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やっと本編始まるよ  作者: ゆっくりガオウ
29/31

ヘッヘッヘ……今日はとびっきりの落雷打っちゃうぞ!

こんなにブラックなもの描いたの久しぶり。ちょいとグロ注意かも。

彼女が世界中に天変地異を起こしてから人間たちの生活はガラリと変わった。太陽の光は遮られ、毎日のように雨が降る。さらにその雨雲は雷を伴い、辺り一面に降り注ぐ。

地上の建物のほとんどは雷が破壊し、大川なった雨が次々と押し出していく。さらに気温はガクッと下がり、夏だというのに長袖で暮らさなくてはなかった。そもそも外に出ることはないのだが。

まさに天そのものが落ちてきたというべきか。海も川も道路も街も陸も殆どが雨の中に沈んでしまった。

世界を天が飲み込むまで1週間とかからなかった。その急な世界の変わりようにに人間たちは……


何もできなかった。こんなことなど考えもしなかったからだ。世界のほとんどが水の中に沈んでしまうとは。そんな中、各国は太平洋にそびえ立つ奇妙な塔の調査を行っていた。その塔は周りが白き羽で包まれ、いかなる攻撃も炎も一切通さなかった。傷1つつかずに。しかもその塔からはかなり強力な電波を発信していることもわかった。だが、いったい誰が、この塔の中に何がいるのかまではわからなかった。

唯一わかったことはこの塔は生きているということぐらいだった。まさに摩訶不思議、理解不能、なにが目的で、なんのためにここに立っているのか、人類には到底理解できなかった。しかし世界中で起きている異変に関係していることは間違いなさそうだった。

そんな時だった。世界はとうとうその生物とコンタクトを取ろうとしたのだ。もしもこの生物に知性があるとしたら、もしもこの生物が世界中で起きている異変に関係していたもしたら、もしもこの生物に自分たちの言葉が通じたら。この異変を終わらせるために、彼らは様々な言語を電波にして送った。日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語……とにかく使われていふ言語は全て試した。



しかし、雨が止むことはなかった。世界中の学者たちは落胆し、膝を地面に落とした。自分たちの声が届かなかったからではない。ちゃんと電波は受信され、さらに電波となって返ってきた。

その返ってきた言葉が彼らの絶望を生んだのだ。


「やだ」


たった2文字、シンプルな言葉だった。誰でもわかる拒絶の言葉だった。まさに駄々をこねる子供のような言葉。だが、これでわかったことが1つ。この生物が雨を降らしていることだ。そして自分たちの言葉を理解でき、それを電波として発信できるという機能を備えているということ。果たしてそんな生物が存在するのかという疑問も生まれたが、それを気にしている暇もなかった。すぐに言葉を電波として送り、なぜこんなことをするのか、目的はなにか、どうしたら止めてくれるのか、と問うた。

だが……


「理由? それは君たちがなんの苦しみもなく死ねるためだよ。目的? これが終わったらボスになでなでしてもらえるんだぁ! ヘッヘッヘッ、羨ましいだろ。止め方? もう無理だよ。どーせ、私が手を下さなくても君たち死ぬんだもん。だーかーらー……」



「諦めて。大丈夫、みんな楽に殺してあげるから。魂もきっちりあの世に送ってあげるから。」


と返ってきた。彼らは落胆し、膝を地面に落とした。もはやこの生物は手に負えない。おそらくなにを言っても無駄だろう。根本的に価値観が違いすぎるのだから。この生物に雨を止ませることは不可能だ。


ならば、物理的に止めればいい。この生物を殺せば、少なくとも雨は止む。今は世界中でわずかに生き残っている人間を助けることが大切だ。今ここに正義を持ってこの生物を殺す。全てはこの世界を救うため。

人間たちはいよいよ反撃を開始した。そびえ立つ塔は海中を通して立っているので、空中と水中で攻めれば落とせると思っていた。世界中の武器を使えばできないことはないと、彼らはそう信じていた。

雨の中を数々の戦闘機が飛び、海には海面を埋め尽くすほどの船と、それ以上の潜水艦が塔の周りを取り囲んでいた。今、世界中の戦力が結集し、この生物を殺そうとしていた。海中にはおびただしいほどの水中地雷に、睨みつけるように船の砲身は塔を向いている。さらに上空には、数々の爆弾とミサイルを積んだ戦闘機が待機している。



そしていよいよ、人類の反撃が始まった。

最初に戦艦がありったけの砲弾を撃ち込んだ。その砲弾が当たると同時にもうもうと煙が立ち上がっては、新たな煙がその煙を吹き飛ばした。辺りに響く爆音。雨の中だかであろうか、その音は遥か先のわずかに残った陸地まで届いた。

そして砲撃を終えた戦艦は退避し、次に水中地雷がその威力を発揮した。その威力はその生物と同じくらいの水柱を作り、わずかな時間ではあるが雨足を強くした。

せめて傷1つでもついてくれれば、そこに人類が持つ最大火力のミサイルを撃ち込んでやる。いや、ここまでの攻撃を受けて無事でいられるはずがない。人類が総力を決すればできんことなどない。

彼らは勝利を確信していた。この武力は一歩間違えればこの星レベルで災害が出るほどのものだったのだから。きっと倒したに違いないと。そう信じていた。

そして、彼らはトドメのミサイルを撃ち込んだ。国1つ、簡単に殲滅できるほどのミサイルの雨を降らせた。先ほどの地雷や砲撃など比べ物にならないほどの、爆撃音と爆発が辺りに巻き起こった。立ち上る巨大な煙はその生物の完全破壊を意味しているように見えた。それを見て人類は勝利を確信した。やっとこの悪夢が終わる。やっと世界は平和になると、そう信じていた。


しかし……


「今のなんだろ? ふぁあ〜あ……目覚ましにしては軽いなぁ。ん? なんだ人間たちの攻撃か……」


塔には傷1つなかった。文字通り、一切のほころびもちりひとつなく。さらに、


「うーん……さてと、なにもしなければ楽に殺してあげたのに。ま、抵抗したい気持ちもわかるけどね。それに私に対してここまでしたのも褒めてあげる。なんの恐怖も感じずにね。だから、これはわずかだが心ばかりの尊敬だ。受け取ってね。」


バチンッ!!!!


彼女は軽く羽を動かしただけだった。子供が下敷きで静電気を帯びる遊びをするように。だがそれは、人間たちの脳の働きを全て奪うのに充分すぎる電力を生んだ。もちろん、最も被害を受けたのは……



最前線で戦っていた人間たちだ。全員の意識はそこで途切れた。視界が一瞬にして暗くなり、なにも考えられなくなった。だが変に気持ちいい。今まで感じたことのない快楽。これ以上ない快感、ああ、こんなものがこの世に存在したなんて、もう世界は滅ぶのだから、いっそこのまま……



「おっとっとっ、遺体はちゃんといただくよ。遺族の方には申し訳ないけど。さて、飛行機の動きも止めなきゃな。それッ、バチバチッ!」

中で彼女がそう言うと、塔のてっぺんが花開くように開いた。その中心に彼女の姿があった。羽を花弁と見立て、自分自身は花の雌しべのように。そして彼女はそっと手を天にかざし、雨の中をのたうつ雷を呼びさせた。その稲妻を彼女は自分の手のように操り、飛んでいた戦闘機の操縦を奪った。そして、戦闘機を蜘蛛の糸で絡めとるかのごとく稲妻で動きを封じると、自分の目の前に持って……


ベキッ! メキメキッ……グチッ! バカッ!


小さな手からは想像もつかない怪力で戦闘機の外装を剥がし始めた。鋼鉄の装甲など、彼女の前にはダンボールの塊に過ぎなかった。受けた砲弾や地雷、ミサイルなど、彼女にはハエが自分の周りを飛んでいたくらいのことだった。人類の反撃は彼女にとって、ただの壊れて音が小さくなった目覚まし時計くらいのものだった。そんな彼女にとって全ての装甲を剥がし終えるのは、ジャガイモの皮をむくよりも造作もないことだった。そして、その中には……

「意識というか……魂はもう無いけど体はこっちで美味しくいただくね。いっただっきまーす!」

彼女に挑んだ勇敢な戦士の亡骸がある。しかし彼女にとっては、普通の人間よりもちょっと肉つきのいいただの肉だ。その鎧の如くガッシリとついた筋肉に、彼女はガブリと噛み付いた。まずは喉から肉を噛み千切っていく。普段はここから食べようと決めているわけでは無いが、今日はコリコリと弾力のある喉仏から食べたい気分だったからだ。その喉から血が出過ぎない程度に、周りを血で汚さないように、丁寧に丁寧に喉を引き裂く。それでも多少は血が出てしまう。むしろ体に血が通っていないところなど相当限定される。そんな時は飲む。ゴクゴクと喉を鳴らしながら噛み千切ると同時に、湧き出る血を飲み込む。


グググ……ブチンッ! ブシューー……


「あっ、失敗ナップル。仕方がない。飲めなかったものはそのままにしておこう。」

しかし彼女はそこまで器用ではなかった。少々深く噛み過ぎてしまい、そこから血がドクドクと吹き出した。その血で彼女の小さく幼い顔は赤くベットリと汚れてしまった。しかしそんなことなど一切気にせず彼女は肉を食らうことを止めなかった。ついに喉を食べ終えた彼女は、今度は内臓がたっぷりと詰まった腹の方にその口を伸ばした。内臓の構造はまあまあ複雑で喉以上に血が通っている。柔らかく食べやすく美味い肉ではあるのだが。だがそれもしょうがない。彼女は爪を立てスッと腹を裂く。するとそれだけで血が吹き出してくる。これから食べるところを赤く赤く染めていく。だから素早く手早く、肉はなるべく頬張って、血もなるべく飲んで、少しでも汚れないように。


バシュッ! グジュグジュ、ブチブチッ、ビチャッ! グググ……パキッ、グチャッ


「あちゃ〜、汚れちゃった。んもぅベタベタ……」

とは言ったものの、彼女が丁寧に食べれられるわけがなく、顔は血でいっぱいになってしまった。

「あはん……でも美味しいよ。やっぱり人肉はこうでなくちゃあ。」

しかし今は、血が体に付く不快感よりもこんなに美味な肉を食べれる方が勝っていた。


ガジュルッ、グビッ、ズルル……クチャクチャ……


彼女は肉という肉を喰らい、内臓を千切っては喉を通し、血が吹き出れば飲めるだけ飲んだ。そしてとうとう彼女は人を1人、食べきった。その顔は血で隠されていても純粋な笑みを浮かべているのがわかるくらい、満足感で満ちていた。しかしそれは量に満足したわけではない。あくまで味に満足しただけだ。そしてそれはさらに彼女の食欲を増進させ、さらなる快楽があることを彼女に教えた。

「ふぅ、あと何百人いるかな? ふふっ、楽しみ。安心してね、1人も残さず食べるからね。君らの命を無駄にはしないから。」


それから1時間とかからずに、辺りは血の海になった。いや、鉄の塊から滴り落ちる血が海を侵食していると言った方が正しいだろう。だが最も血の海に沈んでいるのは、

「けふっ、やっぱ200人くらい食べるとなると結構汚れるなぁ。ま、美味しかったしいっか!」

やはりそれを平らげた彼女であろう。そんな彼女に雨は強く降り注いだ。まるで彼女についた穢れを洗い流すかのように。彼女の罪と罰も全て浄化していくように。

雨はなおも降り注ぐ。止まることをいよいよ知らず、大地を削り、飲み込み、無に帰すように。その目となるはたった200歳の少女。月面からの使者。能力は天候を操ること。どこまでも純粋で、無垢で、残酷な少女。

「さーてと、次はこっちから電波を発信しなきゃ。今の世界は便利だねー、スマホっていう手っ取り早いものがあるんだから。」

そう言いながら彼女はクイッと顔を上げ、目を凝らした。そこには何もないようだが、彼女には何かが見えていた。その何かを感じ取った彼女はニヤッと笑うと、その何かの波にそっと自分の手をかざした。


パチッ……


彼女は自分の電気を空気中に流した。『電波』という世界中にありふれた大海の中に。

「これでよし。あとは私の電気に触れたものは、そのまま私の意のままになる。スマホとかそういう電波を受信するものとかなら、それに触っているだけで感染する。今の世界にはそーいうのがたっくさんあるからなぁ。ほんっと楽で助かるわー。」

彼女はじわじわと自分の電波を発信していった。スマホなどの電気を受信する物体が多く存在するこのご時世に、彼女の電波を完全に防ぐことなどできるはずもなかった。彼女の電波は感染型ウイルスよりも早く世界中に伝染し、多くの人間の思考回路を奪った。まるでコンピュータのメモリーディスクをそっと引き抜き、新たなディスクを入れるかのように。古い情報の上から新しい情報をかぶせるように。彼女の電波は人間から思考と知性を奪った。そして……


「よーし、これでみんななにも感じないね。恐怖も痛みも悩みも全部! じゃ、いよいよクライマックスと行きますかぁ!」


世界が、この星が、とうとう長き歴史に幕を下ろそうとしていた。

主は決してスマホが嫌いなわけでも、健康に害を与えるきっかけをはらんでいると言いたいわけじゃないんです。ただ、もしもどっかの誰かが彼女のように侵略するならスマホが1番手っ取り早いかなって思っただけです。

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