推薦組
お父さん、、、。
お父さん、、、。
必死に探した。近くの公園、駄菓子屋
商店街。
どこにいるの、、?
もう、会えないのかな?
子供ながらそう、思っていた。
もしかしたら、、。
迷わず向かった先は、パチンコ屋さんだった。
ガチガチ。ゴウゴウ、、
汚く激しい音が飛び交った。
店内は顔が青ざめながら台に打ち込む大人
電飾が光だし、笑顔に溢れた大人
台の後ろを腕組みをしながら真剣そうに見つめ立ち尽くす大人
その一人一人を掻き分け探し歩いた。
その小さな子供を大人の
欲望、憎しみ、渇望、叫び
そんなものが襲いかかり、押しつぶされそうになった。
耳がいたいよ、。頭が痛いよ、、。
お父さんお父さん、、。
ジリジリジリジリジリジリ、、、。
半端な夢の途中、目覚まし時計は鳴り響いた。
「はっ!!夢か、、。あっー。」
バタンドコドカン!
悠詩は寝てるとき、すでにからだが
ベッドの端に半分さしかかっていたため。
勢いよく、おきた悠詩は当然、床に叩きつけられた。
イテテテ、、。朝から災難だ。
「ふぁーー。」
床で大きな背伸びをし、あくびをひとつ。
ぼーっと天上を見つめていた。
「悠詩ー朝よー早く支度なさい!」
高く鋭い声が部屋に突き刺さる。
カーテン越しに
差し込む光は朝をものがたるかのように、眩しかった。
やべっ時計を見ると、遅刻ギリギリの時間だ。
悠詩は急いで、身支度を整え。
キッチンに向かった。
いつもと変わらない朝食があり。
悠詩は急いでそれをたいらげた。
「時間大丈夫なの?早く学校にいきなさい!」
「行ってきまーす。」
「行ってらっ、、、、」
バタンっ
母親の声を書き消し
おもいっきりドアを閉め走り出した。
マジでやべー。
学校までの道のりは徒歩20分。悠詩の家は
ほんのわずか、認定距離が足りず自転車通学が、できない地域だ。
よーし、仕方ない少しショートカットだ
悠詩は信号待ちを恐れ、あまり信号のない道を選び走った。
スタスタ、、。ハーハー、、。
だがひとつだけこの道には問題がある。
きたか、、。
確かにその道は、短縮ルートなんだが
生徒たちは必ずその道を、避けて通る。
その道を生徒たちはこう呼ぶ、「心臓破りの坂道」
その坂の傾斜はだいたい55度、天辺までの距離は約1150m
さらに天辺から降りる際も、ほぼ同じ条件のまま降り
その先を左に曲がり300m先に学校がある。
この坂は陸上部の特訓坂道として、いつも利用されている。
「よし、いくぞ!」
いままで距離を走ろうと広げていた歩幅を
ギアチェンジし、小さな歩幅で加速した。
坂にさしかかり、体が急に重くなる。
強い追い風が前進を拒むような感覚が悠詩を襲った。
タッタッタッダ、、。
足がだんだん重くなってゆく、あと天辺まで100mぐらい。
ダッダッダッダァンタン、、。ハーハーッ。
若干意識がもうろうとしたが
悠詩はなんとか坂の頂上についた。
坂の向こう側の景色はこの街の全てと
その先には海がどこまでも青く青くたたずんでいた。
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「、、、以上。」
藤田 の話とともに、朝礼が終わった。
「よ!悠詩。本当ギリギリだったな。」
坊主頭が人の顔を見るなり、ニヤニヤしながら近づいてきた。
そう、悠詩はなんとか、学校に間に合ったのだ。
「朝起きて、時計見てガチで焦った。」
「びっくりしたよ。悠詩いないから休みかと思ったら
いきなりドアがあいて息乱してたから。そんなことより、昨日の練習どうだった?というか、伴奏者は誰だった?てか、うらやましいよな俺をおいて、女と二人っきりで練習なんてよ!」
茂は左肘で僕の脇辺りをつついた。
「あーうるさいうるさい!
練習はとりあえず、問題なくやれてます!伴奏者は、、、。」
この時、悠詩は伴奏者は武と言うかいわまいか
当然悩んだ、武は茂の妹をふった張本人だし、、。
それだけではない、茂はシスコンだからだ。
少し言うのをためらった悠詩を見て
茂のニヤニヤは頂点に達しようとしてた。
「伴奏者は、、、、そんなに気になるなら自分で確かめにこい!」
「えーーー何で言わないの教えて教えて!早く教えろよー。」
「絶対に嫌だ。」
これは悠詩の本音だ。
「というかだ、自分も放課後の貴重な時間を使いたくないのだ!」
自慢げな顔をしながら、茂は腕組みをしてみせた。
、、、まさか、、この坊主頭に、、、。
「聞きたいか?」
真剣な眼差しで悠詩は頷いた。、、、コクリ。
「実はな近々、妹の誕生日が近くてな血の繋がった兄として何かやれないかと考えていたんだ、それから、、、。」
キモい、、、、。
「おい!悠詩!悠詩くん!?、、。」
悠詩は「妹」というワードがでたとたんには
茂の視界から姿を消していた。
悠詩はシスコン坊主頭をふりきり、トイレに向かった。
教室を抜け廊下から歩いて、階段よりにトイレはある。
廊下は、生徒で溢れていた!
窓辺で立ち話する女子生徒や、じゃれあいで走り回る男子生徒。
そんななか、ひときわ身長が高くこちらに向かってくる生徒がいた!
菊川 武だ!
「よう!」
どうやら、武はすれ違うであろう2、3メートルぐらいまで
こちらに気づいていない様子であった。
「おっ!おう。今日さ昨日の件で話しがあるから!とりあえず視聴覚室で。」
悠詩は少し、小さく頷いた。
「わかった。」
軽く話をし、悠詩はトイレに向かった。
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ちょうど昨日の18時、練習を終えて。
悠詩と武は職員室に鍵を返した。
悠詩はのりきではないが、武と帰宅することにした。
12月、この時間の、校舎はすでに薄暗く
遠くにつらなる山々からは、赤みがかった色と漆黒が混じり青紫色の空がまだわずかに、残っていた。
「武って、ピアノ弾けるんだな。」
「まー、見た目によらず4歳からピアノ始めてたから。」
本当に見た目によらずって、こういう時に使うものだと。
悠詩は思った。この見た目のどこに、ピアノが弾ける要素があるのかと今でも、疑問でならない。
武は見ため、ほどほどの筋肉質なところと
身長が高く176㎝、爽やかで優しい面立ち。
サッカーをやるために生まれてきたような、運動部顔である。
その隣では頭1個分ほど、小さな男が歩いているのだ。
「4歳から!?なんで続けなかったの?」
「実は10歳ぐらいまではやってたんだけど、ある時を境に
途中で挫折して、凄く好きだったピアノが嫌いになってなー。」
「そうだったんだ、、。」
「でも、なんで、今回伴奏やることにしたの?」
武は少し、笑顔で答えた。
「卒業式でさ、母親にピアノ弾いてる姿を見せてあげたくて。
挫折してからは、ピアノ弾く姿見せてないし。一番俺のピアノ応援してくれたのは母親だったからな。」
悠詩は単純に武のことを尊敬し、
今まで抱いてた、敵対心ももはや消えてなくなっていた。
「ところでさ、悠詩はなんで指揮者やることに決めたの?」
ギクッ、、、。
今の流れで、悠詩は素直に理由を言えるわけもなく。
「うん。まぁー、えーと暇だし卒業式に指揮者やってもいいかなと。」
それを聞いた、武は太い声で笑ってた。
「でも、よかったよ。指揮者が悠詩で。」
「なんで?」
「いやー、なんとなくさ。悠詩となら上手くやれる気がするから。」
「あっ、そう。」
武はその後も、理由がわからないが笑ってた。
「悠詩、ところでさ、、。おまえ、音楽好きか?」
「うーん。まーそこそこ。ラジオで流行りの曲を聞くぐらい。」
急な質問に少し、ためらいながらも答えてみせた。
「そっか。俺さ、夢があるんだ!将来はミュージシャンになりたいんだよね!」
夢か、、、。武から夢を語られ素直に驚いた。
「凄いな!どんなミュージシャンになりたいの?」
「東京ドームを満員にするぐらいの、ミュージシャン!
ジャンルとかは考えてないけど、キーボードで新しい音楽ジャンルを作って世間を騒がせてみたい。」
武の身長がデカイゆえに、スケールもデカイ夢に
悠詩はただ、その話を聞き入ってしまった。
「、、、。凄いなその夢!」
「夢詩、お前は夢とかあるか?」
その問いに、悠詩は戸惑った。夢か、、、。
「まー、高校卒業して就職して両親に親孝行すること。」
武はそれを聞いて少し、シラケた顔をした。
「それって、本当に夢か?夢ってさ楽しくなくっちゃダメなんだよ!」
武は熱い眼差しで悠詩を見つめた。
悠詩は驚き、自分の人生を否定されたようで、なんだか腹がたった。
「夢ってそんなに大事か?夢がなきゃそんなにダメなのか?」
武は迷わずいった。
「確かになくても、生きれるし。親孝行するのも夢だ。でも、悠詩!本当にそれで、悠詩自身は楽しいか?」
悠詩は、今までの人生一度も自分自信の楽しみなんて考えたことがなかった。
なんとなく当たり前の日々を過ごし、なんとなく雲が流れる空を眺めているように、流れていく時間をひたすら眺めていた。
まるで、自分の人生を傍観者のように。
「楽しいか、、。」
その時、高校推薦の面接官のあの甲高い声が聞こえた気がした。
「坂崎くん 君の将来の夢は?」
............。
「はい!僕の将来の夢は高校卒業をし、安定した仕事に就職することです。」
それを聞いた面接官は
「なるほど。では最後の質問です。
安定した仕事につき何をしたいのですか?」
............。
そう僕は夢とか幸せとか、そんなことを考えていなかったのだ。
悠詩は悔しいが、言い返す言葉が見つからず黙ってしまった。
「悠詩!よかったらさ俺と一緒に音楽やらないか?」
「えぇ?!!」
いきなりすぎて驚いたのと
もちろん、悠詩は音楽なんて今までやったことすらない。
「考えてくれないか?んじゃ、俺はこれで!」
それだけ、言うと。武はいきなり走りさった。
「おい!武!ちょっと待てよ!おーい!」
まったく、勝手なやつだ!
悠詩は断る気満々だったが、
結局やるかやらないか、考えなければいけなくなってしまった。
「明日までに考えとけよ!じゃーな!」
30メートル先ぐらいで、振り返り武は悠詩に叫んだ。
それから、またすぐに武は走りさっていった。
悠詩は一人家路を急いだ。
空はすっかり暗くなり、街灯と通りすぎたテールランプが
ほんのりと黒いキャンパスに色をなぞった。
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放課後、悠詩は鍵を受けとりに職員室に向かうことにした。
教室は3階の西側一番端にあり、視聴覚室の鍵さえ開いていれば
わざわざ1階の職員室にいかなくても。
そのまま東側端までいけば、視聴覚室に入ることができた。
卒業式という、学校行事に協力しているにもかかわらず
その辺の不便さに悠詩は少し、憤りを感じながらも
職員室に向かうのだった。
職員室につき トントン、、。
「失礼します。」
中に入ると武のクラスの顧問の鷹見が
こちらに気づき話した。
「悠詩くん!練習はどう?」
「はい。まーなんとか。卒業式までには間に合うと思います。」
「そう!!それはよかったー。」
鷹見は少し、ホッとしたような顔をした。
「それじゃ!練習頑張ってね!」
そう言って。鷹見は視聴覚室の鍵を悠詩に渡した。
「あっ。はい。」
「失礼しました。」
悠詩はそう言って。職員室をあとにした。
視聴覚室に着くと、視聴覚室のドアを背に向け
あぐらをかきながら座る武がいた武の隣にはスクールバックが
乱雑におかれていた。
「よっ!」
武はそれだけ言って立ち上がりスクールバックを肩にかけた。
「おう!」
悠詩は視聴覚室の鍵を差し込みドアを開けた。
武は視聴覚室のピアノの椅子に腰掛け。
悠詩は二人のスクールバックを黒板前の台においた。
「そうだ!昨日の件、考えてくれた?」
武は改めて、悠詩に確認した。
悠詩は答えた。
「考えたけど、バンドはやらない。」
「そっかぁ、わかった。んじゃ練習始めるか?」
武は以外にも、あっさりとしていた。
「ちょっとまった!僕はバンドはやらないっていったんだ。」
「うん?どういうこと?」
武は疑問を悠詩にぶつけた。
「武は自分勝手だ!夢をみろだの、楽しくなくっちゃ夢じゃないだの。
バンドがやりたいだの。自分勝手なことばかり言って押し付けやがって。」
「だから、僕のわがままも聞いてもらう。僕はパンクがしたい!武はピアノを弾け!」
武は唖然とした。
「パンク?俺がピアノ?なんだそりゃ。」
悠詩は言った。
「新しいジャンルの音楽やるんだろ!僕も武もこれで5分5分だろ!」
武はお決まりの太い声で盛大に笑って見せた。
「んじゃ!決まり!やってやろうじゃないか。」
「ところでさ、なんで?パンクなんだ?」
悠詩は少しキョトンとした顔をした。
「スピップが好きだから。」
それを聞いた武もキョトンとした。
「スピップか、、。確かにパンクだがポストパンクだなありゃ。だけど、彼らはJ POP もやるし、バンドみたいなもんだな。」
ポストパンク〈※作者個人的な解釈〉とは、
パンクの発祥は1970年代、超有名な話がイギリスのロンドンで
結成したセックス・ピストルズ。
ボーカルのジョニー・ロットンとベースのシド・ヴィシャスが
メンバーのなかでも、有名な人物。
王室、政府とかを痛烈に批判した歌詞が特徴的
楽曲に関しては、超絶技巧派とは真逆で簡潔で、コード進行がスリーコード中心で比較的に短い曲が多い。
そのパンクが、衰退していった頃、そのパンクを
受け継ぐように世に広められていったのが、ポストパンク。
広められて行くなかで、他バンドと競争が激化し
さらに個性が付属されていくようになって
また様々なジャンルに変化をしていったが、その変化する過程
の中にあったジャンルと説明されていただきます。
悠詩の頭からは訳のわからない話に煙がもくもくとあがっていた。
「ポストパンク?J POP ?」
武は続けた。
「俺が言いたいことは、どんな音楽ジャンルをしようが。
例えばそこには必ず大先輩がいて、その大先輩の意思を継いでいかなきゃいけないってことだ!ジャンルを名乗るってことは憧れである先輩をまずは研究して、知りつくした後独自でそれを自分の形で再現をする。それに尽きるってこと。」
悠詩は少し、顔をあげて聞いた。
「つまり、僕がスピップの曲を聞いて学べってこと?」
武は目を光らせながらさらに言った。
「そうだ!作詩・作曲・編曲・アレンジ・歌いかたから全てだ!」
「えっ!そんなの無理だ。なんもわからないし、、。」
武はさらに目を光らせながら、黒板前に置いてあるスクールバックにてをかけた。
「そういうふうに言うと思ったよ。ほらっ」
そういうと、武は悠詩にあるものを投げた。
「おっ、、と、、。」
悠詩はそれを落としそうになりながら受け取った。
それは、厚みが約7㎝ほどのA5判サイズの本だった。
【楽しい作詩教室】
「なにこれ!?」
「それはだな作詩の勉強本だ!これで基本的なことを学んで欲しい!あとできた歌詞は後で俺に見せてな。」
悠詩はまったくわからないうえ、いきなり歌詞を書くこととなり
慌てた。
「えっ!えー!!?まてまて!いきなり歌詞かけだの、本渡して勉強しろだの。無理無理!!武お前、歌詞の作り方教えろよ!」
武はそれを聞いて。ポカーンと視聴覚室の天井を見上げた。
「あっ!確かに。でも悪ぃー俺歌詞だけはセンスないんだわ。」
悠詩は唖然とした。
「っておい!マジかー、、。」
「まーとりあえず。頼んだ!!あと2つやらなきゃならないことがある。」
武はさらに目を光らせながら悠詩に言った。
「1つは、曲を3曲オリジナルで作る!3か月以内だ!
作った曲は高校でバンド活動に活かす予定だ!活動は1日でも早いほうが絶対にいいからな。」
「ちょっと!まった!いきなり、音楽もなんにもわからない、素人が歌詞を3曲分も作れないよ!」
武はそれにも怯むことなく、まだ目を輝かせながら言った。
「大丈夫だ!それもちゃんと考えてるから。」
「わかった。」
とりあえず、悠詩は黙ってみせた。
「あと2つ目だが、最低一人メンバーが必要だ!未経験でもかまわないがドラマーが必要だ。今から誘うとなると、推薦枠で受かってなおかつ、男であることが条件だ!」
「女の子はなんで、駄目なの?」
と悠詩が聞くのも、今回の推薦枠で合格したのが
計12名、そのなかでも男子が4名しかいないのだ。
「将来的に考えても邪魔な存在になるし、なおかつ悠詩はスピップに似たバンドをやりたいときた。パンクに女は余計にジャンル的にも、いらない。」
「それでも、男4人しかいないし、、。」
「片っ端からあたるしかない!とりあえず、悠詩メンバー探し頼んだ!」
悠詩は全て押し付けられているようで、なんだか無性に腹がたった。
「ちょっと待った!話を聞いていれば、歌詞かけだメンバー探せだ、なんでもかんでも押し付けやがって!武も協力しろよ!」
武は相変わらず、変わらない眼差しで悠詩を見ていた。
「んじゃ!聞くが悠詩?悠詩が歌詞を書いたとして誰が曲を作るんだ?それに俺がメンバーを選んだとして悠詩はそのメンバーと音楽を本格的に続けられるか?」
悠詩はその質問に答えられず。
「、、、。確かに。」
武は続けた。
「まずは明日までに1曲オリジナル作っておくから。メロディーに歌詞をつけて欲しい!それだったら、やりやすいだろ。」
「なるほど。」
「あとメンバーは悠詩に決めて欲しい。理由はメンバーは仲がいいに越したことがないのと、あと歌詞は俺が思うに曲を作るうえで、一番大事だからだ。悠詩が歌詞を一緒に考えられるようなやつが理想的だな。」
「わかった。探してみるよ。」
それを聞いた、武は少し笑ってみせた。
「とりあえず、今は課題曲を練習しようぜー。ほれっ、、。」
武は悠詩に向かって指揮棒を投げた。
悠詩は両手に持っていた本を瞬時に右手に持ちかえて。
左手で指揮棒をキャッチした。
「いきなり投げんなよ。」
武は笑いながら、すぐさまピアノの伴奏を引き始めた。
まったく勝手なやつだ。
そう心で叫びながら。追いかけるように悠詩は指揮棒をふった。
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18時練習を終え、悠詩と武は視聴覚室を後にした。
いつものように、職員室に向かい鍵を返しに向かった。
「今日は俺が鍵返すから、下駄箱で待ってて。」
武はそういうと、手摺にてをかけながら階段を2段飛ばしで降りてった。
「おう!」
悠詩は、1段1段ゆっくり階段を降りた。
下駄箱に着き、上履きを下駄箱にいれ靴に履き替えた。
下駄箱から出口を抜け、校舎側からは校庭が見える。
その先にある7段ほどの階段に、スクールバックをおき腰を掛けた。
校庭を見渡すと、野球グランドにぽつり、ユニフォーム姿で
走る野球部員がいた、おそらく1年生であろうか。
12月こんな寒くて、薄暗いグランドで一人練習に励んでる。
その姿を悠詩はじっと見ていた。
「よ!待たせたな。」
武は階段の前で悠詩に話した。
「おう!」
悠詩はスクールバックを、肩にかけ立ち上がった。
悠詩と武は校庭から校門を抜け家路に向かった。
「そうだ!明日までに曲作るんだけど、題材テーマ決めなきゃな。なににする?」
「いきなりテーマ題材と言われても、、。うーん。」
「何だっていいんだぜ!最近なんか感じたこととか、恋愛とかなにかないのか?」
悠詩は考えた。
「1つ気になったことがあるんだけど。」
武は興味津々に聞いた。
「武はなんでサッカー部入ったの?」
意外な質問に武はきょとんとした。
「小学校のとき、TVで海外選手の試合を見て、やって見たいって思ったから。小学5年のときから始めた。」
「ふーん。そうなんだ。個人練習とかって、結構やってたの?」
「まー好きで始めたし、試合にでたいから。家ノ前でひたすらドリブル練習、リフティングとか蹴りかたの練習とか」
「そっかー。」
武は訳のわからない質問にイライラし聞き返した。
「それで!テーマ題材は?」
「それがいい!」
武はさらにきょとんとした。
「それって?」
「だから、それだよ!一生懸命目標に向かって頑張る人の歌みたいな。」
悠詩はあの校庭にいた野球部員の姿が浮かんでいたのだ。
武はきょとんとした顔から、目を上に向け考えたような顔をした。
「なるほど。んじゃこれはどうだ!頑張ってる人の応援歌みたいなやつ。」
悠詩はなんだか、これからの不安と未知なる期待が交わったような味わったことのないわくわく感と
さっき校庭にいた野球部員の姿が、再び頭に浮かびやりたいと本気で思っていた。
「それがいい!それにしよう。」
「よっしゃー決まりー!!明日までなんとか頑張るは!」
「わかった。」
「こうしちゃいられない。時間があまりないから俺はこれで!」
そう言うと武は走り出した。
「おい!武!メンバーの件は!?」
悠詩は叫んだ。
「あっ!悪ぃー明日、推薦で合格した男子に声かけといて!頼んだ!」
そういうと武は、全力疾走で走り去った。
「ったく、、。マジかー、、。」
悠詩は戸惑った。何故なら悠詩はあまり人に心を開くタイプでは
ないため。
仲のいい友達以外は、基本人見知りなのだ。
それに、音楽もやったことのない人間がどうやってバンドに
誘えというのだ。
それに、仲のいいやつは一名いるが、、、。
茂、、、。加藤 茂
やっぱりやつは無理だよな、、。
シスコンだしな、武のことどう思っているだろうか。
だめだだめだ、茂は後回しだ。
とりあえず、他の3人に声をかけよう。
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「ただいまー。」
「おかえりなさい。」
母親は料理をしていた。
「満と親父は?」
※坂崎 満悠詩の2つ下の弟
「まだ帰って来てない。お父さんは残業みたい。満は友達と道草でもしてるんでしょ。まったく、、満は、、。」
母親は少し目を鋭くし、呆れた顔をしていた。
「悠詩!あんた早くお風呂入りなさい。」
「はーい。」
すぐには入りたくなかったが、今の雰囲気に従うしかないな。
さわらぬ神に祟りなし、、っと。
悠詩はすぐに風呂に入り、部屋に戻った。
さて、いつものように。タツノコファンタジーでもやるか。
大きなメダル集めしなきゃな。
早速本体にソフトを入れて電源をいれようとしたが。
、、、、。
「明日までに1曲オリジナル作っておくから。」
武の言葉が頭に浮かんだ。
そういえば、悠詩はスクールバックを開けた。
そこから、【楽しい作詩教室】本をとりだした。
いちよう読んでみるか。
悠詩はコントローラーを適当に置いて。机に座り本を読んだ。
えーと。
目次を読んで、、、っと〔歌詞の作り方〕あった!
歌詞とは言葉の通り、歌の詞である。
歌とは曲を示しており、詞とは言葉のことである。
単純に曲の言葉っていう、解釈になる。
この本ではその歌詞の作り方や方法など説明をしていくが
実際の歌詞とは曲にはまっていれば、自由に言葉を選べばいいのである。
だが、素晴らしい歌詞やプロの歌詞には
その自由な言葉のなかに、工夫や伏せん歌詞の深さや味わいがあるのだ。
この本ではそのきっかけとなる、方法や歌詞の考え方を伝えよう。
まずはじめに、曲を製作するうえで。
一番何を重視するかにより、作詩をするタイミングが変わってくる。
それを作者は詩先・曲先といっている、
もう1つが曲を作る過程のなかに、作詩を組み込んでいく方法である。
人によって、やり方タイミングは違うため。
作者としては、用途として詩先・曲先を使い分けをしている。
詩先は言葉の通り、作詩の製作を一番始めにおこない。
できた作詩に曲をつけくわえ、歌詞にする方法だ。
この方法のメリットとしては
メッセージ性をより強くした曲の製作に向いていることと
曲のコード進行やイメージを後に固めるため
自由な発想で曲作りをすることができる。
デメリットとしては、作曲製作するうえで
コード知識が問われることと歌詞の音はめに
ある程度の工夫がいるため作曲とのバランスをとるのが
難しく、
ある一定の音楽理論や独自のアレンジ力がとわれるため
上級者向けとも言えるだろう。
次に曲先については
歌詞の製作を後にし、曲を先につくる方法である。
メリットとしては、キャッチーな曲フレーズや
曲の雰囲気などを優先しているため。
曲の狙い目が明白でわかりやすい曲の製作ができること。
さらに、曲ができているため歌詞な音はめがしやすいこと。
デメリットとしては、作曲時点である程度のイメージがなければ
メッセージ性に欠けやすく
音はめに囚われれば言葉の制約があること。
言葉の発想力や柔軟な対応力、メッセージ性などを
全体を通して意識することが必要である。
歌詞の初心者としては曲先のほうがやりやすいと作者は思う、、、。
「わけわかんねー、、、。」
悠詩はポツリつぶやいた。
てか、なんで自分は音楽なんてやろうと思ったんだ?
夢がないって言われてむきになったからか?
いや違う。
「親孝行するのも夢だ。でも、悠詩!本当にそれで、悠詩自身は楽しいか?」
自分が楽しいか、、、。
考えたことなんて一度もなかった。
だってさ、、、。
家でゲームしたって飯食ったって
学校に行ったってなんだろう、、、。
満たされないんだ、、、。
毎日毎日の日常の景色が流れていくだけ、、。
夢ってなんだろう、、、、。
武が帰ったその夜、考えたけどわからなかった、、。
夢か、、、。
そういやあのとき、幼いとき
夢があったなー。
でも叶わなかったんだ、、。
そうだよ。夢を見てみたいんだ。
わけがわからずただ、それだけが僕を突き動かしたんだ。
ギコギコ、、ギコ
悠詩はイスにもたれかかり、後頭部を両手で抑え
机の蛍光灯だけの薄暗い小さな部屋の天井を仰ぎ見ていた。
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