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転生家族〜異世界で主夫しています〜  作者: mikami_h
第二幕 友と友情の物語
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第二十五話 魔王と国王と

とある城内の一室、そこには数多くの異形の者が集結していた。

全ての者が威圧感を纏い、部屋の熱気もそれにつれて高まっていた。

何語ともとれぬ声も聞かれ、常に室内は罵倒と歓声に包まれていた。


そんな室内に一組の男女が姿を現す。

女は騒がしい室内を見渡し、


「静まりなさい!」


女は声を張り上げるも静まる様子はない。


【才色兼備】


「静まりなさい。」


先ほどよりも落ち着いたその声色は、部屋に集う者たちに響き渡り、得も言われぬ力を持った言葉により室内は静まり返るのだった。


「さぁ、魔王様どうぞ。」


魔王と言われた男は、室内に入り上座の席に腰掛ける。


「ありがとうマリー・クロス。」


マリーと呼ばれた先ほどの女性は、魔王の後ろで静かに立ち従えるのだった。

静まり返った室内に魔王の言葉が響く。


「皆の者、大変お待たせした。さぁ、物語の幕を開けよう。」


-----------------------------------------------------------------------


いつもの時間、いつものギルドに顔を出す。

相変わらず閑散とした店内のカウンターではマレットが暇そうに、していない。


「珍しい客だな。」


俺はマレットの向かいで座る男性に声をかける。


「オイラだって息抜きくらいはするさ。」


そこには国王スミスが座っていた。

国王といってもいつも場内だけで生活しているわけでもなく、国務の合間にこうして城下まで降りてくることも珍しくない。


「息抜きって、どうせ娘が遠征に行って寂しいんだろ?」


マレットはスミスの言葉に突っ込む。

スミスがまだ現役で戦場に立っていた頃、傭兵ながら隣で肩を並べていたのがマレットだ。

それから数十年の旧知の仲らしい。


「一人娘が遠征か、訓練か何かか?」


俺はスミスの隣に腰掛けながら訪ねる。


「違う違う、魔王の進行に対する牽制だよ。」


スミスは心配そうに言う。

俺は、そこまで心配なら行かせなけば良いのにと思いながら


「姫さんも行ったのか、うちの子供たちも荷物抱えて行ってしまったな。」


コウタとセナも遠征とか言って朝早くに出て行った、数日は戻らないそうで俺も一人寂しくマレットの下を訪れたのだ。


「でも、この世界に魔王なんていたんだな。やっぱり世界征服を企んでるのか。」


俺はスミスに話しかける。


「それが、魔王の目的はわかっておらんのだ。誕生してからしばらくは也を潜めておったのに最近になって活動を始めやがった。」


「それで、その動向を探るための遠征か。いきなり軍隊で駆けつけて返って刺激するんじゃないか?」


俺はスミスに疑問をぶつける。


「もちろん前もって使者を送ったりはしていたさ。結果はまともな返事をもらうことは出来んかった。それに魔王軍の力は強大じゃ、付近のモンスターにすら数人の騎士で制圧しているのに、それが大群となるとヤバさもわかるだろ。」


「もともとも個体差が大きいからそれなりの人数を集める必要があったのか。」


「うむ、仕方なしじゃ。それでも、魔王配下の参謀や四天王なぞ出てきたら、隊長や勇者クラスしかまともに相手も出来んしな。それを束ねる魔王なぞどれ程か想像も出来んわ。」


スミスは不安まで飲み込むようにグラスを煽る。


「巷で氷の狼犬などと言われて浮かれおって、もしも娘に何かあれば心配で心配で。」


姫様に狼犬とは物騒な、イメージとしては尻尾を振った子犬とかが可愛らしくていいんだが。

俺はそんな姫様を想像し顔に出てしまう。


「ゲンタ、お主、よからぬ想像をしているな。娘を汚すとは不届き千万!早速打ち首だ!」


妙に鋭いスミスが腰のハンマーに手を掛けて言う。

いや、それだと打ち首ってか、頭潰れるからね。


「スミスさん落ち着いて、心配なのはわかるけど今回は護衛の騎士もいるしコウタ君やセナちゃんも一緒だから。」


マレットが助け舟を出す。


「あのガキも一緒というのが更に心配だ、何か間違いがあったらゲンタよわかっておろうな?」


スミスが真顔で詰めてくる。

頼んだぞコウタ、俺の未来はお前にかかっている。


「しかし、その魔王の動き如何によってはまた戦が始まるな。すでに街の者もそれに備えて動き出しているし。」


マレットは心配そうに答える。


「戦か、身を守るすべくらいは持っておかないとな。」


俺も事の重大さを知り考え込む。


「ふむ、ならゲンタよワシが防具でも作ってやろうか?」


悩む俺にスミスが急に提案してきた。


「それは願ってもない事だが、スミスよ何が望みだ?」


スミスは国王であり、優秀な鍛冶職人だ。その腕前は近衛兵の装備すら手掛けるほどに、そのスミスがタダで装備を作ってくれるはずもない。

俺はスミスの提案を怪しんでいた。


「なんでも人を疑うのはよくない癖じゃぞ。」


「お陰様で、この前もここのマスターにしてやられたからな。」


俺はマレットを睨んで答える。マレットは申し訳なさそうに手を合わせている。


「それはそれは、大変じゃったのぉ。んじゃオイラも本題だが、実はお主にある材料を取ってきて欲しいんだよ。」


スミスは納得した感じで説明しだした。

曰く娘のために特注の武器を作りたいそうだ、しかし今のご時世、私用で人を使うには好ましくなく、それで俺に頼みたいとのこと。

求めている素材はミスリル、呪文伝導率がすこぶる良く強度も一般の鉄や金剛石にも勝ると言われている。

ちなみに、使用した余りで俺の防具を作ってくれるとのこと。

店で買えば、俺の稼ぎでは一生かかっても手に入らないだろう。


「うん、悪い提案じゃないな。」


俺はスミスの話しを聞いて呟く。


「だろ?ミスリルのある鉱山も我が王国所有の地だ、そうそう危険もないからな。」


スミスが上機嫌んで押してくる。


「どうせ子供たちが帰って来るまでは自由だし、いっちょ小遣い稼ぎに行くか。」


小遣いというには巨大すぎる額だが、そうして俺はまた安請け合いをするのだった。


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