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グレイ・スカイ ー解放への闘諍ー  作者: 嶺司
終わらせるためには
73/84

第73話 元カレ

闇夜にレルトンからは変わらず赤く燃える炎が上がり、上空に上がる黒煙は炎を反射して赤く揺らめいている。


《こちらB-1、市庁舎は概ね制圧した。各階の確認を行う》


街の真ん中にある六階建ての四角い形をした庁舎はほぼ無血で簡単に制圧でき。


《こちらC-1、警察署は二階まで制圧、激しい抵抗を受けている》

《C-4が屋上から回り込む》


警察署はさすがに武装していてやや手こずっている。しかし、そこは特殊部隊、引っ掛けのついた発射索を使って警察署の屋上に登り挟み撃ちにする手筈だ。

レルトン陸軍基地の方も。


ドドーーン、ドドーーン!・・・・・・。


と僕達が投下した爆弾が着弾し爆煙か巻き上がる。


《ブルー隊、対地ミサイルを使い切った、制空及び警戒のため上空へ離脱する》


F-35はツルギさんの最後の対地ミサイルを撃ち切ると低空からフワッと機首を上げて上昇し、真っ暗な空へ消えていく。


《敵基地に支援射撃を要請する》

《ブロッサム1が対応しますっ!》


陸軍の支援要請にチグサが反応し、一度上昇ループしレーザーでポイントされている建物にお得意のガンポッドの30ミリ弾をお見舞いする。

壁が剥がれて崩壊する建物、いつ見てもあのガンポッドの威力は半端ない。


《あーっと、敵機探知!010度方向、数は・・・・・・6!》


ナナが敵機を探知した僕とチグサとルリさんはまだ対地支援のため手が離せない、彼女とブルー隊で対応してもらう。


《ブルー隊が迎撃する。エレイン、行くか?》

《行くぅっ!》

《ブルー1了解、エレインはブルー3の後ろへつけ》

《エレイン、りょーかい!》


別々に飛んで警戒していたブルー隊とエレインは上空で合流、フィンガーフォーの隊形を組んで敵機を迎え撃つ。これまで特に出番がなかったナナ、やる気は満々だろう。


《ブルー1、無理しないで下さいよ》

《いくら頼まれても無理はする、生きるためにな》


そうだった、彼に無理をするなと言っても聞かないんだ、じゃーこれからどうやって心配したらいいんだろうか、かける言葉に困る。


《警察署は制圧した、これより各チーム予定通り指定された者は集合地点へ集結、山岳部隊と合流し基地を制圧する》


特殊部隊の方はあっという間に街の要所を制圧した模様、まさに電光石火でこのままだと上手くいきそうだ、既に僕達の爆撃で探照灯照射や、照明弾も無くなっている。地上はグレイニア特殊部隊の独壇場だった。


※


いくらSu-27が制空戦闘機とはいえ俺たちと行動を共にするのは間違いだったかもしれない。


対地ミサイルを全て撃ち切り、ビーストモードから通常モードになった俺たちはそりゃもうレーダーに映らない訳で、夜戦ということもありどうしてもレーダーに映りやすいナナリスに攻撃が集中してしまう。


《くそっ、エレイン、一旦離脱しろ!》

《私だって戦闘機のパイロットなのぉぉぉぉ!》


こんな時に意地を見せなくてもいいのに彼女は果敢に戦い、迫り来るF-14の追撃を可憐に躱しドッグファイトに持ち込もうとするが、数が数だ、入れ代わり立ち代わり目標が入れ替わり彼女も翻弄されている。


《各機自由戦闘、数を減らせ!》

《ブルー2、了解》

《ブルー3、了解です》


こっちは赤外線カメラで敵機は丸見えだ、俺の後ろについていた水咲さん達を散開させとりあえず数を減らすことに専念する。4対6ではさすがに分が悪い。


そして俺の命令で2機はブワッと散開、赤外線ホーミングミサイルを使い敵機を撃ち落とそうとする。


〈ナナリス、本当に帰ってこないのか?〉


敵の混線。この声は、ラナーだ。


《嫌だ!レイのお嫁さんになるの!》


あのバカ、フラグを立てやがった!

俺はナナリスの後ろに迫るトムキャットを確認し距離を詰めるが、かなりのスピードでナナリスは回避行動を取っていてなかなか追いつけず捕捉できないし、Gがかかって目が痛い。

頼むから最悪なことは起こるなよ・・・・・・。


〈そうか・・・・・・、今まで楽しかったよ・・・・・・〉


くっそマズい!

ラナーが言い終わると同時に俺は敵機を捕捉、ミサイルを二発発射し。


《フレア!!》


そう叫んだ頃にはナナリスの機体にトムキャットが放った二発のミサイルが迫っていた。

ナナリスはフレアを発射し一発躱すも残り一発が至近距離で爆発、エンジンから煙を吐いているように見える。俺が撃ったミサイルはまんまと躱され敵機は優雅に飛んでいる。やっぱり遠すぎたか・・・・・・。


《エレイン、大丈夫か!?》

《ナナっ!》


レイも俺の声に気がついてナナリスの事を心配する。


《直撃はしてないよ、まだ飛べる!》


とりあえずは一安心、がだどんな不具合が急に起こるか分からない、大事をとって帰投させたいが。


《んもぉ!なんで私にばっかり来るわけ!?》


まだ、ナナリスだけが追われている。

俺たちも援護はしているがこの乱戦、低速に強いF-14だフラフラと逃げ回られなかなか撃墜できずにいる。


《こちらグレイ、エレインを援護する。ブロッサム1とグラムは対地支援を続行》


レイのやつ怒ってるぞ、抑揚の無い声で各機に指示を出すと低空からものすごい勢いでイーグルが上昇してきた。F-15もレーダーに写りやすい、あいつ囮になる気か?

と、思っているそばからレイの後ろに敵機がピッタリ張り付き、それに気がついたあいつは回避行動をとり始める。


《啓っ、さっさと落とせ!》

《今やってます!》


俺が言った直後に啓はミサイルを二発放ち一発はそいつに命中、違う敵機に向った二発目はフレアによって躱される。


《剣くんも働いてください!》


俺だってやれるだけのことはやってる、どうにかして敵の後ろにつきたいが夜戦で乱戦だしナナリスは適当に逃げ回ってる、いくら赤外線カメラがあるとはいえなかなかそうはいかない。


バーンッ!


俺たちが手こずっているのに、レイが見事なコブラで敵機の後ろにつき機銃を浴びせそれを落としていた。


※


ツルギさん達の調子が悪い、そりゃそうだ、彼らの戦法はほぼほぼツルギさんを主とした囮で成り立っている。それがわけの分かっていないナナにその役目ができるはずもなく上手く連携が取れずに手こずっている感じに思えた、速度では負けるしね、慣れない夜戦ということもあるのだろうけど、一撃離脱とかされたら対処出来ないだろう。


《ブルー隊は一度離脱、体勢を立直して下さい》

《・・・・・・あぁ、わかった。その間に被弾するなよ!》

《ええ》


渋々、というかツルギさんさんもその事が分かっていた様子で、悔しそうにしていたが僕の進言を聞き入れてくれ彼らは一度乱戦の場を離脱する。

闇夜に紛れてしまえば完全なるステルス機の前に敵機は為す術もないだろう。


〈下手くそイーグル・・・・・・、お前さえいなければ・・・・・・〉


んー、ラナーさんにそんな嫌われる覚えはないんだけど・・・・・・。むしろそっちが始めた戦争、僕の方が嫌いだ。

ナナの後ろについていたトムキャットは旋回し僕の後ろにつこうとするがそうはいかない、旋回回避を試みるが左右に交差しシザース状態となる。


〈お前のせいで俺の人生おしまいなんだよ!〉

《僕に押し付けないでくださいっ!》


全く言われようのない責任、僕が貴方に何かしたっての?


〈ナナリスを返しやがれ!〉


別に奪った訳じゃないし!ナナの方から来たんだし!そんな文句しか出てこない。しかし、それを口に出して言うと全方位に喧嘩を売りそうなので言わないが、これはさすがに鈍感な僕でもわかる。


《あー、エレイン?》

《昔いろいろあったのぉ!空戦に専念してぇ!》


いろいろねぇ、まあ今は聞くのはやめておこう。シザースしてるし僕にもそんなに余裕が無い。

すると前方に味方の反応が、チグサだ。


《グレイ、ブレイク!》

《ふっ!》


対地支援が終わったのであろうチグサに言われるがまま、シザースを中断し旋回離脱すると、彼女はラナーに照準を合わせガンポッドをぶっ放しながら僕とすれ違う。一方のラナーもそう簡単には被弾しまいと上昇離脱、そして運の悪いことに。


《あ、おい!エレイン離脱しろ!》

《エレイン!》


上昇した先にナナが飛んでいた。


〈じゃあな〉

《にぃひっ!》


フレアを発射し回避行動を必死にとるナナ目掛けてラナーはミサイルを全弾発射、計四発ものミサイルが彼女を襲う、カバーに入りたいが僕では間に合わない。


《ベイルアウトして!》


被弾し爆死するよりそっちの方がいい、そう叫ぶと。


《まったく、考えて飛べよ》


一旦離脱していたツルギさんがどこからともなく現れ、ナナとミサイルの間に入るとミサイルを全弾引き連れて離脱、フレアとコークスクリューを屈指して回避して見せた。

え、すごっ・・・・・・。


《さすが王子さまっ!》

《俺を褒める前に自分が反省しろ!》

《・・・・・・はーい》


ツルギさんに珍しく、いやいつも怒られているがキツめに怒られてシュンとしているナナ、反省もいいけどそれは帰ってからだ。

しかし。


バァーーンッ!


《わっ!!》


エレインの機体右エンジンから炎と煙が出ていた。


〈逃がすかよ〉


ミサイルを撃ち尽してもなお追撃を止まないラナー。


《右エンジン被弾っ》

《カバーする!》


今にも泣きそうなナナの声、僕はツルギさんと共にラナーを追撃する。


《エレイン、高度を下げて帰投しろ。ブルー2はエレインのエスコート》

《ブルー2了解》

《了解ぃぃぃ!》


僕達に追われることでラナーはナナから離れる、その間に彼女には逃げてもらわないと。


《グラム、対地支援終了、空戦に参加する》


待ってましたルリさん!これで数的有利だ。

彼女は低空からものすごいスピードで上昇してきたと思うと暗闇に漆黒の機体は溶け込み一瞬で見失ってしまい、飛び抜けて行ったであろう空では敵機が爆発して落ちていく。


いくら一撃離脱が得意だといっても、あれは速すぎだと思う。

一方のケイさんもステルス性能を遺憾無く発揮し、戦法を変えて忍者の如く敵機を静かに落としていく。つよい!


〈くそっ〉


そうラナーは舌打ち混じりに言うとそれ以降混線はせず、敵機は残り2機となったところで反転、速度を上げて離脱していった。


《ブルー1から、深追い無用。地上部隊状況は?》

《順調だ、帰投してもらっても構わん》

《グレイ了解です、補給のため帰投します。各機RTB、エレインを護衛しつつ帰投せよ》


各機了解、ブルー隊は僕達の後方を警戒しつつ飛び、僕達グレイ隊は被弾したエレインを真ん中に、その前方に僕、左にブロッサム1、右にグラムと隊形をとる。


《レイ》

《ん?》

《ごめんなさい・・・・・・》

《謝らなくていいよ、機体は消耗品、生きて帰れば大勝利さ》


僕が第二次紛争の際に被弾した時に、チグサが言ってくれたことをそのままナナに言ってあげる。生きていればなんとかなる、あの時僕は大怪我してたし今回ナナは被弾しただけ、僕より全然マシだ。


《ありがとう・・・・・・》

《うん、さあ帰るまでが作戦だよ、気を抜かないでね》

《うん!》


そして僕達は無事にトモパーレ飛行場へと帰投した。


●


「あーーん、怖かったぁぁぁぁん!」

「どっ!」


基地に帰ると一目散にナナが嘘泣き?をしながら抱きついてきた。抱きつくと言うよりも飛びつく、勢いそのままに来るもんだから吹っ飛びそうになってしまう、そんなにガタイはいいほうでは無い、むしろ細いんだから気を使って欲しい。(2回目)

まあでも、さすがに今日のは怖かったかな。


「ほんとよく無事だったよ」


よしよしと頭を撫でてやると、へへぇと無い尻尾をブンブンと振って喜んでいる。


「腕はいいんだからもうちょっと考えて飛べよな」

「・・・・・・はーい」


後ろからやってきたツルギさんに叱られブンブン振っていた尻尾をシュンと垂らす。

そんでだ。


「んで、ラナーとの関係は?」

「え、聞いちゃうの?」


スッと目を逸らして両人差し指をつんつんと合わせるナナ、んー、聞かなくてもいいけどあんなに目の敵にされると気にもなる。


「うん、一応」

「うーーん。・・・・・・元カレ、的な?」

「は?」


引いた目で見るとナナは慌てて付け足す。


「違うの違うの!ラナーの一方的な片思いだったんだけど、成り行きというかなんと言うか、エレメントだしぃ、ソロアとかもいるしぃ別にいっかな?的な感じで!そもそも私は年上なんて興味ないしぃ!」


どういう成り行きでそうなるのか、理解に苦しむ。

まあ確かにそう言われてみれば二人で、いや四人で飛んでいた時は口は悪いながらも仲良く飛んでいた気がする。


「そんな尻軽女は放っておこ」

「え、あ」


ここぞとばかりににナナを弄るチグサに腕を引っ張られる、その言葉はちょっと可哀想だったけど、それを聞いた彼女は顔を真っ赤にしてプンスコと怒り出してしまう。


「尻軽女なんてひどいぃ!大人の関係なんてありませんでしたぁ!レイがファーストキスですぅ!これでも処女ですぅぅぅ。べっ!」

「人前でそんなこと言うなって、僕も一応男だよ?」

「ご、ごめんなさい・・・・・・」


自慢するところが違う、尻軽女ではないにしても口が悪すぎだし恥じらいを持って欲しい、黙らせるためにデコピンをお見舞いしてやる。

ほんと、処女とか言うんじゃねぇよ。

すると服の袖をクイクイと引っ張られる、ん?と見下ろすとルリさんが居た。音もなく忍び寄ってくるので心臓に悪い。


「・・・・・・レイは、処女キライ?」

「はい?」


引き攣った顔で思わずルリさんを見てしまうと、彼女はヤベッ!て顔をしてシュバッ!と光速でチグサの陰に隠れてしまう。ルリさん時々変なこと言うんだよね、天然なのかなんなのか、ルリさんに隠れられたチグサは状況が分からず首を傾げていた。


「いくらレイが弟っぽいからってな、男として扱ってやれよ?」


パッと見、男か女か分からないしかなり弟っぽいツルギさんに言われても説得力がない。


「俺だって二人が処女がどうか知らないのに・・・・・・」


時すでに遅し、鈍い音が駐機場に響くと、あまりの衝撃波に目を瞑ってしまい、次の瞬間に目を開くとツルギさんは地面に転がりミサキさんとケイさんの拳からは湯気が出ていた。

自業自得だが、可哀想だった。


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