第四十三話 親子と猫と
「さて、バンズ話しを聞かせてもらおうか。いまさら隠しても無駄だぞ。」
オーガの襲来から一息ついた後、俺はバンズに問いかける。
バンズやトニオの言動に思うとこがあり、何か隠していると察したからだ。
「ゲンタさん、申し訳なかったですにゃ。」
バンズは諦めたのか、ゆっくりと話し始めた。トニオはまだ気を失っている。
「実は私は魔王の配下の者ですにゃ。今回はトニオを使って王国とのコネクションを持つために行動していましたにゃ。」
「えっ魔王軍ってことはバンズさんは敵なの?」
セナがショックを受けている。
「それはこれからのお互いの行動次第ですにゃ。そして、王国の内情を知るために私が遣わされたにゃ。」
「それなら普通に和平の使者とか言ってくれば良かったんじゃないか?」
俺はバンズに提案する。
「先の戦いで明確な対立行為を取っているから、話しはそう簡単じゃないにゃ。私は穏健派ですが、中には攻撃的な者もいて、魔王軍も一枚岩ではないんだにゃ。」
バンズは肩をすくめて答える。
「それで信頼を得るために一芝居うとうとしたが、ことごとく失敗したわけか。もともとこのトニオが領主というのに無理がある。」
俺はトニオを見ながら言う。
「はいにゃ。このトニオに目を付けましたが、想像以上のお荷物でしたにゃ。もともと問屋の三男坊だとかで雇ったんですが、ここまで使えないとはですにゃ。」
「気苦労が絶えなかったな。」
俺はバンズに同情する。
「しかも抱き込んでいたオーガとは別のオーガが城に住み込んでるしで、めちゃめちゃにゃ。」
「やはり、あのオーガもアクシデントの一環か。」
どうりで最初トニオとバンズが自信満々なわけだ、俺は納得する。
「お父さん、バンズさんなんだか可哀そう。」
すっかり落ち込むバンズを見てセナも同情する。
「悪意がないのは十分わかった。俺が王様に取り次いでやろうか?」
「ほんとですかにゃ!?このまま帰ったら上司に怒られるところでしたにゃ。」
バンズは明るさを取り戻して言う。
「あぁ、でも期待はするなよ。」
俺は念を押す。
「はいですにゃ。」
そうして俺たちはバンズと別れて、それぞれの居場所へ帰っていった。
セナはバンズとまた会う約束を交わし、名残惜しそうに王都へと帰っていった。
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「それにしても今回はえらい目にあったにゃ。」
魔王城の一角、豪勢な部屋にはバンズの他に二つの人影があった。
「猫さんお疲れ様、とりあえず無事でなによりよ。」
小さな人影はバンズに労いの言葉をかける。
「またしてもシナリオは覆されたか。たった一つの不確定様子が混ざるとめちゃくちゃだな。」
大きな人影は考え込むように呟く。
「今のうちに何かしらの手を打っておくべきか。バンズ、その者をここに連れてこれるか?」
「はいにゃ、主の命令とあればやってやりますにゃ。」
バンスは姿勢を正して答える。
「猫さん、次も面白い話しを期待しているわ。」
「毎回面白さを提供するつもりはないんだが。まぁ喜んでくれるなら構わないよ。」
二人は見つめあって笑っていた。




