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「リ~ク~!!リク!リクだ!!リク!!」
朝食に起こすとアレスは嬉しそうに声をあげて抱きついてきて、周りで目まぐるしく、はしゃぐ。
「リク!ボクね、会いたかったんだよ!!うれしいなー!また、遊べるんだね!!」
子犬のようにじゃれつくアレスは、それは楽しそうに、嬉しそうに走り回っては、前後左右に現れてじゃれついてくる。
それはそれで微笑ましくはある。だが、・・・
「よせよ、アレス!な?」
すでにオレもアレスも15才だ。餓鬼の体型ならまだしも、二人してそこそこ大きな体つきをしている。
嬉しいけど、アレスのノリにはついていけないや。
ましてアレスは、勇者候補としてそれなりに訓練されてきたのだろう。
・・動きが速すぎて・・マジ鬱陶しい・・。
なので、『いつも通り』に足が出て回し蹴りをかましてしまった。
「いい加減に、落ち着け!子犬のアレス!」
「う~。痛いよ!暴~力、ハンタ~イ。」
蹴られた所を押さえて、涙目で見上げる。
実際には、ポスッ。と、音がするくらいの強さだが、痛がるアレスの背中に手を回して引っ張って行くまでが『お約束』ってやつだ。
「朝飯できてるから!行くぞ!」
声こそ怒ったように。だけど、顔が緩んでしまう。
アレスも同じように、「いたいよ~。」とか言いながら、顔は笑っている。
「フフッ。」「アハハッ。」「ワッハハッ!」「アハハハハッ!!」
二人して笑いながら歩いた。
そこにいたのは、10才のオレとアレスだった。
嬉しくて、楽しくて、可笑しかった。
「わ~♪パンにスープ、干し肉まである♪ご馳走だね♪」
アレスの痩せた体付きで想像はしていたけど、ろくなもの食わしてもらってないな。
「仮にも勇者候補なはずだよな?どうなってんだ?」
そんな待遇なのか?
アレスがこんなだからアレスだけ冷遇なのか?
パンと肉を両手に頬張るアレスに、オレにとっても朝食としてはしっかりとした品数と量ではあるのだが、同じように頬張るように食べながら、今日からの予定をさも当たり前のように何気無く話す。
「アレスのお父さん、お母さんはアレスを探しに出掛けたから、探しに行くぞ。長い旅になるかも知れないしから、食べ終わったら出掛けるぞ。」
こうなるとは思ってさりげなく伝えたけど、やっぱり泣くよね。
「え!!お母さん達、僕を探してくれてるの?!大変だ!すぐ行かなきゃ!」
予想通り、手に持ったパンを放り出して、バタバタと玄関に走り始めた。
だと思って、アレスを奥側の席にしてて正解だった。
「待てよ!ちゃんと探しに行くから、せめてこの飯ぐらいは食べてくれ。これから先こんなチャンとしたの食べれないんだから。」
「だって!だって、お母さん達、僕を探してくれてるんだよ!僕を探してくれているうちに見つけないと!また、嫌われちゃう!要らないって、売られちゃう!」
「お母さん達もアレスをずっと大好きだったよ!お母さんもお父さんは、アレスが連れ去られてから泣いて、泣いて、だから、大好きなアレスを探しに出掛けたんだよ!」
お母さん達僕の事嫌いじゃないかな?嫌いだから、売られたんじゃないよね?どこ行っちゃったの?」
朝飯位ちゃんと食べてから出掛けるよ。」






