神であり人間であり最強であり優しすぎた1匹の蛇の話
遅くなったかな?最後の投稿いつだっけ?
「それじゃ、話していこうか。えっと、、、どこから話せばいいかな。」
「別にどこからでも構いませんよ。ただ今はあなたのことを知りたいだけですから。」
「そっか。じゃあ、この力を手に入れた時くらいから話そうか。」
そう言いながら話しだす。遠くをぼんやりと見つめて自分の過去を思い出しながら。
確か中学1年生の夏くらいだったかな。クラスの男子数名で夜に山の探検に出かけたっけ。当時の俺はまあまあクラスに馴染めずにいた。『王 正希』その名前が俺とクラスの間に溝を作った。
なんでも『正希』という名前は親が正直に、常に希望を持って生きて欲しいという願望のもと名付けられた。俺に兄弟はいないので父、母、息子の3人家族だった。ひとりっ子ってこともあって親はまあまあ俺に甘かった。
その影響は結構大きくて、俺を気弱な性格にした。甘やかされているという事実がみんなに申し訳なく感じたから。それに『王』という苗字もみんなから注目された。王って名前は中国人に多いと言うが、一応自分の両親は日本人。祖父も曽祖父も日本人。おそらくだが相当昔に中国人と日本人が結婚して、その苗字を受け継いできたのだろう。
普段から教室の隅で本を読んでいる俺は完全にクラスから浮いていた。その日も隅で本を読んでいるとクラスの男子数名に囲まれた。夏休み前、入道雲が天を目指して発達し、ひまわりは立派な蕾をつける。蝉の鳴き声も少しずつミンミン蝉に変わりつつある。夏の匂いが読書する自分の気を落ち着かせていたというのに、せっかくの時間を邪魔されてしまった。
「なに?今読書中なんだけど?」
「いや、正希さぁ。もうすぐ夏休みだろ?一緒にどっか行こうぜ?」
「残念だけどパス。夏休み中は読書と勉強したい。それにばぁちゃん家にも行くからあんま暇じゃないし。」
「そんなこと言わずにさぁ〜、ずっと勉強だけじゃつまんねえだろ?どっか行ってパーッとはしゃごうぜ?」
「こんなクソ暑い中外で疲れることして楽しい?」
「楽しいに決まってんだろ。それに予定はもう練ってあるんだ。どうだ?行かないか?」
「考えとくわ。」
そう言って適当に奴らをあしらう。今は夏の予定よりも手のひらに広がる巨大な世界のことが大事だ。俺はフゥとため息をつくと読書を再開する。この本の作者は自分のお気に入りでさまざまな世界を描く。戦闘ものやラブストーリー、謎解きなどなどいろんな世界があって旅をするに飽きない。
自分はこの読書の時間が一番好きだった。特に環境を整えて自分が一番興奮できるようにした状態で読んだ時の物語は通常の1億倍は楽しめる。
ある程度読み終えると腕を組んで上に伸ばす。
「ん〜、よく読んだ。」
瞼をぎゅっとつぶり目を休ませる。この目を閉じた時に物語の情景を思い浮かべてより鮮明にしていく作業も好きだった。
そしてぼーっと遠くを眺める。高いビルがちらほら立ち入道雲が太陽に反射して白く光る。緑は光を大量に浴びて元気そうにしている。
俺は夏が好きかもしれない。冬も好きだし秋も好きだ。でも春も嫌いではない。一言で言えば四季が好きだ。
もうすぐ夏休み。グラウンドで野球部が声を上げて練習している。
「部活か、、、秋になったら何かやってみようかな。でもそれで読書ができなくなるのはやだなぁ。」
部活には特に入っていなかった。体験入部には卓球やバレーを見てみたが特別惹かれることはなかった。むしろ、その日の読書時間が減ったことでマイナスな印象しかない。
夏休みの宿題はちょっと多いが、その分範囲のプリントが早く配られる。それを取り出し範囲を確認すると黙々と宿題に取り掛かった。
自分以外誰もいない教室。夏休み前の特別時間割で授業は2時くらいに終わる。家に帰っても本以外になにも無いので俺は学校で宿題をする。ここんとこ毎日かもしれない。でも悪い気はしない。
時計の針が4時を指した時、俺は荷物を持って教室を出た。帰る途中、階段ではバスケ部がトレーニング中だった。それを避けるように降りる。下駄箱で靴を履き替え校門を出る。家に帰る途中、サッカー部が外周しているところとすれ違う。
確か俺を誘った奴らの中にサッカー部がいたな、と思っていると案の定そいつと目があった。
「夏休み!予定決まったら連絡すっから!」
こっちの予定など無視か。ま、適当にスルーして家に帰る。
帰ると時計は4時半を指していて、家の中はやけにひっそりとしていた。今日は親が2人とも残業で帰るのが遅い。6時まで暇なので自分の部屋に行き、制服を脱ぐ。そして適当にハンガーにかけると部屋着に着替え読書を再開した。そして時計の針が6時を指すとリビングに行き、冷蔵庫を開ける。中にはラップをかけた夕食がある。それを取り出して電子レンジで温める。全て温め終えるのに多少時間がかかるからリモコンを手に取りニュースを見る。
「政治不信、、、汚職事件、、、過労死、、、いじめ、、、なんだよ。ここんとこ全然面白いニュースやってねぇな。暗ぇのばっかでつまんねぇ。」
文句を垂らしつつチャンネルを変える。学校ではアニメやらゲームやらが流行っているが自分には興味が湧かなかった。
そもそも、俺はスマホを持っていなかった。誰かと連絡を取るなら携帯でも充分できるし、それでゲームをするよりかは読書をする方がよっぽど面白かった。そういえば最近、ネット小説というものもあるらしい。なんでも、紙ではなく直接ネットの世界に小説を投稿するのだそうだ。
「ちょっと調べてみるか、、、」
電子レンジがウーンと音を立てる中、俺は携帯をカチカチと動かした。
「ほぅ、、、なかなか面白そうだな。どれどれ、、、へぇ、一般人はこんなのも書けるのか。」
手当たりしだいに面白そうな小説を読んでいく。しかし時は刻々と過ぎていくのだ。
「はっ!?今何時だ!?」
慌てて時計を見るとすでに6時半を過ぎていた。
「あちゃー、やらかした。ま、しょうがねぇか。」
そう言いながら電子レンジの方を見る。まだ温めていないものは数品あった。
「もうめんどくさい。あったまってんのから先に食べてしまおう。」
ブツブツと愚痴をこぼしながら電子レンジで温めると同時進行で夕食を済ませる。
全て食べ終える頃には時計は7時過ぎを指していた。
「ふぅ、、、食った食った。さてと、、、宿題を進めますか。」
食べ終わった食器をシンクに重ね見水に浸ける。
それから自分の部屋に戻り、夏休みの宿題のワークを始めた。
ある程度終わったら風呂を沸かして入った。親はまだ帰ってこないのである程度の戸締りをすると自分の布団の中に潜り込む。そして、頭の方にあるスタンドをつけ小説を読み始めた。
これも彼の好きな読み方である。寝る前に物語を読み、寝るときに目を閉じながらそっと物語の情景を想像するのだ。うまくいけば物語の内容が夢となって実際に体験できる。これはなかなか面白い事であるが、過去に成功した試しを数えると片手で済んでしまう。だからこそやめられないのかもしれない。
結局その夜の夢の内容は、部屋に蛇が7匹いてずっと読書中の自分を見ていた、だった。
夏休み。それは楽しく長い休みの始まりである、と同時に宿題に追われる毎日を過ごす休みでもある。
ちなみに俺は夏休み前に宿題のワークを仕上げたおかげで3分の2はすでに終わっていた。しかも残りは読書感想文と生物のレポート、それに美術のデッサンとして何か影をつけた絵を描いてくる事だけ。
「しゃ、きたー。俺もうほぼ毎日読書できんじゃん。ラッキー。」
夏休み中には補習と言う名の自習があり、生徒は必ずこなければならない日があった。ちなみにその日はクーラーが効いた教室で高みの見物をしながら小説を読むことに決めていた。
結局、宿題は7月30日には全て終わった。こっから1ヶ月、ほぼ毎日遊べる。小説も読み放題だ。こんなに嬉しいことはない。
俺は部屋でガッツポーズをすると、早速市内の図書館に出かけた。
図書館はもはや常連さんと呼ぶにふさわしくほとんどの店員と顔見知り状態だった。
「おっ、正希君。君なら来ると思っていたよ。どうだね、宿題の方は。」
「いや、もう全部終わりましたよ。夏休み前にちまちまやってましたからね。」
「どおりで夏休み前になってから急に来なくなったと思ったよ。偉いねぇ。それで?今日は何を借りるんだい?」
「そうですね、、、ここら辺のコーナーはほとんど読み終えてしまったので、、、新刊の方に行きます。」
「そうかい。すごいなぁ。小学生とは思えないや。」
「あの、、、一応もう中1なんですけど、、、」
白髪混じりの店員さんは笑いながら作業に戻った。俺は頭をかきながら新刊コーナーに向かう。しかし、新刊本と言ってもニュースに取り上げられるような有名な本はなく、あくまで2〜3週間前にチラッと書店で見たことある本ばかりだ。そもそもこんな小さい図書館が最新の有名な小説を買えるわけがない。
俺は適当に本を選ぶと受付に持って行った。
「あら、王君。久しぶりね。元気してた?」
「おかげさまでこの通りですよ。」
俺は笑顔で受付のおば、、、おねぇさんと話し合う。多少顔にシワが入っているものの、どこか若々しい印象を受けるのがこの人の謎だ。
「にしても、王君はもうここに来て結構読んだわよねぇ。もう、この図書館中の本、全部読んじゃったんじゃないの?うちは小さいから。」
「まさか。まだ、半分しか読んでませんよ。ちょうどこの間、あ〜た行の作者さんの小説をコンプリートしたぐらいですし、、、」
「もうそんなに読んじゃったの?小さいと言ってもうちは図書館よ。中学生ならもっと外で遊びなさいよ。若いうちにいろんなことしときな。そうでないとおばちゃんみたいになっちゃうわよ。」
「はいはい。注意しときますよ。でもね、こう見えて体育の成績5だったんですよ。だから運動面ではご心配なく。」
「あらあら、下がらないか心配ね。」
相変わらずこの人は陽気だ。近所の頼れるおば、、、おねぇさんのような人だ。
太陽がジリジリと照りつける中、俺は乗ってきた自転車にまたがりペダルを漕ぎだした。前かごに借りた本を入れて、錆びついたチェーンをペダルで思いっきり回す。風が自分の耳元をすり抜ける感覚が気持ちいい。
「外に出て遊ぶ、、、か。」
さっき言われた言葉が急に頭によぎる。たしかに自分はあまり外に出ない。たまには外に出るのもいいかもしれないな。そう思っていると二階建ての我が家が見えてきた。俺は自転車から降りると鍵を開け部屋に入る。
借りてきた本を机の上に置くとリビングに向かった。そして、充電していた携帯を取り出しメールを打つ。
「今度の予定の詳細。行くのならば早めに教えて。」
なるべく短文にするとメールの送信ボタンを押す。
返事はその日の夕方になった。内容はこうだった。
「8月の3日。八頭山に夜7時集合!そこでナイトウォークするぞ!」
ナイトウォークか。初めてすることの興奮か思わず我が笑ってしまった。
その日は晩御飯と風呂以外はずっと小説を読んでいた。親はたまには外に出たら、と言った。だから俺は今度友達とどっか出かけるよ、と言い返した。
その日の夜いつもみたいに寝る前の読書。今夜こそはときっちり情景を思い浮かべながら寝た。
だが、そんな努力もむなしく結局夢はトンチンカンな内容だった。
部屋に7匹の蛇に懐かれる夢。まるで、兄弟のように懐いてくる蛇はどこか他人の気がしなかった。そんな不思議な感覚。蛇と人間なのに。決定的に種族が違うのに。
そして、8月3日の夜。俺は親に友達と会ってくる、9時には戻れると言って玄関を開けた。親は特に何も言わずただ、いってらっしゃい、気をつけてね、とだけ言った。自転車の鍵を開けペダルを漕ぎだす。八頭山は結構大きな山で町のシンボルと言っても過言ではほどだ。それに頂上付近には寺院があり、とある神様が祀られているとのことらしい。詳しいことは知らないが。
そんなこんなで近くの駐輪場に自転車を止める。あいつらは先に来ていて俺をせかすように呼んだ。
「おーい!早く来いよ!」
俺はちょっとだけ駆け足でそいつらのところへ向かった。
そして、これからの予定を話し合う。
「どうすんのこっから。俺、何も聞いてないんだけど。」
「へっへっへっ、、、なぁ、お前知ってるか?この山にはある神様の祠があるってことをさ。」
「そんなの誰でも知ってるよ。迷信だろ?どーせ。」
「それをちょっと確かめに行こうぜ。それが本当かどうかをさぁ。」
「でも具体的に何をするんだ?」
「そんなの後から決めればいいさ。行くぞ!」
そう叫ぶと他の3人を連れてさっさと行ってしまった。俺はその後を駆け足でつけた。
徒歩約30分だろうか。息が全員上がったくらいにその寺院にたどり着いた。
「着いたぜ、、、ここに何かがあるんだよな。」
「でも本当に何があるんだよ。俺知らねーぜ?」
「まーまー、何も無かったらそれでいいさ。神様のミイラとかあったら俺たち超有名人だぜ!?」
「んなこたねぇだろ。やるんだったらさっさとやって帰りてえ。」
他の4人ははしゃぎながら寺院の周りを探す。一応俺も探してはみたものの特に何も無かった。ただ、古い祠に被ったほこりや落ち葉をさっさと払って道の脇に置いた。いわゆる掃除ってやつだ。思えばこの寺院はろくに手間がかかっていない。管理人はいないのか、それともこんな山奥に掃除に来ることがないのだろうか。
どうせこんな夜に誰かが来るはずもない。俺はそっと本堂の戸を開けて中に入った。
「お邪魔します、、、」
本堂の中は変に涼しくて一瞬鳥肌が立った。歩くとギシギシと床が軋む。暗くてよく分からないが壁には何か絵が描かれているようだ。
俺は持ってきた小型のライトを持ち出しスイッチを入れた。すると壁の絵は鮮明に自分の視界に入ってきた。
「これ、、、なんだ?8つの頭を持った蛇、、、?
それが暴れてる、、、?」
そこには火を吐き、大地をのたうつ8つの頭を持った恐ろしい大蛇がいた。
「たしかこれって、、、八岐大蛇?なんでこんなところに、、、?」
キョロキョロと辺りを見回す。向かい側の壁にはその大蛇の首を切り落とす1人の人間がいた。
「歴史でやったな、、、たしかヤマトタケルノミコトだっけ?それが、、、どうしたんだ?」
ヤマトタケルノミコトと思われる人物は大蛇の首を切り落とすとその1つ1つを酒樽に入れて厳重に蓋をした。そしてそれらを霊媒師が霊力で1つのツボに纏めて封印している。
「こんな伝説があったのか、、、!、、、あれ?でもこれって、、、?」
しかし彼は1つの違和感に気づいた。それはツボに1つに纏められる前の酒樽が全部で7つしかないことに。
「八岐大蛇の頭は8つだろ?なんで7つなんだ?」
彼はその謎を解くべく壁の絵を探す。するとある絵にはその答えがあった。
「あぁ、1匹だけ、、、首が切り落とされてない。こいつだけ。なんでだろ?」
そこには体中から血を吹き出しながらも、失った首を探すようにのたうつ大蛇がいた。その絵は昔ながらの画風にしては妙にリアルだった。特に紅い血の表現が生々しい。
まるで八岐大蛇の怒りを表しているようで、、、
すると本堂の奥にとあるツボがあった。絵のツボとそっくりの形、色。
「これ、、、持ち帰ったら相当なもんなんじゃ、、、」
期待と高揚感。ちょうど両手で抱え込むような体勢でツボに触る。歴史を感じるような重みと感触が両手を伝わった。ツボは大きさの割に結構重くて運び出すのに苦労した。そして数分間かけて寺院からツボを運び出す。
ツボには厳重に封がしており紙で何重にも縛ってあった。
「ん、、、何か書いてある。暗いしかすれてるしほこりかぶってるし、読めないな。おーい!何か見つかったぞ!」
一緒に来た奴らを呼ぶが返事がない。いつものやかましい声もしない。
「あいつら、、、俺を置いて帰りやがった!」
自分の置かれた状況に驚愕し怒りがこみ上げて来た。勝手に誘っておいて飽きたら先に帰るなど、図々しいのにもほどがある。
と、同時に不安も込み上げて来た。夏とはいえもう日はとうにくれている。さらに山の奥となればなおさら恐怖を感じる。夜の山がいかに危険かは小説を読んで知っている。それがかえって彼を不安にした。
「帰ろ、、、」
彼は山道を走って帰ろうと後ろを振り向いた。
その瞬間、後ろで何かゴトンと重たいものがぶつかる音がした。
ハッと振り返ってもツボしかない。
「なんなんだよ、、、もう。」
ツボがひとりでに動くわけがないと、恐怖する自分に言い聞かせた。
「まさか、、、な、、、」
念のため。ツボを持ち上げてみる。重さはさっきと変わらない。
ツボの口を持って揺すってみる。しかし、なんの音もせず、ただツボの底が地面にこすれる音がするだけだった。
「ひょっとしてもう空とか?こんな山奥にあるほどだし、、、中身はもう盗まれた、、、のか?」
そうなるとツボの中が知りたくなった。すると、長くなった爪を見ていいことを思いついた。
彼は長くなった爪をツボの口縄に引っ掛け、解こうとした。口縄らかなり厳重に巻かれているのでカリカリと引っ掻いてもなかなか解けない。だが、それが彼をこの場に留まらせる原因となった。
しばらくの間引っ掻いていると、結び目の間にうまく爪が入る。そこからグリグリと指を突っ込み強引に結び目を解いた。指に縄がすれて血が出てしまったが、今はそんなことは関係ない。
痛みを我慢しながら大急ぎで縄を解いた。
そしてほこりをかぶった紙を何枚も剥がす。
そしていよいよ最後の紙を剥がした。
するとそこには木で蓋がしてあり、1枚の手紙のようなものがあった。
「なんだこりゃ、相当古い言葉だな、、、うーん、、、古文とか漢文とかそういうレベルじゃねぇなぁ。象形文字か、、、?これ、、、」
訳の分からない文字が書かれている手紙をポイっと捨て木製の蓋をそっととる。
もし、彼にこの言葉が理解できたら、決して蓋を開けることはなかっただろう。
そうでなくとも、常識として弥生〜古墳時代に紙というものは存在しないことに気づいたであろう。
封印に使われていたものはただの紙ではない。
それは強大な力を閉じ込めるための神物道具の1つ。
過去に世界の破滅をもたらした『邪悪』を永遠に封印するために、、、過去の人間は神の力を借りた。
古い言葉を現代語訳すれば、こうあった。
『汝、決してこの封印を解くことなかれ。仮に神力を用いて開ければ、世界は炎で埋めつくされるであろう。
この封印を解くものは神ならざるもののみであらん。世界に災厄をもたらすもの、八岐大蛇を二度と地上に蘇らせては、この世とあの世は滅っするなり。』
ツボの中から、ドシュッと音を立てて何かが飛び出してきた。
「あ、、、あぁ、、、」
俺は何もできなかった。ただ、目の前に現れた『常識では決して理解できないもの』をじっと見ていた。
7つの頭を持った大蛇。
「嘘、、、だろ、、、?」
それは天に昇るほどの大きさで、自分の視界をそれの体で埋め尽くした。
完全に言葉を失った。こんな時に出る言葉などなかった。
「汝よ、、、その身、、、その魂、、、我が体に捧げよ、、、そして世界に災厄を、、、破滅をもたらすのだ、、、」
目の前の怪物は日本語でゆっくりと話し出した。でも俺の頭はパニック状態で何も考えられなかった。
「手加減はせぬ、、、抗おうとも無駄だということをあらかじめ伝えておこう、、、」
そいつは鎌首をゆっくりと俺に近づけてきた。逃げることもできなかった。
そいつの生暖かい息が顔に当たる。俺はその生臭い吐息を吸ってしまった。吐き気がした。しかし、その場に吐き戻すこともできなかった。
「もらうぞ!汝の体!その肉体も魂も全て!」
そいつは鎌首をぐっと俺の体に突きつけた。
「ウゥっ!グァァァアアアアアア、、、!!」
俺の体にそいつが入ってきた。それ以外に表す言葉が見つからなかった。
そいつは俺の体を蝕み、侵食した。
「グァァ!アアアア!!!!やめろぉぉぉ!!!」
抵抗さえも無意味に等しかった。目を見開き、必死に助けを乞うても聞き入れてくれるような存在ではなかった。
「ウガァァァア!!!アグァァァ!!!?」
最後にそいつの尻尾が見えた。自分の体の中に完全にそいつは潜り込んだ。
「がァァァァァァ、、、!頭が、、、!頭が、、、痛い!!」
体内をのたうつように暴れまわるそいつ。完全に体の自由を奪われながらも、全身で抗った。
だが、その努力もむなしく俺はその場に倒れこんだ。
「ぐ、、、ウゥ、、、」
俺の意識は完全に消えた。いや、奪われたと言った方が正しいのかもしれない。
続くよ。でも他の小説もあるからちょっと遅くなるかも。つか、プライベートが忙し過ぎるわ。




