を握りしめながら忠告した。自分もセナ以上にウキウキしながら・・・さて父親の威厳を見せてやる。
「・・・あれ?なんも起きないぞ?」
静寂に耐え切れずに俺は声をあげた。
「うむ、無能じゃな。」
「え?」
国王の言葉を理解できず、聞き返す俺。
「まぁ一般人ということだ、優秀な子供たちがおるし暮らせないとこもなかろう。」
まさかこの年で引退勧告とは。国王の言葉に愕然とした。