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やっと本編始まるよ  作者: ゆっくりガオウ
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残暑 申し上げます

お待たせしましたーーーー!

ジリジリと地面を照りつける太陽。

ついこの間までは秋の風が吹いていたものだが今はその面影はない。残暑の影響でミンミン蝉は鳴いていないものの、だるくなるほどの暑さだ。


もちろん化け物たちも例外ではない。


「美月〜〜あづいよ〜〜。」

「だったらその長い髪を切るんだな。私だって暑いんだ。」

「えーめんどくさ。美月だってそんなに長い髪してるくせにぃ。」

「私は羽や髪をなるべく束ねて風通しを良くしてるからね。嫌なら切ってやろうか?」

「いや、いい。伸ばすのも面倒だし。そういえば美月って天候を操れたよね?ちょっと涼しくしてよ!」


安いホテルの中で話し合う2人の化け物。

どうやら美月は天候を操れる能力を持っているようです。見た目は大人、精神年齢は子供のななしさん、もといあおいは暑さを抑えてくれるよう頼んだ。


「あのねななしさん。私はあくまで雷雲を集めて雷を作れるっていうわけで、天候を操れるわけではないの。わかった?」

「むー。でも雨くらいなら降らせられるでしょ?」

「うん。」

「じゃあ、雨を降らせてよ!涼しくなるようなとびっきりのやつをさ!」

「、、、いいよ。」


そう言うと美月は部屋の扉を開けそっと出て行った。その後ろ姿を笑顔で見送るあおい。その表情はこれから自分にとって起こる幸福に喜びに満ち溢れていた。



ひたひたと街中を歩く美月。ギラギラと輝く太陽は人だろうと化け物だろうと平等に照らす。



そんな空を彼女は睨んだ。


「さすがこの暑さだな、、、いい積乱雲があちこちにある、、、」


彼女の瞳はじわじわと黒く深く染まり人間離れしていった。そして目をスゥっと細める。


そのままぼうっと空を見つめ続ける。

すると、どんどんと雲が集まって大きな積乱雲を作っていった。


そして街がスッポリと影に包まれたとき、、、



ぽっぽっぽっと小雨が地面に小さなシミをつくったかと思った次の瞬間には、ドザァー!っと豪雨が降り注いだ。



キャアキャアと騒ぐ町民。その姿を漆黒に染まった眼差しで見つめる美月。


自分のすべきことは終わったとくるりと回ってホテルに引き返した。


「、、、あ!」

ふと目に止まったもの。


それは自分たちが調べるUMAたちだった。

「メモ帳忘れた、、、」

うっかりうっかり。しばらく考えた後、まいいかと雨の中を引き返した。


「あーもー!なんで急に降って来るの!降るなんて言ってなかったのにぃ!」

「まーまー、天気予報もたまには外れるでしょ。」

「いつ止むんだろう?」

たまたま買い物に来ていたツチノコとネッシー、モスマン。ネッシーは多少涼しくなったことで嬉しくなったようだが、他の2人はうんざりしていた。しばらくの雨宿りでその日の彼女らの予定が大きく変わったのは言うまでもない。



「ワタシハカミナリガスキ


カミナリガフレバアメガフル


ダカラワタシハアメガスキ」


ふんふんとご機嫌で雨の中を進む美月。口からはリズム感壊滅状態の歌さえも流れ出ている。

濡れる帽子や髪もそのままに。


「おや?」

またしても目になにか止まった。それは小さなダンボール、、、の中にいる小さな生き物だった。


「ひぃ、、、ふぅ、、、みぃ、、、」

その場にかがんで数を数える。どうやら子猫が6匹捨てられているようだ。6匹とも雨に濡れながらもニャァニャァと声を上げている。


そのまま見ていると背後に気配を感じて振り向く。


「コラァ!こんなとこにネコを捨てるんじゃない!」

「、、、。」

それはレトロな雰囲気を醸し出す年半ばなおっさんだった。彼はガミガミと彼女を叱りつけたが、彼女には馬耳東風、全く聞いていなかった。

そもそも彼女は知っていた。

この手の相手は無視するに限ると。

酒臭いおっさんの話など聞いていても拉致があかない。

だから、

「あー、分かりましたよ。全部私が後始末します。」

そう言ってヒョイとダンボールを持ち上げる。そのまま雨の中に消えて言った。やれやれと彼女の後ろ姿を睨むおっさん。

彼女もその目を凍りつく眼差しでそっと見つめ返した。

しかし愚かな人間はその瞳に気づかない。

いや、気づかない方が良かったのかもしれない。


「ちょうど小腹もすいたしね。」




そして闇の中


ニャァニャァと声を荒らげる猫の声。


グジュグジュと何かを貪る音。




ブチィ!


ニ"ャア!


「うるさいなぁ。もっと黙って食われろよ。」


彼女の口はベットリと赤く濡れた。

色白な手は赤と小動物の毛でグチャグチャになった。

白がベースの洋服には赤いシミがいくつかついて悲惨さを感じさせていた。


「うーん、汚れちゃったな。」


一言ボソリと呟くとフッと力を抜く。

するとパッと服も帽子も無くなり全裸になる。

服の正体は彼女の頭から生えていた羽だった。

その羽は彼女のくるぶしまで伸びていて純白に光っていた。


また雨が強くなる。


その天からの贈り物は彼女の手や顔を清めた。


そして全てを洗い流すと彼女は快楽に満ちた表情で、純粋な笑みをニッコリと浮かべた。

続くよ

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