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転生家族〜異世界で主夫しています〜  作者: mikami_h
第一幕 家族の絆の物語
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第十一話 無鉄砲と依頼と

「てやっ!はっっ!」


コウタは、威勢のよい掛け声とともに、カエルのような二足歩行のモンスターをなぎ倒していく。

俺も試しにナイフで交戦してみたが、皮膚は意外と固く弾力もあり刃が通らない。

しかも毒もあるらしく、うかつに近寄れない。


「コウタいいぞ、がんばれー!ぐはっ!!」


というわけで俺は、セナに解毒を施されながら応援に専念することにした。


「お父さん、まだ解毒終わってないんだからじっとしてて。」


「すいません。」


若干息苦しくなりながら、その場に倒れる俺。


「ふぅ、こんなとこかな。割と歯ごたえのない奴だった。」


コウタがカエルの討伐を終えて一息ついた。


「親父は大丈夫か?」


「えぇ、解毒も終わったわ。弱い毒だから解毒の呪文で一発よ。」


「ふぅ、みんな終わったからって気を抜くんじゃないぞ。いつまたモンスターが来るかわからないからな。」


俺は緩んだみんなの気持ちを引き締める。


「うん、だからお父さんはむやみに敵に突っ込まないでね。」


セナの顔は笑っていたが目がマジだった。


「はい、気を付けます。」


「まったく、そんなんだからおふくろに逃げられるんだよ。」


コウタが痛いところをついてきた。


この子たちを男手一つで育てきたが、母親は数年前に出て行った。

コウタも小さく、セナはまだ物心つく前だ。

思い出すと酒に溺れたくなるが、彼女との子をしっかり育てなくては。


「二人とも逞しく育って、母さんも草葉の陰で喜んでるよ。」


「もう草木もない海沿いだけどな。」


コウタがせっかくの気分をぶち壊してくる。

街道沿いに歩いてきて、何度かモンスターの襲撃にあったがコウタが軽く撃退していた。

本人は物足りないと嘆いていたが、俺にとっては命が幾つあっても足りない状況だ。

あぁ家が恋しい。俺の言霊は家でこそ真価を発揮するのだ。


「あ、見えてきたわ、あれがバロックじゃない?」


セナの言葉に地図を見比べる。うん、場所的に間違いなさそうだ。やっと屋根のある部屋で安心して寝られる。



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バロックの街は活気に満ち溢れ、潮の香りと屋台からの香ばしい焼き物の匂いに満ち溢れていた。

店頭には見たこともない魚が並び、中には食べるのを戸惑うような深海魚のような見た目の魚もあった。


「やっと着いたな、まずは宿でも探すか。手ごろで安いところがあればいいんだが。」


この国では、治安は恐ろしいほどよい。

盗難や強盗は滅多に発生しない。ファンタジーには付き物の山賊・海賊の類もいないそうだ。

すべては素質が見通せるお陰である。

まぁ、山賊の素質なんてものがあれば別だが。


俺たちは海沿いの景色の良い宿に決め、荷物を置いたら夕食まで自由行動とした。

俺はとりあえず早々に仕事を片付けるため届け先の冒険者ギルドまで足を運んだ。


賑やかな通りを一歩進んだ裏通りには淀んだ空気とジメジメした湿気が溜まっていた。

薄暗い路地を歩くと黒ずんだ看板に[冒険者ギルド バロック支部]の表記を見つけた。


「ごめんくださーい」


恐る恐る声をかけて扉をくぐるも、室内は誰もいなく辛うじてカウンターの奥から光が差し込んでいた。


「ん?誰かいるのかい?」


人の気配を察知してカウンターの奥から逞しい腕をしたスキンヘッドの男が顔をだした。


「王都のマレットから頼まれた荷物を持って来たんですが。」


俺は迫力にたじろぎながらも言葉を発する。


「あぁ、そいつはわざわざご苦労さん。」


男は太い腕を差し出して荷物を受けとり、受け取りの証に紙にサインをして寄越した。


「はい、ありがとうございます。それではこれで」


俺はそそくさとその場を去ろうとする。しかしそんな俺の背に男の野太い声が突き刺さる。


「ちょっと待ちな。」


「はい!何かありましたか?」


恐る恐る振り向く俺、


「マレットの使いってことは、あんたも冒険者だろ。」


「えぇ、一応は」


俺は相手の意図を探り探り答える。


「まぁそうビクビクするな、俺はジーク。ここの支部長なんて名乗ってはいるが本業は漁師だ。マレットの頼みでギルドを開いているが、実際動けるギルド員なんてほぼいなく、みんな本業と掛け持ちだ。」


ジークはやれやれといった感じで話し出した。

確かにこの国では自分の素質にあった仕事が一番効率よく稼げる、わざわざ休みをつぶしてギルドの為に働く者は少ないとのこと。


「なるほど、それで俺に仕事を頼みたいと。」


「そういうわけだ、最近物騒な街道を通ってきたなら、そこそこ腕が立つんだろ。なら簡単な仕事さ」


ジークは俺を過大評価している。しかし土産物を買うにも財布が寂しかった俺には好都合だった。


「で、いったいどんな依頼なんだ。」


「実は、最近この街で度々行方不明者が出ていてな、その家族から探してほしいという依頼がいくつか来ているんだよ。」


なんだか物騒な話だな。


「家出ととかじゃないのか。」


俺は純粋に疑問を口に出す。


「その可能性もあるが、いなくなったのは毎回、兄弟・姉妹揃ってらしい」


「一人ならまだしも揃っていなくなるなんて、たしかにおかしいな。しかし、人探しなんて時間のかかるとをやる余裕はないんだが。」


俺も解決するまでずっとこの街に足止めというわけにはいかない。


「もちろん、滞在期間中だけで大丈夫だ。報酬も前払いと、成功時には達成報酬を別でつけるから」


さすがマレットのお友達だな。人をその気にされるのが上手い。


「わかった、その内容で依頼を受けよう」


俺は破格の条件に惹かれ依頼を受けるのだった。



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