第五話 騎士と王都と
「うーん、」
騎士を背負って歩いてしばらく経つとやっと当人が目を覚ました。
「気づかれましたか?お加減は如何ですか?」
セナが心配そうに騎士に声をかける。
「ここは?あれ?腕が治ってる。」
「何故かわかりませんが、繋げたいと願った途端に傷口が塞がってきて」
セナが困惑した様子で事実を告げる。
「願いが現実に?もしや言霊?」
騎士は一人でぶつぶつと呟く。
「とりあえず、助けて頂いて感謝いたします。ところで何処に向かっておいでで?」
「何処ってなぁ、それが、道がわからんのよ」
俺は正直に現状を告げる。
「まさか角兎まで仕留めるとは。感服致します。行く場所が無いなら、ぜひ我が街へ」
このまま彷徨うわけにもいかないので、騎士さんのご好意に甘えることにする。
[王都バークロット]
「「「ほぉー」」」
家族三人口を開けて大きな城壁を眺めている。
「いや、いきなり王都て!!もっとこう順番があるだろ!最初は辺境の村だろ、そもそもスライムからだろ!」
コウタが声を荒げる。彼なりに思うところがあるみたいだ。
「落ち着けコウタ、おのぼりさんと思われるぞ。」
俺は極力落ち着いた声で告げる。
「お父さんも、声裏返ってるよ。」
2人の後ろでセナがため息混じりに声をかける。
「さっ、さぁいきましょう」
そんな家族のテンションに引きつつ先を探す騎士さん。
「ところで皆さんは身分証はお持ちですか?」
「いや、持ってねぇな」
コウタが考えなしにこ答えていく。
「そうですか、失礼ですが皆さんはもしや異世界人では?」
三人は一瞬目を合わせる。
そんな様子を見て慌てて騎士さんは言葉を続ける。
「いやいや、そうだからと言って取って食う訳じゃありませんよ。命の恩人の皆様ですから、もしそうなら、ここで住みやすいように手配致しますので。」
「若干1人恩人でない奴もいるがな」
コウタは意地悪な目線を向けてくる。
「もう、意地悪しないのお兄ちゃん!」
コウタは笑いながら城門に近づいていく。
俺は騎士さんに向き直り、
「なんせ右も左もわからないもんで、厄介になってもいいかい?」
「もちろんですとも、まずは王に謁見させるのが宜しいかと」
騎士さんは提案してくる。
「一国の主人にそんなに簡単に会えるものなのか?」
コウタは怪しんで聞いてきた。
「もちろん普段は会えませんよ、しかしこの国では異世界人は特別なんです」
「俺とセナみたいな力のせいか?」
コウタの答えに、騎士は黙って頷いた。
「確か言霊とか言ってましたね、何かご存知なんですか?」
セナは騎士さんに聞いてくる。
「私も詳しく知りませんので、そのためにも王に会われるのが宜しいかと。」
「うーん、まぁ今のところ他にいい案もないし、騎士さん信じていいかい?」
俺は真っ直ぐ騎士さんの目を見つめる。
「はい、お任せください。」
主君に従う騎士のように真っ直ぐと、力強い声で返事を返すのだった。