表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

6

「・・・チッ・・。リクの奴、やりやがったな。」


約束の1日がすぎてリクの家に来てみれば、もぬけの殻。人の気配も室温の残りもなかった。


「さてはて、どうしたものかな?」


口ではそう言ってみるが、予想の内の一つではあったし、どうするかなど決まっていた。


「子供が一人で暮らしていれば、風邪で死ぬ事もあるか。」


かかる事態に、被害を最小限に食い止める方法。


無かったことにするのが、一番手っ取り早い。


知っているのを無かったことにするのだ、ここから先は村長としてではない、自分個人としての危機回避に重点を置くべきだ。


『1日の猶予』を、加担と捉えられたら自分の首が飛ぶ。


この時期、子供が死ぬのは病気か飢えだ。


昨日金を渡してるのだから、市場に出たはずだ。


飢えはない。


後は、リクの純粋さ。子供だからこその心の弱さ、アレスを知って暗い状態を晒して市場を歩いていたことにかける。


後はこの、リクの残した去り際をどう誤魔化したものか。


食糧は全て持っていったようだし、そこそこの生活用品が無くなっている。


どう見ても、逃走するための必要品を持ち去った跡だ。


だが幸い、アレスの事を自分が知っている事をリク以外知らない。


念のため、リクの両親が眠る墓に穴を掘り、ゴミ捨て場から適当な大きさの骨を見繕って

それらしく入れていく。


「まー、一年無事なら後はなんとかなるだろう」


イスタムクは己の経験則を大いに信頼していた。


問題事は後回しにするに限る。だいたいこれで上手く収まるもんだ。


村人には、リクが死にネズミにかじられていたので、そのまま埋めたと話せば終わる話だ。


身よりの無いリクの死因を深く探るものなどいるはずもないのだから、何とかなるだろう。


小さな村だが、ここはそういう村だ。


「後は、アレスを探すものが来ないといいのだが、来るだろうな。ただの脱走なら捕まって謝って終わりだろうけど、被害だして逃亡とかなってると早く来そうだな。」


アレスの状態が、どうであれ『勇者の欠片持ち』だ。


使えないから捨てる選択肢は無いはずだ。


捨てるくらいなら、 他に使われないように処分する。


イスタムクにも、『それくらいの道理』はわかる。


仮にも村長ともなれば、貴族に接することがあるので貴族という人種を知っている。


だから、必ず追ってが来る。来るとしたら、いつ頃か?


「早くても春過ぎて王都を出るくらいだといいんだがな…。」


遅ければ遅いほど 楽にごまかせる。


そして 来なければなお良いが、などと考えながら、アレスの痕跡を可能な限り消すために イスタムクは部屋中を見て回り 家財の残り物に手をつけるために 家捜しを始める。


「おー、村の連中にも好きなだけ持っていっていいとか言って入りませるのもいいな。」


イスタムクは、小狡い知恵は湧く程度には機嫌が良くなった。


ついでに、アレスとリクが上手く逃げてくれることを自分のため8割、アレスとリクのためにも貴族様から逃げ仰せることその愉快さ

に残り2割り程度に叶ってくれることを願った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ