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第3-2話

 遅めの昼食を済ませると俺は再び歩いた。町の外を歩いて歩いて歩き回った。

 新たに手に入れた『旅人に見える服装セット』を大きいカバンに入れて肩に掛けているが、邪魔でしょうがなかった。

 そんなこんなでなんとか夕刻頃に十キロメートル達成したので昨日泊まった宿へと向かうために町へと戻る。

 すると、門の所で見慣れない黒い服を着た人と門番の人が話しをしていた。そばには、この世界にも存在していたことに驚きだが、後ろに荷物を載せた黒いバイクが置いてある。

 俺は邪魔にならないようにそーっと二人の横を通り過ぎようとしたが、門番の人に呼び止められた。


「あっ、魔導士さん! 丁度良いところに。この方も旅をされている方で、今日はこの町に宿泊されるそうなのです。なので、この町の宿まで案内して頂いてもよろしいでしょうか?」

「は、はひっ! べ、別に構いませんが……」


 俺が寛大な心を見せつけると、その旅人が手にはめていた黒い手袋を取って、手を差し出してきた。


「初めまして! 俺は、タブラ。使い魔を二匹も連れている魔導士さんなんて初めて出会ったよ! できれば色々と話を聞かせてくれないかい?」

「えっ、あっ、はい。も、もちろんです……」


 俺も手を差し出して握手を交わす。

 話って何を話せば良いのだろうか。変なウサギ二羽を連れて歩き回ってる話しかないぞ。


「では、門番さん。失礼します」

「はい、ごゆっくり」


 旅人がそう挨拶すると、バイクのサイドスタンドを戻し、両手でバイクを押しながら町へと入って行く。俺もその後ろをついて行く。

 黒を基調としグレーのラインが入ったライダースーツに黒いブーツ。バイクの座席には黒いフルフェイスメットが置いてある。見た感じ歳は三十代半ばぐらい。黒髪で身長も俺より少し高い。

 まさにライダーと言った感じだが、この町を見る限りではこの世界に機械などの文明は存在しないと思っていたがそうではないようだ。


「俺、ガーディ! よろしくな!」

「私、ハーディ!」

「はっはっは、可愛らしい使い魔だね。よろしく頼むよ」


 二羽はタブラさんの周りを飛び回り、もう仲良くなっているようだ。やはりこの世界の人達はウサギが飛んでいても不思議ではないらしい。

 宿に案内すると、タブラさんはバイクのセンタースタンドを立てて宿の中へ入って行ったが、すぐに戻ってきた。


「俺はこれから飯にするけど、キミ達も一緒にどうだい?」

「行くー!」「行くー!」


 あまり他人と一緒に食事をするのは好きではないが、二羽がもう行くと言っているので行くしかないだろう。


「えっ、えっと、ご一緒します……」

「じゃあ、行こうか!」


 そして、市場の近くにあるお店の前に着くと、二羽はタブラさんの目の前で人間の姿になった。


「おお! 人間の姿にもなれるとは、相当高位な使い魔なんだね! 君は見た目によらず高名な魔導士の方なのかい?」

「い、いえ……、そういうわけでは……」

「ご飯ー!」「ご飯ー!」


 この世界では俺は相当すごい人に見られるようだ。――この二羽のおかげで。

 大はしゃぎする子供二人と共に店の中に入ると、適当に四人掛けのテーブルに座って、俺は羊肉を焼いた料理とサラダを注文した。他の方々も好きなものを注文するが、この子供二人の注文には特に注意を払った。下手したら宿代がなくなるからだ。

 しかし、遠慮などこれっぽちもないだろうが、なんとか宿代だけは残る値段の料理を注文をしてくれて心配は杞憂に終わる。

 料理を待っている間、タブラさんに色々と質問される。


「君も旅をしているんだろ? どこから来たんだい? 使い魔を連れているということは、北の国にある魔法都市からかい?」

「えっと……、ま、まあ、そんなところです……、はい」


 違う世界から来たなんて言うと頭のおかしい奴と思われるので適当にはぐらかした。


「あっ、そういえばキミの名前を聞いていなかったね。教えてもらってもいいかな」

「あっ、はい。赤木――」

「この人はね、リュートっていう名前なんだよ!」

「おっ、そうか、リュート君か。改めてよろしく頼むよ!」

「あっ、はい……」


 突然、横からハーディが割り込んできた。赤木という名字はいらないのだろうか。と言うよりこの世界に来て始めて名前を呼ばれた気がする。今までは、〝おい!〟だの〝お前!〟だのだったからなあ、としみじみ。それより、ハーディが俺の名前を知っていたのに驚きだ。あのラピスという偽死神から聞いたのだろうか。


「タブラはどこから来たんだ?」

「俺かい? 俺はここから東にあるラウード王国から遠路はるばる来たんだよ」


 その後もガーディやハーディが色々と俺が聞きたいことを代わりに聞いてくれた。

 この世界は今、大きく分けて六つの国があるらしい。内、一つはとても高度な文明を持っていてその国は機械で溢れており、タブラさんのバイクもその国産らしい。

 今、俺達がいるのがシルベア帝国という国で、タブラさんはこの国の帝都に行く途中のようだ。

 それを聞いたハーディとガーディが俺達も行きたいと駄々をこねると、なんと明日バイクに乗せて連れて行ってくれることになった。なんて優しいんだタブラさん。この町でのウォーキング生活ともおさらばできる。でもまあ、どこに行ってもお金は必要だろうから変わらない気がするが、景色が変わるだけマシか。

 料理が運ばれてくると他愛もない会話をしながら食事を楽しんだ。俺はほとんど聞いていただけだが。

 そして、なんと驚くことにこの店の代金をタブラさんがおごってくれた。大人ってすげえや。



 宿に戻ると俺も宿代を素泊まり料金で払い、部屋へと向かう。タブラさんとは明日の朝にこの町を出立する約束をして別々の部屋に入った。

 明日は新しい町か。帝都というぐらいだから都会なのだろう。どんな所か楽しみだ。

 さっさとベッドに入って寝よう。

 すると、ウサギの姿に戻った二羽が俺の腹の上に乗ってきた。そうだそういう約束だった。

 俺は少し息苦しい思いをしながら健康に悪い睡眠をとるのであった。


「おやすみー」「おやすみー」

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