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3次元ってヤバいですね
まず目を引くのは、白銀の艶髪だった。男性にしては少し長めのその髪も、彼の美貌と相まって、稀代の芸術家が残した彫像のようだ。
深蒼の瞳は、今はどこか憂いを帯びて伏せられている。
19才……その年齢からは信じられない落ち着いた雰囲気。
しかし騎士として鍛えられた体躯のなかにも、どこか儚げな空気を漂わせていた。
「――異国の姫よ。どうか私が祖国に帰る手助けをしてもらえないだろうか?」
薄い唇から漏れた声は甘く……しかし揺るぎない真摯さを感じさせる。
年季の入ったパイプベッドから上半身を起こした彼は、腕の傷に響いたのか一瞬顔をしかめる。
しかしすぐに背を正し、真っ直ぐに私を見つめ、恭しく頭をさげた。
肩に掛けた、リラックマのバスタオルがはだける。
……って、いやいやいやいや!!!!
この状況はなんなんだ…!?
◇◆◇
そう、出会いは唐突だった。
というか、私のなかでもこの人生最大の衝撃事件はまだ受け止めきれていないうえ、現在進行形で解決の糸口すら掴めていない。
なので、落ち着いて整理しようと思います。