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転生家族〜異世界で主夫しています〜  作者: mikami_h
第二幕 友と友情の物語
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第三十一話 侵入者と主夫と

「カシロフ様、ありがとうございました。」


神官たちはカシロフに頭を下げている。


「いいんですよ、皆さんも大変かと思いますが、職務頑張って下さいね。」


カシロフは神官一人一人に声をかけて労っていく。

これが人心掌握術か、特に最前線で耐えていたムキムキの神官兵はしっかり休息するよう暇を与えていた。

なかなか、気の利く上司だ。

この一件は瞬く間に広がり、神殿で無謀な行為をする者もいなくなっていった。


「確かにカシロフみたいに、圧倒的な力でわからせてしまえば楽なんだが、俺にはそんな力ないもんな。」


俺は帰り道、再度頭を抱えるのだった。

コウタが一緒の時は安心だが、俺しかいないときはもしストーカーに立ち向かってこられると手におえない。

まともな武器も使えないので、そうなったら逃げるしかない。


「とりあえず帰って戸締りを強化しておくか。」


おれは足取り重く家へと帰るのだった。


「ん?なんかおかしいな?」


家の前まで来ると、掛けてあった鍵が開いていた。


「まさか泥棒か?うちに金目の物なんてないぞ。」


俺は開いている扉の隙間から中を伺う。

見える範囲には人影はない、だが耳を澄ますと家の中からかすかに物音は聞こえた。

俺は意を決して中へと足を踏み入れる。


男は大きな体で部屋のタンスの中を物色していた。


「んー、お宝ないなー、む!、こ、これはセナ様の匂い!んーいい香りだ。」


可愛らし服を見つけて匂いを嗅ぐ男。

ポケットには、ハブラシやコップなど多くの戦利品が詰められていた。


「おい、人の家で何してんだ?」


俺は男に声をかける。

びっくりした様子で男は振り返る。


「な、なんだ。ヒモ親父か。勇者かと思ったじゃないか。びっくりさせるなよ。」


男は冷や汗を拭いながら答える。


「何って、広報活動だよ。セナ様のことをもっと知って会報に載せないといけないんだ。」


男は悪びれた様子もなく淡々と答える。


「痛い目見たくなければ、このことは黙っておくんだな、おっさん。」


俺は男の顔をみてハッとする、


「どこかで見たと思ったら、昼間神殿にいた神官兵か。カシロフに暇をもらってこんなところで変態行為とはな。」


そう、彼は昼間神殿の騒動で盾を構えていた神官だったのだ。

男は俺の言葉に逆上し、


「口のきき方に気をつけろよ。俺がその気になれば、お前なんてあっという間にあの世行きなんだからな。」


男は腰に差していたバトルメイスをチラつかせて喚く。


「ふんっ、やれるものならやってみな!」


俺はオタマを手に挑発する。


「ははっ、そんなんでどうするんだ?無職のおっさんが鍛えぬいた神官兵に勝てると思っているのか?」


「いいからかかってこい、ここで出会ったのが息子のほうが良かったと分からせてやる。」


「とりあえず骨の二、三本は覚悟しとけや!」


男はメイスを振り上げ、俺の右肩向けて振り下ろす。


ガキッ、ドスッン!


メイスは俺の握るオタマに当たると、軌道をずらされてそのまま床を叩く。


「なに!?」


「おいおい、骨どころかオタマすら折れないのか?」


俺は男に向けて言う。


「ふざけやがって、」


次に男は頭を狙ってメイスを振り下ろす。


【家内安全】


ドスッ、

重い音とともにメイスは、頭に当たることなく俺の右手に遮られる。


「くっ、なんだこの固さは!」


男は異様な感触に驚いている。


「悪いな、ここだと俺は無敵なんだよ。」


俺は余裕の笑みを浮かべる。

俺の言霊は読んで字の如く、家内においては絶対の防御を誇る。

コウタですら、家では俺に傷一つ付けられない。


「運が悪かったな、さぁ大人しく観念しな。」


俺はゆっくりと男に近づく。


「来るな!この化け物が!!」


男は恐怖を覚え一目散に部屋を飛び出した。

家から出られるとヤバい、俺は急いで後を追いかけた。


ドン!

「いたっ、」


玄関で派手な音がすると、続いて男の声が響いた。


「なんだお前?人ん家で何してるんだ?」


そこには男を見下ろすコウタがいた。


「あぁぁぁ、」


まさに前門の虎後門の狼、男は観念したように項垂れた。


その後、男はコウタに顔の形が変わるほど殴られ神殿へと連行された。

カシロフに事の詳細を話すと、後はこちらで厳罰を与えるということで騒動は落ち着いていった。



「おい、ゲンちゃんこりゃなんだ?」


いつものギルド、いつものカウンターでカシロフは声を上げる。

手にはセナ様ファンクラブ会報紙が握られている。


「何って、普通の会報だろ?」


俺は不思議そうに尋ねる。


「いや、なんで娘の会報紙に親父の連載が載ってるんだよ!?しかも、題名(ゲンさんの主夫目線)ってなんだこれ?」


「俺が読者の為に家事の手ほどきを伝授したり、悩み相談に乗るコーナーだよ。」


俺は自信満々に応える。


「誰が読むんだそんなもん。」


カシロフは呆れたといった感じで会報を投げ捨てた。

俺は会報紙の制作に関わることにより、内容を精査する立場となった。

その為、セナのプライバシーに関することは掲載される前に止めることも可能になったのだった。


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コツコツコツコツ、ガサッ!


魔王城の廊下、ヒールの小気味よい音が鳴っているなか当事者は不意に立ち止まる。

視線を下に向けると足元にはチラシがある、女は、拾い上げて目を通した。


ファンクラブ会報紙『才色兼備』


題名がデカデカと載り、自らの事が細かく記載されている。

女は中身の一文を見つめる。


「バストサイズ、間違ってるわね。」


一言だけ言葉を発すると、会報紙を投げ捨て足早に去っていくのだった。




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