金の終わりと夜の覇者
ちょっとだけ下ネタ注意
「うふ……うふふ……うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふはははははは!!!!」
狂いながら笑う金色の髪をした彼女の足元にはバラバラにされた死体が転がったていた。その体は無残にも四股を引きちぎられ、頭もゴロリと横たわっていた。その死体をまじまじと見つめながら彼女は笑った。
その理由は、『楽しいから。』
目の前で四股を切断してやったのに、その体からは血が一滴も滴らなかったという不思議な体験をしたせいでもあるが、それ以上に人を殺したという快感の方が勝っていた。自分の目の前で、自分に怒りを向けながらも、自分に何もできないまま死んでいく。そんな哀れな生物を嘲笑うのが好きだった。彼女は足元に転がる死体をもう一度見下すと、そのまま白い頰をじわじわと赤らめながらニッコリと笑った。
「ふーじーこーちゃーん!? ひょっとして死んじゃったのぉ!? まだ血も出てないのにい!? せめて叫んでよぉ〜、痛い! とか、やめて! とか言ってくれればいいのに。」
「……。」
彼女は何もできなかった。体がバラバラにされてしまった以上、生きることはなくても指一本動かせない。そんな彼女が唯一できるのは目をギョロギョロと動かし、口を狂った女の戯言を聞き、それに対抗する言葉を探し話すことくらいだった。
するとその金髪の女は私の頭を乱暴に髪に絡めるとそのままグイッと持ち上げ不気味に笑う顔に私の頭を近づけた。
「グゥ……」
「すっごーい! まだ生きてるんだ! 頭だけなのに、なんで!? まぁ、私も一度首を飛ばされたからねー、あはは。仲間、仲間!!」
そう笑いながら話す彼女の首元にはたしかに生々しく深い傷があった。その傷口は今でも疼いているようで彼女はそれを指でなぞるように撫でた。そして赤い舌をダランと出すと私の顔をベロベロと舐め始めた。
ベチョ……ヌル……グチュ……
「うぁあ……やめろ……」
「あはは、こうやって舐められるのって初めてだったりするの? 私は何度もやってるんだけどなぁ。ま、流石に舐められた経験はないけどねー。」
「ば……ばか……そんな経験……あるわけ……」
顔を振り小さな抵抗をすると彼女の笑みはさらに増して舌をチュルチュルと中にしまった。
「そっかー、ないのかー。残念だねぇ。じゃあ私がその初めてを奪ってあげてもいいのよ!?」
彼女は足元に転がる私の死体を持ち上げると、髪の毛でギチギチと縛った。
「うふふ……ちょっと変なにおいがするね。まるで私が愛した男たちのにおいみたい……いいにおい。これで恐怖が混じった叫びがあれば完璧なのに……残念。」
「ゾ〜……」
縛られた私の体を愛おしそうに眺める彼女に私はドン引きした。今更ながらその表情は変態そのものだった。
「へへへ……こんなことってされたことある……?」
「ちょ、ちょっとどこに手ぇ入れてんのよ!?」
彼女は私の死体をなでなでと撫で回し、その体の腐敗臭をスンスンと嗅いだ。その明らかに狂った行動は私のない背筋を凍らせた。そんな彼女の手つきは私の死体の大事なところに伸びていった。
「ちょ、だめ! そんなとこ触っちゃいやぁ!」
「ふふふ……もっと色々撫で回して、恥ずかしい思いをいっぱいいっぱいさせて、あ、げ、る。」
「うわぁぁあ! やめろー!!」
彼女の手元は私の死体の至る所を撫で回し、さらにその腐敗臭を楽しむかのように舐め回す。もはや私の声は彼女の快楽をさらに増していくだけで、それ以外には何もなかった。いくら今は離れ離れになっていても、何も感じてはいなくても、それでも1つしかない自分の体が辱めを受けていることは最悪だった。
だけど頭しか無い私には抵抗することさえもできなかった。
「ウヒャヒャ……このにおいたまんないね。ほんっと最高だね。もっともっといじめてあげたくなってきちゃった。」
「なんですって……そんなことさせるもんか!」
「あはは、今のあなたに何ができるの? 頭しかないのにい!? 」
「くっ……」
そう、いくら大口を叩いても今の私は何もできないのだ。どうあがいてもその事実は変わらない。私の死体は彼女に弄ばれ、ぶらんぶらんと宙を揺れていた。
そんな私を嘲笑いながら彼女はさらに手つきを激しくすると舌をチュルンと出し、呟いた。
「うふふふふふ……こんな気持ちいい体なんて初めて……あなた、ラッキーね。しばらくの間は殺さないでおいてあげる。そのかわり毎日私にこの体を貸すことね! そうすれば許してあげる!」
「なっ……なんだと。」
「アッハッハ! そうね、こうして巡り会えたのもきっと運命なのかもね。この運命を祝してあなたの体をたっぷりといじめてあげるよ!!!」
「ヒィィィイ!! やめろぉ!!」
彼女の目が怪しく光り、たっぷりと唾液の乗った舌を口からヌルンと滑り出した。そして私の死体に震える手を伸ばす。その顔からは荒い息を出し、鼻の穴はフンフンと膨れていた。それは彼女の興奮の現れで、私の死体にその荒い息を吹きかけていた。
「も…….もう、我慢できないぃぃ……」
彼女はそう言いながら私の死体にゆっくりと近づいていった。その様子は彼女がこれから自分にすることが最悪なことでしかないことを容易に想像させた。
「だめぇぇぇぇえええええ!!!!」
私は叫んだ。叫ばずにはいられなかった。この言葉が決して彼女を止めることができないとわかっていても、私はひたすら叫ぶことしかできなかった。
「そんな腐った体の……いったいどこがいいと言うんだ?」
「!?」
彼女はその声に驚くように立ち止まった。お陰で私の体が辱めを受けることはギリギリで回避された。私もその声の方向を向くと、そこにはドラキュラもとい、『久月 永牙』が立っていた。
「あんた…….なんで? 私の薬は最低でも5時間は起きないはずなのに……」
「ふん、あんな薬なんて屁でもないわ。私たちドラキュラに比べればね。」
「ドラ……キュラ、そうか。ってことはこの私の運命の人もそうなのかい?」
「ゾゾ〜……」
私の目の前にはドラキュラが目をらんらんと光らせてながら彼女を見つめていた。その目は強い敵意と激しい憎悪を併せ持っていた。
「彼女はゾンビだ。私のような怪物じゃあない。」
「ゾンビ…….なるほど、どうりで死なないし私の好きなにおいがするわけか。納得。」
「いや、死なないというか、死んでるというか……」
ドラキュラはサッと戦闘態勢に入ると、彼女もそれに合わせるように構えた。2人の間の空気がビリビリと重くなるのが頭だけの私でも感じられた。
「ふっふっふっ……ドラキュラにゾンビ……今夜はご馳走ね……」
「ふん、やってみろ。ドラキュラの強さを舐めるんじゃない。」
「へぇ……美味しそう。でもねあなたはすでに私の腹の中同然だということもお忘れなく。」
彼女の瞳が怪しく光る。私はドラキュラの腕がちらっと光ったのをそれと同時に見た。そう、彼女の言う通り私たちはすでに彼女の腹の中にいる。ドラキュラの全身に彼女の髪が巻きついている。それを見てしまった私は叫ばずにはいられなかった。
「永牙ー! すでにッ! すでに彼女の髪は体に巻きついているぞー!」
「なに!?」
「ふっふっふ、ドラキュラと言えども気づかないのは間抜けさんね。さぁ、あなたからは血が出るのかしら? 」
「なっ……! し、しまっ!」
彼女の髪は完全にドラキュラの自由を奪った。あのドラキュラの力でさえも引きちぎれない髪だなんて。
「うふふ、髪ってね意外とバカにできないんだよ。普通の人の髪でさえ全部合わせてロープにすれば8トンくらいのものを持ち上げるのよ。そう考えれば私の髪の力なんてそんな比じゃない。その気になれば20トンくらい、余裕で持ち上げるわよ。」
「くっ……油断した。」
ドラキュラは必死になってもがいたが、それはさらに彼女の髪を全身に絡ませるだけだった。やがて彼女の髪はドラキュラの体にどんどん巻きつき、とうとう顔と手と足首を残して体全身を隠してしまった。
「んー! んんーー!」
「あはっ、金色のドレスのかーんせーい。なかなか似合ってるんじゃない?」
彼女は髪をドラキュラの口の中に突っ込み、言葉を失わせた。
「噛まれてドラキュラになったらたまんないからね。化け物は私だけで充分だ。ねえねえ、あなたは引きちぎってもいいの? ちゃんと私を満足させてくれる? ねえ?」
「んー、んんんーー!!」
「いいんだね? じゃあまず、右腕から!」
「んんっ!」
ギチギチギチ……
ドラキュラの体は悲鳴をあげて軋んだ。彼女の髪はドラキュラの右腕を遠くからでもわかるほどのすごい力で締め上げた。その力はドラキュラの力を圧倒的に上回り、腕を異様な方向に曲げた。
ブチュッ! ビチャ! ブシュッー!
「アッハッハ! そうそう、これこれ! やっぱり血が出なきゃ面白くない!!」
「んんんーー!!!」
ドラキュラの腕は血を吹き出しながら地面に転がった。ふと見れば、地面もいつのまにか金色のカーペットが敷かれていてドラキュラの血を飲むように吸っていた。
「ねぇ? ふと思ったんだけど、ドラキュラの血って飲んでもいいのかな? 私、大丈夫なの?」
「んんー! んんんんーー!!」
「あっ、大丈夫なんだ。よかった。」
なぜわかるんだとツッコミたくなったが、今はそんなことをしている場合ではない。頼みの綱かと思われたドラキュラでさえ、もう今にもやられそうな状況だ。腕の次はどこをちぎってやろうかと彼女は怪しい笑みを浮かべながら考えていた。
「んふ。次は足かなー。それにしても君、なかなか胸がおっきいなー。どうしたらどうしたらそんなになるの?」
「んんっ!」
「流石にそろそろ喋りたくなってきたかな? しょうがないなぁ。」
彼女はドラキュラの口から髪を抜いた。その金色の髪はドラキュラの唾液がべったりと付き、さらに輝きを増しているように見えた。
「えへへ、でっかいなぁ、羨ましいなぁ。」
「やっ、やめろ。そんなとこ触るな!」
彼女は指でなぞるようにドラキュラの胸をいじった。たとえドラキュラと言えども人間に近い感覚があるようで、頰はじわじわと赤く染まっていく。
「くっ……くぅ。」
「んー、見れば見るほどでっかいなぁ。ちょっと吸い付きたくなってきたよ。」
「なっ……なんだと? やめろ! 私の胸にもうこれ以上触るなぁ!」
「なんで私がそれを聞かなきゃいけないの?」
「……!」
彼女は唾液たっぷりの舌を再び出しながらドラキュラの胸元に髪を伸ばしていった。
そして服の中からドラキュラの膨よかな胸にシュルシュルと髪を巻きつける。
「や……やめろ……」
「吸血鬼っておっぱいつてどんな味がするのかしら? ちょっとだけ楽しみ。」
彼女が髪で胸元を開け、舌を伸ばしたその時、
「くっ!」
ドラキュラはカッと口を開けて犬歯をギラリと光らせた。そう、こうなってしまったら最後の手段、彼女に噛み付いて吸血鬼にする。そして怯んだところを逃げる。それしかない。
ドラキュラは彼女の首元めがけて自分の牙を伸ばした。
「おっとっと、危ない危ない。」
「なっ、うう……」
「どうしたの? ほら、首元に噛み付いてきなよ。」
彼女は古傷がある自分の首をドラキュラに見せたが、ドラキュラの牙はそこでピタリと止まってしまった。なぜなら彼女の目の前に髪で作った十字架があったからだ。吸血鬼は十字架に弱い。世界的の常識1つであるこの情報を彼女が知らないわけがなかった。ドラキュラはその十字架に完全に怯んでしまい首をすごすごと引っ込めた。
「ふぅん、意外と伝説はほんとだったんだなぁ。」
「うう……気持ち悪いよぉ……」
「そうだ! 確か冷蔵庫の中に……」
彼女はなにかを思い出したかのように冷蔵庫に髪を伸ばすと、戸を開けてなにやら取り出した。ドラキュラの顔はその取り出されたものを見るなり、サァーッと顔から血の気が引いていった。
「ジャーン、これ、吸血鬼には効果抜群でしょう?」
「ヒィッ! そっ、それは! そのおぞましいものは!」
彼女の髪が持っていたのは小さな玉ねぎのようだがそのにおいは玉ねぎとは全然違う。そう、彼女が冷蔵庫から取り出したものは、吸血鬼の天敵であるにんにくだ。
「ほらほら、みんな大好きにんにくだよー。」
「あ…….ああ……」
ドラキュラはガタガタと体を震わせ必死にそれから逃げようとした。だが彼女の髪はそれを許さず、逃げ出すことがないよう、さらに強く締め上げた。
「やっ……やめて……それだけは……んぐっ!?」
「にんにくくらい食べれるようになりなよ。ほら、手伝ってあげるから。」
彼女の髪はドラキュラの口を強引に開き、舌に巻きつけるとそのまま口が閉じないように固定した。そして手の中でにんにくを砕きその汁を滴らせるとドラキュラの口元へゆっくりと持っていった。
「やっ、やへ! ほれはへら!」
「あは。」
彼女はドラキュラの舌の上にタラリとにんにくの汁を滴らせた。彼女の舌はその味を嫌でも脳に伝え、内側からにおいを鼻の中に充満させた。
そのおぞましい味とにおいは彼女の頭を真っ白に染め気絶寸前まで追い込んだ。
「んっ……んぐぅ……」
「あはは、たったこれだけでこんなに効くのか。それじゃ実を入れたらどうなるのかな?」
「らっ……らめぇ……それだけは……らめぇ……」
必死になって許しを請うドラキュラに対し、彼女は笑いながら実を1つまるごと押し込んだ。
ドラキュラの口内はたったそれだけで拒絶とパニックの反応を起こし、目は涙を溢れ出しながら見開いた。
「んんーー! んぐぐぐぐ!!! んーー!!」
「ねぇ、美味しい? 初めて食べるにんにくは美味しい?」
ドラキュラはブンブンと首を横に振り、できる限り精一杯の抵抗をした。それでも口の中を通じて頭、いや全身に広がる不快感はどうしても拭い去ることはできなかった。
そのうち、口の中にあったにんにくは彼女の手が強引に腹の中に押し込んでしまった。
「食べちゃったね。」
「う……うえぇ……気持ち悪いよぉ……それに……なんかお腹が……痛いし……熱いよぉ……」
「ふぅん……どうなるか見ものだね。」
ドラキュラのお腹は拒絶反応と異物混入の反応を繰り返し必死に吐き戻そうとしていた。
「うぁぁぁああああ!!?? 熱い熱い!! お腹! 焼けるッ! どげる!! あづいよぉぉおおおお!!!」
「へぇ〜、吸血鬼がにんにくを食べるとそうなるのか。知らなかったなぁ。」
ドラキュラのお腹はシュウシュウと音を立てながら溶けているようだった。彼女は未だかつてないほどの苦痛に顔を歪め、目から大粒の涙をぼたぼたと流した。口からは唾液が胃酸と混じってダラダラと流れ出て辺りに酸っぱいにおいを充満させた。そんな状況の中で暁 柊もとい『ゴールドエンド』は口元をググっと上げてさらに笑みを増した。
「そうそう! その声! その苦痛に満ちた声ッ! 私はそれが聞きたいのよ! もっとッ! もっとッ! もっと聞かせて!」
「い……いだい! いだい! いだいよぉおおお!!! もうゆるじでぇ!!! 誰がだずげでぇええ!!!」
彼女は涙を流しながら必至に助けを求めたが、彼女の近くにはもはや彼女を助けることができるものなどいなかった。ゾンビはなにもできないでいる自分の弱さにただただ嘆き涙を流すことしかできなかった。
金色の終わりが近づいて自分たちの自由を締め付ける。私たちはここで死んでしまうのだろうか。絶望に押しつぶされながら死んでしまうのだろうか。
その場にいる誰もがそう思った。彼女たちを弄ぶ化け物を1人除いて。
2人の目は光を失いかけていた。あと少しで完全に光を失ってしまうだろう。
その時、不思議なことが起こった。
バリバリバリッ!!!
「!?」
縛られていたはずの彼女の体から黒い翼が生え、金色の髪を引きちぎったのである。
「な……に?」
「……これは?」
その翼は骨の間に膜が張り先が尖っている形状をしていた。突然の出来事にその場にいた誰もが一瞬凍りついた。
そんな中、真っ先に動いたのはドラキュラだった。髪の縛りから解放され自由になった体でめいいっぱい暴れた。コンマ数秒遅れてゴールドエンドがそれに気づく。
だが、それに気づき髪を再度巻きつかせようとしたのがまずかった。
「ぎぃ……!」
髪は女の命とは良く言ったものだ。彼女の能力は髪を自由自在に伸ばし、操ること。もちろんそれにはデメリットも存在する。彼女の髪は最大の武器にして最大の弱点でもあるのだ。髪を攻撃すれば物理なダメージが入る。彼女にとっては手足同然の組織。しかもそれは頭に近い組織なのだ。当然痛覚は何倍にもなって体中に響き渡る。
「ぎぃぃいいいあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
先程までの余裕な表情は影も形もなくし、苦痛に満ちた顔を見せた。彼女には髪から解放されたドラキュラなど視界に入っておらず、ひたすら苦痛に叫びその場にのたうち回った。
しばらくの間呆気にとられていた2人だったが、ドラキュラの方から今がチャンスと言わんばかりに動いた。急いでゾンビの頭を髪から解放し、バラバラにされた死体をかき集めると窓の外に放り投げた。幸いここは2階なので彼女の死体がバラバラになることはない。
「ゾンビー!! 今の天気はーー!?」
「かなり曇ってるーーー!!!」
「よし! いい天気!」
私は外に放り投げたゾンビの頭に問うと、大声で返事が返ってきた。どうやら今の天気は曇り、太陽の光は出てないようだ。私はそれを聞くと反射的にテーブルの中で眠る仲間たちを掴む。彼女たちくらいの体重なら両手を使えば余裕で持ち上げられる。私は後ろで叫び狂うここの住人を後ろ目に窓ガラスをぶち割って窓の外に飛び出した。
幸いにもマンションの外は芝生が植えられていたので着地の時の衝撃は最小限に抑えられた。
ズンッ!
「よし!」
私は芝生の上に仲間たちを置くと散らばっていたゾンビの死体を探した。
「ごめんね、世話かけちゃって。」
「いいのいいの! だってバラバラにしたのは私じゃないからね。」
とりあえず死体のパーツは全て揃ったがこれを縫い合わせる針と糸がない。そういえばあの女がゾンビに巻きつく時、服を引きちぎっていたっけ。おそらく裁縫セットはその中だ。
私は恨めしそうに彼女がいる部屋を見つめた。彼女の叫びは今にも消え入りそうな声だったが、それでも耳にはっきりと届いていた。
「はぁ…….とりあえずは助かったのかな……」
「そうだね、でもモタモタともしてられないかも。早くここから逃げなきゃ。」
「そうね。一刻も早く……どうしたの?」
「あ…….あ……」
私は彼女を急かすように言ったが、そんな彼女の顔は真っ青になっていた。言葉を失った彼女に再度尋ねようと声をかけようとすると、それより先に彼女の口が開いた。
「後ろッ!!!」
「えっ!?」
彼女の叫びと同時に私は振り向くとそこには、金色の長く太い触手が私に向かって伸びていた。
私はそれに驚く間も無く、その触手に飲み込まれた。
次回の投稿もお楽しみに。




