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グレイ・スカイ ー解放への闘諍ー  作者: 嶺司
第二次グレイニア紛争
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第14話 正規と非正規

結局、ソラさんとルリさんが敵を1機づつ撃墜して他は追い返し、僕達は基地に帰投。


アーノル大佐への報告を終えていつもの駐機場に着くなり、ソラさんがアサギさんにこっ酷く叱られていた。胸ぐらをつかんでいて、ピシッと着こなされていた飛行服には大きくシワがより、ソラさんの踵は少し浮いている。彼女は今にも手を振り上げて、彼を殴ってしまいそうだ。


我を忘れて、爆弾を落としたと思われる敵機を追っていたソラさん。そんな彼を僕が追っていると、タイミングよく雲の中から待ち伏せしていた敵機が現れて、そりゃもう早速裏切られたかと思ったけど。自我を取り戻したソラさんは、物凄い機動で敵を翻弄し、僕は助けられた。


誰もやられなかったのは、運が良かった。


「次、身勝手な行動をされると、私はお前を落とすしかなくなる。お前は傭兵だ、立場を理解しろ」


アサギさんの、静かだが恐ろしい冷たい声、ガチギレと言うやつか。彼は正規のグレイニア軍人や解放軍人では無い、僕達がいくら信頼していても、上の人たち、アーノル大佐とかはそうはいかないだろう。


現に報告に戻った時、大佐からは「彼の処遇は考えさせてもらうわね」と言われたが、アサギさんが私の監督不行き届きだ、今回は多めに見てやってくれ、と必死に謝っているのを、僕とソラさんは後ろから見ていた、なんだかんだ言っても彼女は厳しくも優しい、僕はソラさんの為に謝っているアサギさんを、拳をギュッと握りしめて見るしかなかった。


だって彼も訳ありなんだから。


「アサギさん、もうその辺に・・・」


僕はソラさんの胸ぐらを掴んでいる彼女の手を掴み、まあまあと宥める。きっと昔なにかあったんだよ、じゃないとあそこまで暴走したりしないって。


アサギさんは、僕の声に掴んでいたソラさんの襟元を投げやりに離す。彼女に掴まれて、少し浮いていたソラさんは、踵を地面につけると少しよろけていた。


「レイっ!」

「はひぃっ!」

「ちゃんとこいつの面倒を見ろ」

「え?あ、はい!」


アサギさんに怒鳴られる、え、僕が?空だと僕は確実に彼に置いていかれる。多分、空での事じゃなくて、地上で変な事をしないように面倒を見ろという事なのか、見張っていろという事なのか、それとも両方なのか。


アサギさんはアヤメさんを連れて、再び隊舎の方へと行ってしまった。


残された僕達は、いつものベンチに座る。


真ん中にソラさん、彼の左側に僕と僕の膝の上にルリさん、右側にチグサが。


ちょっと、ルリさん、座るトコロが無いからって僕の膝に座らないで!しかし、彼女はさも同然と言わんばかりにそこをどくことは無い。


「ごめんな・・・、レイ」


ルリさんの対応に困っていると、ソラさんから開口一番に出てきたのは、謝罪の言葉だった。


確かに、僕は暴走するソラさんのおかげで、空戦は乱戦に飛び込んでしまったけど、僕を追ってくる戦闘機を、我に返ったソラさんが撃墜して、助けてもらったのもまた事実。謝ってくれたんだから、それで良しとしよう、僕はネチネチと引きずるタイプではない。


「昔何かあったんですか?」


僕は、膝をどくことの無いルリさんを諦めて抱えて、俯いた彼を2人で覗き込みながら聞いてみる。この国に何も無かった人なんていない、ルリさんの言葉が思い出される。


「ああ、ちょっとね・・・。昔って言っても最近だけど・・・」


彼は言葉小さく、それしか答えてくれなかった。

やっぱり、グレイニア紛争の時に何かあったのか?


「どこの世界も傭兵って大変だな」

「え?」

「あぁ、いや、なんでもない、忘れて・・・」


曇った空を見つめながら、そんな独り言を言うソラさん。そこまでハッキリ言われると、忘れたくても忘れられないって。僕が反応に困って、どうしようと、頭を搔いていると。


「・・・・・・大丈夫?」


え?僕の膝に座るルリさんが心配そうな声を掛けて、ソラさんの顔を伺っていた。つい昨日まで、怖い怖いと言っていたのに。


ルリさんの声に「なに?」とソラさんが、空に向いた顔をこちらに向ける。


彼は、その目尻から頬に一筋、二筋の線を垂らしていた。


僕は、それに驚きつつも彼の背中を優しく擦る、チグサも察したのか一緒に。一体どうしたのか、彼は自らの涙に気付き、それを堪えるように唇を噛み締め、表情を固めた。


すると、隊舎からニグルムくんが走って来ている姿が見える、お説教が終わったから、隊舎に行ったアサギさん達が呼んできてくれたのだろう。少年は一目散に、ソラさんの元へと駆け寄ってきた。


「ごめんな、一緒に居てやれなくて。怖かったろ?」


目の前に来たニグルムくんの頭を撫でて、声を震わせて言うソラさん、涙は堪え切れなかったのだろう、また、頬を垂れてそれがぽたぽたと地面に落ち、染み込んでいく。


「ううん、僕は大丈夫。・・・どうしたの?」


この子強いな、基地から遠かったと言えども、山の麓ではかなり激しく戦闘していたし、近くの街にも爆弾が落ちていた、一昔前の僕なら大泣きしている所だ。


しかし、少年は自分のことよりソラさんの心配をし、頬に手をやって、垂れる涙を手で拭いてあげている。

ソラさんはそんなニグルムくんにベンチから降りて、膝を地面につき、抱き寄せる。


ニグルムくんは、一瞬困ったような表情をしたけど、「もう」とため息をついて優しく抱き返していた。


「早く帰りたいよ・・・」


ソラさんは酷く悲しそうな声でボソッと言うと、さらに強くニグルムくんをギューッと抱きしめ、少年の首元で静かに涙を流す 。それを、ニグルムは嫌がるでもなく「ソラ・・・」と言ってじっとしていた。


彼はどこに帰りたいのだろうか。奴らに街を追われたのか、ルリさんに似てるという後輩のいる所なのか、それとも・・・。


●


ソラさんは、それから昔話をしてくれた。


僕の膝に座るルリさんと同じように、ニグルムくんを抱き上げて、自らの膝に座らす。彼の話はどこからどこまでが本当か分からないけど、僕は信じる。


アサギさんや他の人には内緒だぞ、と釘を刺されて彼が口を開いた。


「俺は、エルゲート空軍に所属していた・・・」

「へ!?」

「えっ!?」

「・・・・・・」


いきなりの爆弾発言に、僕達は言葉を失う。


ここからはるか彼方、東の大陸の大国、エルゲート連邦国。今、僕達解放軍に情報提供をしてくれている国だ。そこで彼は傭兵パイロットとして、1年前の戦争を戦っていたと、傭兵なのに正規兵の2人の部下を持ち、3機編隊の隊長機として世界を、この青い空を縦横無尽に飛び回っていた。


2番機は女性で、お姉さん気質でとても優しくて笑顔が多く、とても綺麗な人だと、歳は当時24歳だったそうなので、今で言うとアサギさんや、アヤメさんの1つ下だ。


3番機は、こちらも女性、小柄でジト目が可愛いくて、普段は無口だけどソラさんのことをやけに心配してくれていたらしい、歳は今は23歳だとか。その人が昨日言った、ルリさんに似ているという人だろう。


この3人でソラさんは、あの戦争の主要な作戦を戦い、ローレニア侵攻作戦に参加。


そこで、ソラさんだけが、ローレニアのエースに撃墜されたらしい。3番機が対地攻撃中に被弾していて2番機のエスコートの元、基地に返していて作戦空域にはソラさんしかいなかったと、不運な人だ・・・。


撃墜されベイルアウトしたソラさんは、ローレニア軍に捕まり牢獄に幽閉された。


「え、どうやって逃げてきたんですか?」


波乱万丈すぎるソラさんの経歴、盛っているにしても凄い。しかも、今の僕と同じ20歳の時の話だ、方や世界を股に掛けて戦い、方や昨日明日を生きるのに必死、どうしてこうも違うのか。僕は続きが気になって、彼の話を急かしてしまう。


「いや、まあ、内乱があっただろ?その混乱に乗じて運良くね」


彼は、少し口を濁したような気もしたが、確かにローレニア内乱は誰が味方で誰が敵なのか分からなかったと聞く、色々な幸運が合わさって、逃げることが出来たのだろう。


そして数ヶ月の逃避行中に、ニグルムと出会い、行き先がアルサーレと一緒だからと目標同じくここまで歩いて旅をしてきて、いざここに着いたらニグルムの親類などはおらず、ソラさんは彼を放っておく事も出来ずにさらに数ヶ月、2人で難民キャンプに身を寄せていたのだと。


「早くバルセルに行って、エルゲートに帰りたいんだけど、国境が封鎖されちゃっててねぇ」


グレイニアとバルセルを結ぶ陸路は、このアルサーレの山脈を越えていく道しかなく、紛争が始まってから難民の不法入国防止のために厳重に封鎖されていた。


軍の出入りはあるものの民間人の出入りは不可能。山を越えるにも、何千メートル急の山々が連なる山岳地帯、それは無理と言ってよかった。


「そんで、国境が開くのを待ってたら、君が危なっかしく飛んでたんだよ」


ソラさんとニグルム、それにチグサがソラさんの向こう側から顔を出し、ルリさんは首をクルッと回してまで僕を見る。


え、急にディスるのはやめて頂きたい。


「危なっかしくて悪かったね!」


あえてちょっと怒って言ってみせると、ソラさんは笑いながら続けた。くそ、流された・・・。


「レイが危なっかしいのもあるし、ありあわせも無かったのも本当。じっとしてられなくてね、そんな時に解放軍の募集ポスターを見つけたんだよ」


マジか、本当にあのポスターを見て誰かが来るとは思ってもいなかった。しかし、来てくれてのが金目当ての輩とかではなくて、ソラさんでよかったと心から思えた。


「それで今、俺はここにいる」


膝の上に座るニグルムくんの頭を優しく撫でるソラさん、彼に頭を撫でられて少年は、ご満悦そうにニコニコしている。


しかし、何故彼は縁もゆかりも無いこの地、自由グレイニアの為に戦おうと思ったのか、生粋のグレイニア人でも、なかなかそう思う人は少ないと思う、僕だって初めは生活のために軍に入ったし。


「ソラさん」

「ん?」

「解放軍に入った理由はそれだけ?ソラさんの戦う理由は?」

「戦う理由か・・・」


それだけは聞いておきたかった、僕も未だに戦う理由がはっきりしない。自分の為なのか、皆の為なのか。


なんの為にここにいるのか・・・。

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― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりです。 前作がとてつもなくお気に入りで回想てきな短い内容でもなぜか思い出して涙出てきました。 同じ時代をいろんな方面なら書いてる作品個人的に大好物なのでこの先の話もどんな展開になる…
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