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転生家族〜異世界で主夫しています〜  作者: mikami_h
第二幕 友と友情の物語
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第三十四話 呪文と素質と

「マグネスさん、素質も消えるっていったい?遺跡の呪いですか。」


ことの重大さにマレットは驚く。


「果たして呪われているのは、遺跡か世界か。詳しいことはワシにもわからんのじゃ。」


マグネスは真剣に応える。


「昔ここに初めて来たときワシも驚いた、呪文が使えなかったんじゃからな。それだけでなく、魔導士としての特性も失われておりモンスター相手に、普段の力の半分も出せなかった。」


「ここにはモンスターも出るのか?」


俺は驚いて聞く。


「ワシが出会ったのは地上のものとは違い、そこまで凶悪ではなかったが。呪文を使えぬとなると逃げるしかないかった。ゲンタはともかく、期待してるぞマレット。」


マグネスもここではマレットに期待しているようで、さすがに小僧呼ばわりはなくなった。


「それでマグネスさん。こんな危険な場所にいったい何しに?」


マレットはマグネスに聞く。


「旧時代の遺物を取りにきたんじゃよ。」


マグネスは答える。


「遺物?いったいどんなものなんだ?」


俺はマグネスに問いかける。


「どんなものかはわからん。だが、お前たちは不思議に思ったことはないか?

なぜ素質が突然生まれたか。なぜいきなり呪文が使えるのか。

ワシの若いころはまだ素質なぞなかった。

そもそも呪文なんてものもなかったし、モンスターの生態系も違った。

世界はある時を境にガラリと変わってしまったのじゃ。」


確かにマグネスの言うこともわかる。

この世界に初めてきて、素質を見たとき俺は愕然とした。しかし、それがこの世界の常識と思い込んでいた。

マレットに関しても、素質を拒む変わり者という認識でしかなかったのだ。


「なるほど、いままで当たり前と思って疑問にすら思っていなかった。」


マレットは感心している。


「その謎を解くために遺跡探索と、そこにある遺物の解析じゃ。」


俺たちは慎重に遺跡を奥へと進んでいく。

マグネスは素質が消えたためか、いつもの力は出せず、マレットに至っても少し動きに違和感は感じているらしい。

マレットの素質について聞いてみたが、そこは教えてくれなかった。


「静かに!物音がする。」


少し先を歩いていたマレットが俺たちに指示を出す。

耳を澄ますとズリズリと何かが這うような音が聞こえる。

物陰に隠れて先を伺う、そこにはモゾモゾと蠢く人影が見えた。


「あれがこの遺跡のモンスターじゃ。」


マグネスがひそひそ声を出す。

一見その姿はモンスターというか人にしか見えなかったが、よく見ると顔がなかった。

服も着ておらず、見た目はマネキンのようだった。

肌の感じは木のような土のような材質で、手には棍棒や斧など武器を持っている。


「一体、一体の強さはたいしたことないが、それでも囲まれると面倒じゃ。あの頭や肩についている宝石を砕けば奴らは動かなくなるぞい。」


確かによく見ると頭や肩など様々な場所に薄く光る宝石がはめ込まれている。


「一体はワシが受け持つ、もう一体は頼んだぞ。」


そういってマグネスは人形に向かって駆けていく。

その足取りはとても百を超える老人のものとは思えない。


「ゲンさん俺たちも行くぞ!」


マレットに呼ばれ、俺も慌てて人形に立ち向かう。

マグネスはすでに人形の下に辿り着き、加速を生かした杖での突きを繰り出している。

一発目で人形の足を狙いバランスを崩すと、杖を両手で持ち替えてすぐさま残った片足も薙ぎ払う。

人形が倒れたところへ自分の体重も載せた突きで頭の宝石を打ち砕いた。


「爺さんやるなー」


俺は見事な軽業に感嘆していた。

そういっているうちに、マレットと残った一体の人形は武器を絡めて膠着状態となっていた。

俺は人形の背後に回り込むと、脇腹にある宝石を手持ちのハンマーで叩き砕いた。


「ゲンさんナイス!」

「いや、マレットが足止めしてくれたからだよ。」


俺は素直にマレットのフォローを褒める。


『レ■rあ@Δp 力Ψ上〼●』


俺の脳内に響く音声、雑音でよく聞き取れない。


「いま何か聞こえたか?」


俺はマレットに尋ねる。


「いや、なにも聞こえなかったが。」


マレットは不思議そうに答えた。


「さぁ、もたもたするな先にいくぞ!」


気になりながらも、マグネスに急かされ俺たちは先へ進むのだった。


「確かに力も素早さもたいしたことないな、これなら何とかなるかもな。」


その後も何体か人形を倒し奥へと進む、倒すごとにコツも掴めたのか楽に突破する。

幻聴はその後も度々頭に響いていたが、相変わらず内容はよくわからない。

そして、俺は味気ない人形の実力に半ば安心していた。


「なんか、明らかに怪しい扉だよな。」


俺たちは大きな扉の前に佇んでいた。


「かといってここまで一本道だから進むしかないだろ。」


マレットは応える。

俺は不信に思いながらも扉を押して中を覗き込んだ。

部屋は割と広く天井も高い、両端には等間隔で柱が並んでいる。

まるでボスがいるかのような部屋の作りだ。


三人が部屋に入ると扉は独りでに閉じて行った。


「なんだ!?っく開かない閉じ込められた!」


マレットは扉を叩きながら叫ぶ。

俺はありきたりな展開に嫌な汗をかいていた。


「こうなると進むしかないじゃろ。腹を括らんとな。」


マグネスは意を決して先へと進みだす。

慎重に三人が進むと、部屋の奥に大きな人形が鎮座していた。

今までのものと比べて三倍は大きな人形だ、頭、両肩、胸に宝石が輝き材質は石のように滑らかだ。

四本ある手はそれぞれ棍棒、剣、斧、ハンマーを持っている。


「これ絶対動くよな?」


俺は誰にともなく呟く。

そして、俺の声に応えるかの如く、人形は静かに立ち上がるのだった。


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