第三話 息子と願いと
鳥居を潜ると視界が開け、鬱蒼とした森へと続いていた。
「いやー、森林浴だねー。心が癒されるわ。」
自然と口から漏れる気楽な言葉。
「何言ってるんだよ親父、ここがどこかも分からずさっそく遭難しかけてるんだぞ。」
息子のコウタが、呆れた感じで返してくる。
「お兄ちゃん、お父さん、無事で良かった。」
娘のセナもどこも変化はなさそうだ。
「とりあえず、二人とも無事で良かった。」
俺は数分ぶりの家族の再会を喜んだ。
「さて、これからどうしたものか、」
ガサ、ガサッ
大きな音をたて、近くの茂みから勢いよく犬が飛び出してくる。
「なんだ!?犬か?」
コウタが近寄って見てみると犬にしてはやや鋭い牙、それに角?
「気をつけて、その角兎は気が立ってる!」
茂みの中から、中世の騎士らしからぬ格好の男性が出てきた。
「「いや、兎って」」
俺とコウタの声が被る。
そんな中、犬?(兎)は突進してくる。
「お兄ちゃん危ない!」
セナが、叫ぶもコウタは吹き飛ばされる。
「コウタ!!」
俺も叫びながらコウタに駆け寄る。
「この犬だか、兎だか分からんバケモンが!」
コウタは落ちてた木の棒を拾い立ち上がる。
「ボッコボコにしてやんよ!」
-----------【唯我独尊】------------
なんだ?コウタの体から赤い煙が吹き出す。
「おぉぉぉぉー」
コウタの叫び声と共に振るった木の棒は的確に犬?(兎)の頭を捉えそのまま首をはじく。
「グロッ!!」
首から血を吹き出しながら、犬?(兎)は地面に倒れた。
なんなんだこの世界は。
俺は息子の変化に驚きながらその場に立ち尽くした。