↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

Rainy Day

作者: 志瑞 流
掲載日:2017/05/04

 「どうしたの?」


 傘を開く動作に見とれていた僕に、彼女は突然声をかけた。


 「あ、いや、傘忘れちゃって…」


 少しどもりながら、頬をかいて僕は答えた。


 「そう。じゃあ、一緒に帰ろっか?」


 「え?」


 彼女には何気ない一言だったのかも知れない。


 でも、その言葉で僕の鼓動は彼女に聞こえるほどに大きく高鳴った。


 「どうしたの?早くおいでよ」


 無邪気な微笑みで振り返る彼女。


 僕はその魔法のような笑顔に引き寄せられて、彼女の隣に並んでいた。




 小気味よく傘を打つ音が辺りに響く。


 でも、その音さえも耳に届かない程、僕の五感は隣を歩く彼女だけを感じていた。


 どうか僕の心臓の音が彼女に届きませんように。


 どうか僕の身体の熱が彼女に届きませんように。


 どうか僕のこの思いに彼女が気づきませんように……


 そう、これは隠さなければいけない感情。


 この気持ちを伝えれば、きっと何もかもが壊れてしまう。


 僕も、そして彼女でさえも。


 けれど……けれど、今、この瞬間だけは。


 「お姉ちゃん」


 「何?」


 「手、つないでいい?」


 「……いいわよ」


 多分彼女は、僕の気持ちに気づいていたのだろう。


 それでも彼女は、柔らかな眼差しを僕に向け、僕の手を握ってくれた。


 彼女の温もりが直に伝わってくる。


 その手を握り返す僕の手は、微かに震えていた。


 そう、僕にもわかっていたのだ。


 これが恋というにはあまりにも幼すぎる感情だということが。


 けれど、まだ、今だけは甘えていよう。


 本当の恋を見つけるまで。


 この手に伝わる、暖かい温もりに。


<終幕>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの思い人が、でした。 表現が真っ直ぐでいいなぁーと思います。 そのままの思いな所が伝わってくる所が良かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。