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やっと本編始まるよ  作者: ゆっくりガオウ
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UMAと神ともう1人

そろそろこのシリーズも終盤に近くなってきた、、、かも。

「ネッシー、、、ネッシー、、、」


誰かが私を呼ぶ声がする。でもそれは360度から聞こえてくる。聞いたことのあるような声。でも誰かはイマイチわからない。

それにこの空間は何か妙だ。奥の方はずぅっと暗闇が続いているのに、自分が立っている場所は変に明るい。

地面はあるけど壁はない。地平線の果てがぼやけて天と地の境界線がわからない。

上を見上げても何もない。ただただ灰色の景色が広がっている。

空には雲も太陽も青空もない。

灰色に埋め尽くされた空。終わりのない地の果て。

明らかにここは地球ではなかった。


ではどこだ?


「ネッシー、、、ネッシー、、、」


まだ自分を呼ぶ声がする。いったいどこから呼んでいるのだろう。


とりあえず彼女は歩くことにした。無限に続くこの大地を。誰かがいるかもしれないと、根拠なくただただ歩いた。




「、、、?」


目が覚めた。

何か頭が霞みかがってクラクラする。

喉がヒリヒリする。

頭をぽりぽりと掻いているとあることに気づいた。


「あれ?、、、私、、、それに、ここどこ?」


いつのまにか自分は知らないベットの上で寝ていたのだ。それにいつのまにか本来の姿から人間の姿になっている。

確か自分はあの時に死んでしまった、、、はずだ。



「、、、?」


寝ぼけた頭でキョロキョロと辺りを見回す。


その途端、びっくりして目が急に覚めた。


「あんた誰!?」


ベットの横に1人の人間がいた。椅子に腰掛けうずくまるようにして眠る男性が。


「、、、ん?あぁ、起きたのか。おはよ。」

「だ、、、誰?それに、、、ここはどこなの?」

「あー、うん。順を追って話すから今は休みな。喉の傷、まだ治ってないんだから。」

「えっ、あっ!グッ!」


言われた途端急に喉が痛くなった。手で押さえると皮膚とは違う感触が手のひらを通して伝わった。その感触の招待は自分の首に巻きつけられている包帯だった。


「大丈夫か?まだ完全には治りきってないからな。無理するなよ。」

「は、はい、、、でも、ありがとうこざいます。助けてくれて。」

「礼には及ばんよ。たまたま通りかかっただけだし。」

「ところで、あなたのお名前は?私の名前は『世一 ネス子』です。」

「知ってるよ。UMAのネッシーだってことも。」


「、、、え?」


彼は改まって答えた。


「俺の名前は『王 正希』 行き場を無くしたものの味方って感じかな。」





一方その頃、ボロアパートの住人たちはオロオロと慌てていた。


「ネッシーのやつ、、、勝手に出て行きやがって!」

「大丈夫かなぁ、、、音信不通だし、どこに行ったかもわからないし、、、」


ツチノコは1週間近く帰ってこないネッシーに腹を立てていた。それとは真逆にネッシーの行方を心配するゾンビ。あまりの取り乱しように目を片方落としてしまった。


「関係あるかどうかはわからないけど、、、これ見て。」

「ん?なにこれ。」


モスマンが持ってきた新聞の一面を見るドラキュラ。この日は曇りなので昼からでも活動できるようだ。そんなドラキュラが見つけた記事にはこうあった。


『ネス湖付近の工場建設。環境汚染問題か。』


「まさかこのニュースを、、、」

「ドラキュラ。今はまだわからないんだ。とりあえず今は帰りを待とうよ。」


ツチノコが心配するみんなを怒り口調でなだめた。


「ちょっとこれ見て、、、」


新聞を読んでいたドラキュラがとある記事を指差した。

それは小さな記事だったがそこにいる全員の視線を1つに集中させた。



『インド洋沖で謎の巨大生物?貿易船の船体負傷』


そこには船体になにかが当たったような跡と、海面に揺れる謎の赤い液体の写真があった。



「まさか、、、」


ツチノコはハッと新聞から目を離したかと思えば、自慢の脚力でアパートを飛び出した。

数秒遅れて他の者たちも後に続く。



降りしきる雨の中、ツチノコはただひたすらあてもなく走った。



その時、頭上の雲の切れ目がパッと光った。



それと同時にバァンという轟きが辺りに響いた。思わず足を止め身を伏せる。



その天からの火とともにある者が降りて来た。



「あなたが土田ひとみさん?」


耳も塞ぎたくなるほどの雷鳴。

目も塞ぎたくなるほどの雷光。



それらの衝撃は声の主の姿を捉えるのに相当な時間を掛けさせた。



耳鳴りがする中、ゆっくりと声がした方向を向く。


そこには全身白づくめで羽のついた帽子を被った少女が立っていた。


「はじめまして。私の名前は羽田美月。ちょっとだけお時間いい?」

「なによあんた、、、私今急いでんのよ。そこどいて。」


そう言って少女の横を通っていこうとした。

でもそれはできなかった。




ドザァァァァァァァア!



突然、雨足が強くなった。いや、強くなったとかそんなレベルじゃないほどに。



前が見えない。音が雨音以外聞こえない。身体中に雨が叩きつけられてる。


痛い、痛い!


「なっ、、、なによ、、、!これ!」


まるで辺り一面に降っていた雨が自分だけに集中して降っているようだった。


なんてことを考えることもできなかった。


もはや雨が自分を地に叩きつけようとしている。それはさせまいと私は地面に四つん這いになった。そうすると雨は自分の背中のみに集中する。


「ウッ!グッ!」


雨の強さが自分の顔を地面にキスさせようとした。


そしていよいよ地面に唇がつく。



その時だった。



「なにしてんの?かい、、、じゃなかった美月。」



誰かの声が聞こえた途端、ヒョイと自分の体が宙に浮く。


腹になにかが巻きついて自分の体を持ち上げた。



「おや、ななしさん。ちょうどよかった。」


「ななしさんって、、、今は『小林 あおい』じゃないの?」


「あぁ、そのことなんだけどさ。ちょっと予定変更が、、、」



「なんでもいいから私を下ろしなさい!!」


化け物の会話の間を縫ってツチノコが文句を言った。ななしさんの尻尾に巻きつかれながらも、キーキーと声を荒らげている。


「ごめんごめん。忘れてた。」


ななしさんがツチノコに平謝りする。そして尻尾を緩めツチノコを離した。


「わっ!ちょ!ここで離すなぁ!」


ドッシーン!


「いったぁぁぁい!」


見事に尻から地面に落ちたツチノコ。フラフラと立ち上がるとヒリヒリと痛む尻をさすった。


そんな彼女の姿を横目に会話の続きをする2人。


「それで、予定変更ってなに?」

「あぁ、さっきボスから連絡が来たんだけどね、UMAの調査はもういいってさ。」

「それってどういうこと?あと、多分だけどこの子って、、、」

「そう、この子はUMAの1匹、ツチノコ。たまたま通りかかったらすれ違ったって感じ。あと、ボス曰くUMAの1匹を保護したってさ。」

「それについては?」

「さぁ?詳しくは聞かされてない。ただ、その子はこの世界の住人だからボスが直々にこっちに来るって言ってた。」

「ふーん。」


2人の何気ない会話。それをツチノコはまだ痛む尻を抑えながら彼らの話を聞いていた。

そして、会話に出てきた『この世界のUMA』というフレーズを彼女は聞き逃さなかった。


「ちょっと待ってください!」


「ん?どったの?」


「その、、、貴方達が保護したっていうUMAについて詳しく教えてくれませんか!?」






ところ変わって別次元の世界


「すみません本当に。傷まで直してくれて。」

「あー、いや実はその首を直したのは俺じゃないんだ。」

「え?」


彼は多少戸惑うかのように答えた。


「よかったら呼ぼうか?まだ扉の向こうにいるみたいだし。」

「あっ、いや別に。そんな、、、」


別にお構いなく。と答えようとしたその時、部屋の扉が音もなくスゥっと開いた。


「おぉ、お前もこっち来いよ。患者、目ぇ覚ましたみたいだからな。」

「えっ?そこに誰もいな、、、」


彼の目線の先には誰もいなかった、、、はずだった。


急に空間が歪み、ぼやけ、1人の人間を作り出した。


「えっ!?ウワッなに!?おばけ!?」


「ちょっと、、、違うかな。おい、自己紹介してやれ。」


そうすると現れた人間は丁寧に頭を下げ自己紹介を始めた。


「どうもはじめまして。死神の『松田穏雅』と申します。以後、お見知り置きを。」

「えっあぁどうも、こちらこそ。」


差し出された手を慌てて握る。でも握った瞬間、ふと違和感を覚えた。


(冷たい、、、)


そう。その青年の手はひどく冷たいのだ。まるで、アパートに一緒に暮らしているゾンビの手のように。


それがネッシーの頭の中を冷静にさせもう一つの疑問を浮かばせた。


「、、、ん?死神?今、貴方、死神って言いましたか?」

「はい。それが何か問題でも?」

「ってことはやっぱり私死んだんですか!?まさか!?私の魂を奪いに!?」


「そんなわけがないでしょう。自分のこめかみの後ろ辺りを触って見てください。ちゃんと脈があるでしょう。それに体温だって。」


そう言われて自分のこめかみの後ろを触ってみると、確かにドクンドクンと脈が打っている。それにちゃんと体温もある。


「じゃ、じゃぁ!貴方はいったい?死神だったら魂とか奪い取るんじゃぁないんですか!?」


「やっぱり誤解されるよ、、、正希さん、、、ちゃんとこの子に説明したんですか?」

「いや、全然。」


彼はハァとため息をつくとめんどくさそうに話し始めた。


「あのですねぇ、死神だからってなにもすぐに魂なんか奪いませんよ。俺たち死神は、あくまで死んでいるのにあの世に行かない魂をきっちり送る仕事をしているんですから。あんまり警戒しなくても大丈夫ですよ。

そもそも、死神の鉄則としては『生きている生物の魂を決してあの世に送ってはならない』というのがあるんですから。」


私は長々とその話を聞いていた。でも、やはり死神の怖いイメージは拭いきれない。


「本当にそうなんですか?」


私は疑心暗鬼だった。いくら私の命を救ってくれたとしても死神と言うならばやはり嫌なイメージしか湧かない。


「うーん、、、やっぱり死神はそういうイメージを持たれちゃうよねぇ。ま、いいや。それを覚悟してやっている仕事ですから。正希さん。お邪魔しました。」

「おっ?穏雅。もう行っちまうのか?」

「はい。嫁と娘が待ってるんで、、、俺も暇じゃないんですよ。」

「そうか。17歳なのに大変だな。」

「大丈夫ですよ。俺の帰りを待っている人がいるんでね。」


そう言って死神はそそくさに部屋から出て行った。その後ろ姿を私は黙って見送った。

彼が最後に言い残した言葉が耳に残って離れない。


(自分の帰りを、、、待っている人がいる、、、)


「あーあ、行っちまった。もう少しゆっくりしていけばいいのによ。

、、、ネッシー。お前の気持ちが分からんでもないが少なくともあいつはいい奴だぞ?俺が保証する。」


「、、、!っで、でも。怖いじゃないですか、、、死神なんて、、、」


答えた時に少しだけ後悔した。言われてみれば彼だって私の命の恩人だ。

それなのに私は彼を勝手に怖い存在だと決めつけて、敬遠してしまった。


「一応、あいつはもともと人間だぞ?俺もそうだけど。」

「、、、え?」


彼は少し寂しげな表情で語り始めた。


「あいつは自分を守ってくれる存在を守るためにどんな力も手に入れた。俺はあくまで偶然だが、ある日強大な力を持ってしまった。力を手にした目的、理由は違うけれど、俺もあいつも何かを守るために必死に努力していることは変わらない。

もしもお前が俺に対して恐怖心を持っているのだとしたら、それをほんの少しでも軽くしたい。」


「、、、そう。」


私はちょっぴり寂しくなった。彼は嫁と娘がいると言ってその場をそそくさに離れた。きっと自分を支えてくれる人を守るために。

そう考えるとせめて彼に一言謝りたくなった。

あの時、勝手に怖いと言って敬遠してしまってごめんなさい、と。


「俺の過去、、、長くなると思うけど、いいか?」

「はい、、、」


まずは自分のことよりも他人のことを少しでも知ろう。

今はこの人の話を聞いてみよう。


そう思った。

次回の投稿もお楽しみにー!


ネタはある程度固まってるから投稿は早い、、、と思う。

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