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グレイ・スカイ ー解放への闘諍ー  作者: 嶺司
終わらせるためには
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最終話 桜

ローレニアはバルセルの北半分を占領し尚も進軍を続けているが直接的な僕らの戦争「バルセル・グレイニア戦争」は終結、久しぶりの休暇をもらい僕達はアルサーレに帰ってきていた。


ここには久しぶりに平和な時間が訪れている。


初めて見る皆の私服、ツルギさんとかは僕と同じでジーパンにTシャツでラフな感じだったけど、チグサは身体に密着するニットシャツを着ていて大きい胸が強調され、ナナはホットパンツにニーハイとなかなかに目のやり場に困るし、ルリさんはロングスカートのワンピースと可愛らしい感じだった。


ミサキさんとケイさんさんは七分丈のパンツにTシャツと活発的な印象だ。


「家は無事かな?」

「どうかなー?」

「家って誰のぉ?」

「・・・・・・アサギさん」

「あー・・・・・・」

「無事でも散らかってるだろうなぁ」


ツルギさん達を含めた七人でアサギさん兼僕の家に帰っていた。


無事だとしてもそのままって訳はないだろう、次の角を曲がれば家はあるはず、怖かったけど思い切って角を曲がると。


「「建ってる!」」


周囲の建物は崩れたりしていたが奇跡的に僕とチグサの家の入るアパートは無事だった。

外見は大丈夫そうだが中はどうだろうか。

しばらく僕たちの他に誰も来ていないのだろう、埃っぽい階段を上がり部屋の前に来ると玄関の扉が半分開いていた。


怖すぎる。


「ツルギさん・・・・・・」

「ん、なに?へ?」


ガシッと彼の手を握る、空戦に比べたらこんなの屁でもないと自分に言い聞かせるが、それとこれは別だ。

恐る恐るドアを開き中に入る。


「いてて!怖がりすぎだろ、それでもパイロットかって!」


あまりの幽霊的恐怖にツルギさんの手を握るのに力が入ってしまい振りほどかれる。

中に入ると誰もいなかったが荒れ放題だった、戦時の混乱という仕方の無い事だろうけど、ラジオや金目のものはなくなっていて、もちろん電気もきていないし、冷蔵庫も食料庫も空っぽ。


アサギさんの部屋の衣服も、僕の部屋のシンの為の衣服もほとんど無くなっていた。

仕方のない事だ、自分に言い聞かせる。


「レイ・・・・・・」


震える僕の肩にツルギさんが手を置くと。


我慢できずに僕は彼の胸の中で大声で泣いた、そんな僕の背中を彼はゆっくりとさすってくれる。

何かアサギさんを感じられるものがあればと思ったけど、何も残っていない。


それだけが悔しかった。


「またみんなでやり直そ?」


チグサの言葉が胸に響いた。


●


それからみんなで掃除をした、チグサの部屋も同じような状況で何も無くて笑ってしまったらしい。

そんな彼女も「気にしないで」と言ってアサギさんの家を黙々と掃除する。


電気が復旧すれば、またここでちゃんと生活できるだろう。


割れた窓の代わりに嵌めていたベニヤ板を外し、換気を良くして埃っぽい部屋を余った布で叩きまくる。


「ちょっとレイくん、考えて掃除してよ!」


ミサキさんに怒られるがお構い無し、一心不乱に埃を家の中から追い出した。

道具も備え付けの物以外ほとんど無かったし、掃除そのものはすぐに終わる。しかし、気がつけば夕方だ。


「基地に行くか」

「はい」


トモパーレから持ってきた手土産をもって日が暮れない内にアルサーレ基地に向かうことにした。

アーノル大佐に挨拶が終わってなかったから。

見慣れた風景ながらも以前とは殺伐としてしまった道を歩き、基地について司令室を尋ねる。


コンコン。


いいわよ、と中から大佐の声が聞こえる。


「レイ・アスール大尉、他六名入ります!」


勢いよくドアを開けるとアーノル大佐が笑顔で僕らを迎えてくれた、疲れが溜まっているのだろうか、ほうれい線が濃くなった気もするが今だ歳の割には綺麗な装いだ。


「おかえりなさい、よく生きて帰ってくれたわ」


それから積もる話をいろいろした、昇任を推薦してくれたことにお礼を言ったり、最後の作戦で何があったかを話したり、そしてお土産にとトモパーレで買ったお酒を机に置くと。


「年寄りは放っておいてあなた達で飲みなさい、待機室を使っていいわ、あなた達の部屋同然だものね」


そう言って受け取ってくれなかった。


僕達はお言葉に甘えて懐かしの待機室に向かう、入口には懐かしい当直割りの名札がそのまま残っている。

中に入っても僕達がトモパーレに行った時の配置のままで、当時の記憶が瞬時に思い出される。


「疲れたなぁー」


ツルギさんがいつも座っていたソファーにドサッと座り、ミサキさんとケイさんがなんの躊躇もなくその両隣に座る。


「今日は全部忘れて休みましょう」


僕も椅子に座って持ってきたお酒とおつまみを広げ、ナナとチグサも両側の椅子に座るとルリさんはいつものように僕の膝上に座る。もう一つ椅子余ってんだけどなー、まあいいか。


「「「「かんぱーい」」」」


それぞれか好きなお酒を持ってグビっと流し込む。

久しぶりのお酒だ、チグサとか悪酔いしないかな?

しばらく考え込んでいるのか、みんな無言で飲んでいると。


「レイきゅ〜ん」


おい、始まったばっかだよ?お酒に強いはずの彼女は既に顔が真っ赤、片手に瓶ごと持っているお酒の銘柄を確認すると。


「スピリタス!!」


え、それを?ラッパ飲み?死ぬ気?


へへぇぇ、とナナ顔負けのヤバイ顔をしてボクの腕にしがみついてくる、なんか怖い!

一方ツルギさんの方はと言うと、ケイさんは絡み上戸だったようで。


「だいたい剣くんはですねぇ、後先考えずに物事を進めすぎなんですよ。水咲さんも水咲さんで何で止めないんですか」


いい感じに顔を赤くしジトっとした目を顰め、ツルギさんとミサキさんに説教していた、あの人にお酒を与えてはダメなことはわかった。チラッとツルギさんは僕に助けを求めるように見てくるけど、どこ見てるんですか!と叩かれている、可哀想。しかし、僕もそれどころじゃない。


チグサに触発されてか、ナナが飲め飲めとウィスキーの入った瓶を僕の口に押し付けてくる。

ストレートは勘弁してくれ!と抵抗を試みるも。


「私のお酒が飲めないのぉぉぉん!じゃあぁーー」


どこの上司だよ、そうツッこんでいると僕に押し付けていた瓶を戻してぐびぐびとそれを口に含むナナ、ホッ諦めてくれたか、なんて思っていると。


「もっ!っ!!」

「っ!!」


ガシッと力ずくに口元を掴まれそのままキス、えぇっ!目を見開き困惑していると無理やり口を開けられそのまま口移しのような感じでナナの口に含まれていたお酒が僕の口に入ってくる。ルリさんもドン引きだ。


無理やりすぎるだろ!!溺れる!!

わけもわからず咳き込み、飲みきれなかったお酒を口から垂らしていると。


「なんちゅー、飲まし方してるのよ!」

「へへぇ、どう?もっかいやるぅぅ?」


ポコポコとナナを叩くチグサに、酒のせいかいやらしい目付きをしているナナ、これはみんな歯止めが効かなくなっている、というか理性がどっか行っている!


無理!怖い!殺される!


膝上のルリさんをどかしてツルギさんの元へと逃げると。

首根っこをガシッと掴まれ勢いのまま引き戻されるとヘッドロックされた。だれ!?


「全部貴方のせいですよ、責任とってください」


えっ、ケイさん!?


「いてててててててっ!」


彼女も酔っているせいか力のセーブが効かなくなり、ボクの脳天をものすごい力でグリグリしてくる。

かち割れる!!


うううう、ともがいているとナナが飛びついて来て2人とも床に倒れる。


「ちょ、ナナ痛いって、もっ!!」


完全にイッちゃってるナナの目、殺される!と思った時には既に遅く、僕に馬乗りになった彼女はグビーーっとウイスキーを口に含んだと思ったらさっきと同じように口移しをしてくる、飲み込まないと口を離してくれないし無理やり流し込んでくる、それにもがくことも出来ない。


もう、無理・・・・・・。


そこで記憶は無くなっていた。


●


気がつくと僕は当直室のベッドで寝ていて、両隣には下着姿のチグサとナナ。


えっ!?事後!?


一瞬で酔いが覚めるほどむちゃくちゃ焦ったが、僕はちゃんと服を着ていた。


焦るー、心臓飛び出るかと思った。


酔ってやっちゃったとか話にならないからね!

やれやれと覚めた目で辺りを見渡すとルリさんの姿が無いし、空きベッドにツルギさん達の姿もない。


とりあえず起き上がって待機室の様子を見に行くと、ツルギさん達はソファーに座り肩を合わせてスヤスヤと眠っていて、ルリさんは力尽きたのか机に顔を伏せて眠っていた。


面倒だからツルギさんは放っておいて、ルリさんはベッドに連れて行ってあげよう。


「ルリさん」


と声をかけるとムクッと伏せていた身体を上げる、ビビった、起きてたのかな?


「ベッドで寝ましょう」


そう言うと目を瞑ったまま僕の方に両手を広げる幼女(年上)仕方ないなぁ、と僕は彼女を抱っこして当直室に戻った。



●■●■



ーーそれから2年後、4月。


僕は予備役ではあるものの空軍を除隊、チグサとルリさんと一緒に復興進むアルサーレで花屋さんを経営していた。ナナの方は僕らの花屋さんの隣で美容室を経営している、もともとそれになるのが夢だったとか。


どういう経緯でパイロットになったのかは未知数だが聞くのはやめておこう、何かしらの事情があったのだろう。


「みんなお昼にしようよ」

「そうだね」

「・・・・・・うん」

「はーい」


そして僕達は終戦後、アルサーレに出来た記念公園に桜を植えて管理をする仕事もしていた。


まだ桜の木は植えたばかりでそんなに大きくは無いものの三十本近く植えただろうか、風に吹かれピンク色の花びらが散りそれはもう絶景だった。


僕達はそんな景色を背に、公園にあるテーブルとセットになった対面四人掛けのベンチに座り、チグサとルリさんの手作りのサンドウィッチボックスを広げる。

僕の右隣に座るチグサの左手薬指には指輪が光る。

そして、僕の左手にも。


「はぁあー、チグサにレイを取られるなんてなぁ」

「・・・・・・不覚」


対面に座るナナとルリさん、面白くなさそうに右手薬指に光る僕があげたペアリングを二人して見つめている。


「もう何回目だよ、一緒に住んでるんだからいいじゃん」


いいのかどうかは知らないが、このやり取りは暇さえあればしているものだった。


ちょうど1年前、出来たてのこの公園で僕はチグサにプロポーズ、めでたく結婚したわけなのだけど、未だにリフォームしたアサギさんの家で四人で生活していた。ここまで来るともはや家族同然で、チグサは良いと言っているけど世間的にどうなんだろうか?一夫多妻?いいのかな?それで。


でも僕達は喧嘩もせずに毎日楽しく生活していた、僕の部屋にチグサと僕が、元アサギさんの部屋にルリさんとナナが基本的に生活していて節度はある方だろう、食事とかは一緒にリビングで食べている。


「私だってレイとたまには一緒に寝たぃぃぃぃん」

「・・・・・・私も」


テーブルに肘をつき前のめりになって目をウルウルさせて二人で訴えてくる。ルリさんはナナと一緒にいるせいか喋り方はそのままだったけど、やる事なす事がそっくりになっていて非常に扱い辛くなっていた。可愛いんだけどさ。


「えぇ・・・・・・」


と困惑するも、妻たるチグサは苦笑いするだけで別に止めはしない。


「わかったよ、今度な」

「今度っていついついついついついついついつ!!」


うるさいなぁ、もう27なんだから落ち着け!


「もう、今日でいいから!その代わり四人でな!」


若干、眉を顰めて不貞腐れているようだったけどルリさんとナナはそれを承認、いいの?それで。まあ、妻を差し置いて君たちと寝る訳にもいかないからね。


ゴーーーー・・・・・・。


空に飛行機だろうか、ジェット機のエンジン音が地鳴りのように響き渡る。

ふと四人で空を見上げると真上に小さな機影が三つ見えた。


「ツルギさんだ」


彼らはまだこの広い空のどこかでまだ飛んでいる、戦争が終わりしばらくして彼もグレイニア空軍を除隊、どこで何をしてるのか分からずもう二年近く会っていなかったが、こうしてたまにアルサーレの空に来ていた。


ナナは飛び上がって見えもしないだろうに空に向かって大きく手を振り、ルリさんもピョンピョンと跳ねている。


すると空の彼らはいつもと違う動きをして旋回し高度を下げている、この進路は・・・・・・。


「着陸する!」


気がつけば僕は駆け出していた。


その後を慌てて三人が追いかけて来るのが分かる。

基地の中に入るのに少し手こずったが、アーノル大佐、いや、少将はまだこの基地司令をしていて警備員経由で説明して貰うと「昔のよしみよ」と快く入れてくれた。


綺麗になったアルサーレ飛行場、建物は配置が少し変わっていて迷子になりかけたが、感覚で何とか駐機場に出ることが出来た。


目の前に並ぶのは宙の向こうどこまでも深く青い深青色のF-35、垂直尾翼には黄色の一本線、間違いなくツルギさん達だ。


息を切らせてそこに駆け寄る。


機体の機首にはグレイニアの放射二本線の国籍マークから変わり、黄色の二等辺三角形の国籍マークがある。


覗き込むと機体の向こう側にツルギさんとミサキさん、ケイさんが居た。


「ツルギさん!」


僕の声に振り向く彼、かっこいい革製の眼帯をつけていて僕だと分かるとすぐに頬を緩ます。

僕は嬉しさのあまり彼に飛びついた。


「おっと、久しぶり元気だったか?」

「はい、おかげさまで」


僕は彼にしがみつき何故か胸の中で泣いている、会えて嬉しいのもあったけど、なんでだろう。その後ろでミサキさんとケイさんも微笑んでくれている。


「桜、綺麗だな、空からよく見える。アサギさん達にも見えてると思うよ」


彼は優しく僕の頭を撫でる。

僕は堪えきれていない涙を必死に堪えて彼の顔を見ると、もう23歳の癖に僕の兄代わりのツルギさんは可愛らしくニッと笑い。


「おつかれさん、自由に生きてるか?」


たまたまなのか分からないが彼はアサギさんと同じ口調でそう言って、また一際ギュッと僕を抱きしめてくれた。


「はい!」


僕は笑顔で答える。

みんなのおかげで、自由に生きてます。







ブルー・スカイ シリーズ 第2作

グレイ・スカイ ー解放への闘諍ー


〜完〜

あとがき


おかげさまで最終話を迎えることが出来ました。

気がつけば初回投稿から1年、84話も書いてしまい、今考えるとよくブルー・スカイが31話で終わったなと感心しているところであります。


さて、今回も主人公の直属の上司その同期と結構重要な人が死んだりしましたが、かなり抑えてので悲しむ人は最小限で済んだのではないかな?

まあ、それでも結構死んでるんで良くはないと思いますが。


しかし、これは戦争、戦っている以上誰かは死ぬので受け入れてもらうしかありません。

それがモブキャラでも重要キャラでも同じです。


今回も結構無理やりな感じて終わったかもしれないですがそれは悪しからずです!!!!!

(戦争の終わり方が分からない)


そしてそして!

なななななんと!

次回作は外伝!!!

啓ちゃん出ません!ごめんなさい!

あ、ちょっと出るかもしれません。


でも楽しんで頂ける作品だとは思いたいです。

ちょっとブルー・スカイ、グレイ・スカイとは趣向は変わりますが。


更新頻度はなるべく変えずに1話あたりを3000文字に減らします、正直調子がいい時はいいけど5000文字ってしんどい・・・・・・。

そんなに長くは続けるつもりは無いので箸休め程度に気楽に見ていただけたらと思います。


それでは次回作でお会いしましょう!


追記

続編の公開を開始しました!

アザー・スカイー死神と戦うエースー

https://ncode.syosetu.com/n0719gt/


外伝となりますが頑張って書きます、よろしくお願いします!





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― 新着の感想 ―
[一言] 一年お疲れ様でした! 最後の物語のスピードアップ具合には驚かされましたが(笑) 最後に出てきた兄上たちやベイルアウトした白崎も気になりますが無事完結して良かったです。 正妻を決めない某王子…
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