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転生家族〜異世界で主夫しています〜  作者: mikami_h
第四幕 少女と世界の物語
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第五十話 緑とドワーフと

「鏡よ、鏡、この国で一番美しいのは誰だい?」


(それはマリー様でございます。ですが、国外も含めますと・・・)


「なに?他の者がいるのか?」


(山を超えた樹海の奥、ドワーフの里に暮らす娘、セナでございます。)


「あいつは殺したはずでは、あの心臓は偽物か!忌々しい」


そう言ってマリーは呪文を唱える。

地面から黒い煙が立ち上り、だんだんと煙は細長くなっていく。たちまち煙は黒い蛇となりマリーの足元にすり寄る。


「さぁ、私の可愛いペットよ今からセナの元へ行き、その首を締め上げておいで」


マリーが命じると蛇は赤い目を細め闇の中へと消えて行った。

マリーはなおも策を講じ、一匹のゴブリンを呼び寄せ暗殺も命じることにした、二重の策を弄し安心したマリーは再度鏡と向き合うのだった。


----------------------------------------------------------------------------


「セナ、オハよウ。ヨク眠れタ?」


たどたどしい言葉を発しながら部屋に入ってくるドワーフ。


「えぇ、おかげさまで疲れも取れたわキット。」


キットと呼ばれたドワーフは嬉しそうに手に持つ朝食をテーブルの上に並べる。

身長は1メートルにも満たず、手足は短い、髪も髭も長く顔からは年齢を察することが難しい。

狩人に助けられたセナが言いつけ通りに進んだ樹海の先で出会ったのがこのドワーフだ。

最初こそ軽快していたが、セナの言葉に次第に打ち解け今では親身に世話をしてくれている。


「コレ、朝飯、たくさんタベテ。」


「うん、いつもありがとう。」


「最近モリ騒ガシイ、ソト出るのダメ」


「えぇわかったわ。」


キット曰く、セナを匿ってから森の様子がおかしいらしい。セナはまた自分が狙われているのではと気が気ではなかった。


「キット、この後食料探シテクル。セナ、ここにイル。」


「えぇ、わかったわ。キットありがとうね。」


「キット、セナの役ニタテテ嬉シイ。」


キットはそう言って、ウキウキで出かけて行った。

キットが出掛けてからセナは家の掃除や洗濯など一通りをこなす。そして窓から外を見たところ雑草が生い茂る庭が目に入った。


「せっかくお庭があるのに勿体ない、お花でも植えたらキット喜ぶかしら。庭先なら出ても安全よね。」


セナはそう考えると早速庭に出て草むしりから始めるのだった。

夢中になって草を刈るうちに日はすっかり高くなっていた。


「そろそろキットも戻ってくるかしら。お昼の用意しなくちゃ。」


セナは刈った草を一箇所に集めながらそう呟いた。草を片づけ家に入ろうとした時、茂みから何かが飛び出してくる。

セナが振り向いて確認した時にはもう目の前までソレは迫っていた。


「ガハッ、」


セナが抵抗する間もなく、茂みから襲い掛かってきた蛇はセナの首に巻きついてその喉を締め上げる。その力は強くセナの力では到底引き剥がすことが出来なかった。


「なかなか家から出てこないからヒヤヒヤしたよ。このまま手ぶらで帰る訳にもいかなかったから助かった。お嬢さん、悪く思わんでくれ。」


蛇は、舌を出しながら不敵に話し出す。

セナは抵抗虚しく意識が遠のいていくのを感じた。


「フンっ!!」


その時、森からキットが現れ、セナに巻きつく蛇を捕まえ引き剥がす。


「チッ、もう戻って来やがったか。」


「嫌な気配、感ジタ。お前悪いヤツ。」


急いで逃げようとする蛇にキットは斧を振りかぶり襲いかかる。蛇が森に逃げ込むより早くキットの斧が蛇を捉えその首をはねた。


「セナ、ブシか?」


「ハァハァ、えぇ、助かったわキット。」


セナは息を整えながらキットにお礼を言う。


「マダ不気味ナ気配は消エテナイ、ハヤク家にハイッテ。」


倒れ込むセナを起こしてキットが急かす。

セナも弱々しく立ち上がりながら玄関へと歩いていった。


ヒュン!トス


「あっっ!!」


その時セナの左足に矢が刺さる、キットはすぐに後ろを振り返り矢の飛んできた先を見据える。

方向を確認すると、呪文を口ずさみそれを解放した。


ガサガサ、ドサッ!


するとキットの目線の先にキットと似た姿の土人形が六体現れる。

人形はすぐに木の陰で身を隠すゴブリンの狙撃手を見つけて拘束する。

キットはセナを室内に置き、拘束したゴブリンに近づく。


「コノ矢、毒アル。解毒剤ダセ。」


キットは矢の刺さった部分が紫色に変色していくのを確認していた。

キットの問いかけにも何も言わず睨み返すゴブリン。

そこでキットは、ゴブリンの持つ矢を奪うと、それをゴブリン自身に突き刺し、その拘束を解いた。


「ギャグァキャキャ!!」


ゴブリンは慌てて叫び、懐から持っていた丸薬を取り出し口に含もうとする。

キットはすかさず丸薬を奪うと、ゴブリンをそのまま森へ放つ。


「二度と来ルナ、ご主人様ニモそう伝エロ。」


キットはゴブリンに言い放つと、そのまま急いで家で倒れるセナの下へ行く。

セナはキットの呼び出した土人形の一体が矢を抜いて看病していた。


「セナ、コレ飲む。」


キットはセナに近寄ると、急いで丸薬を与えた。

キットはそのままセナを抱きかかえ寝室のベッドへ連れて行く。


「しばらく休メバ毒もヌケル。セナ、ガンバレ。」


ベッドの中で高熱にうなされるセナの横で、キットは必死に看病するのだった。


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