官僚による奇襲作戦迎撃
紅葉達の居るキャンプでは怒涛と喧騒と絶望の声が木霊し、ある者は慈悲を願いある者はその慈悲を醜悪に絶望へと変える
そんな宛ら悪夢のような光景がキャンプ地では広がっていた
そして本部テントに寿命を削りながら駆けて行く老人の姿が在った
「紅葉様、敵の奇襲で御座います。どのようにしましょう?」
「奇襲の為こちらの指揮系統は完全麻痺、武器庫等も制圧されて現状の兵士たちの武器も雀の涙レベル。打つ手は無しでしょう」
「一体どこから・・・」
「私が甘かった様です。通り抜けた後、敵が背後から奇襲、尾行してこない様に道を選んだんですが新手の魔法による追跡が行われてたとは...」
老人の声には焦りと緊迫感で声が少し裏返っている、挙動も手は激しく意味も無く動かし、周囲を忙しなく見ている
それと対照的に紅葉は全くの緊迫感を与える事なくいつもの様な感覚だった
そして挙動不審な老人がいきなり声をあげた
「そうです!岩石等を落とせば良いのでは?一つ落とすのに魔法使い一人と紅葉様が居れば良いだけですし」
「何を動転したんですか?そんな事をしたら自軍も壊滅的な被害に会うでしょう?」
老人は再び深く考え込むが挙動がおかしくなるだけで一向に具体案が浮かばなかった
「4時間です、4時間待てば確実に勝てます」
深く考え込んでいた老人の頭には上手には紅葉の言葉が入って来なかった
「な、何でですか?」
「まぁ、見ててください。それよりも生存してこちらの指揮が聞ける兵士はどれ程いますか?」
「殆どいないと思います・・・。そうですね、50人居れば良い方では?」
「十分です、ではその人達に全力でキャンプ地中央に集めてください」
紅葉の意見は突拍子も無さ過ぎる言葉だった、それを幾ら慌ててる老人でも理解することが出来顔の色を強く変えた
「そ、そんな事をすれば集まった人たちは全員・・・」
「殺されるでしょうね」
「そ、それは承服出来ません」
「何か勘違いをされてませんか?」
感情の籠っていないと客観的に見たら思えるその平坦な声が少し強まった
そしていつもと打って変わった抑揚の強い口調に成り、老人は少し疑問に思いながらも紅葉の次の言葉を待った
「我々の使命は何ですか?」
「不当な利益と元王族達の傲慢で取られた国民の故郷の奪還です」
周囲の喧騒と相反する様にこのキャンプでは不思議な感覚に満ちていた
老人はその馴れない感覚の所為で先程よりも汗をかいている
「ではそこに兵士達の無傷での帰還は含まれていますか?」
「戦争に成った場合は無傷はありえないと思います。しかし!だからと言って兵士達を無意味に殺しては良い理由にはなりません!それは彼ら兵士達の為に死んだ者達への冒涜であり。その兵士達の帰りを待つ者達への侮辱となります!」
老人の声は無意識に声を強め、言葉の最後は大声とも取れる程の声量だった
しかし、その老人の発言を紅葉は聞いても軽い微笑を零すだけであった
「それが勘違いと言っているのですよ。彼らはどんな状況にも国の為に、国益の為に死んでも良い、死んでも悔いの無い覚悟でここに来ました。それをあなたは死ぬ事は、無駄死には死亡した兵士達への冒涜と言った。それだと彼らは復讐の為に、今はもう存在しない兵士達の為に戦ったいる愚かな兵じゃ無いですか」
「・・・・・・」
「家族の為に来たのは間違っていません、ただ家族の為に死んでも良い覚悟で来たのが前提の話です。この死は確実に死んだ兵達を待っている者達への幸せへと繋がります。それをあなたは侮辱と呼ぶ。それが勘違いと言っているんです」
声の抑揚と口調の強さを心理学的に計算し紅葉はサブリミナル効果を出した
潜在的に紅葉の言っている事は正しく思わせ自分の考えは間違っていると植え付けたのがこの喋り方である
「私は間違えていたのですか?」
その紅葉の計算通り老人は自分の考えを間違った物だと判断してしまった
そして、膝からゆっくりと倒れ膝立ちの様な格好で俯いていた
そんな老人に対して紅葉はいつもの様な口調で口を開いた
「間違ってはいません、どんな考えも間違いではなければ正解でも無いのです。ただこの場の考えでは私の方が優れていた。ただそれだけの事です。」
飴と鞭の効果で強くその者を否定した後、優しくされるとその者は優しくされた行動を過大的に見てしまう
不良漫画の不良が子猫を拾うと何故か良い奴に見えるのと似たような現象だ
そしてその紅葉の考えた筋書き通り老人は紅葉の意見を正しいと信じた
そして老人は右手の指を頭のこめかみに置きテレパシーを飛ばした
【至急、これを聞いてる者達はキャンプの中央集会に集まる事。全力で来い!】
中央には続々と人が集まって行った
味方の流れに乗った兵士達が芋蔓方式で連れて増えて行ったのだ
しかし、それは敵から見たら恰好の的であり。兵士達からしたら絶望でしか無かった
そして集まった兵士達は無意味にも抵抗を続けるが無残にも殺されていった
「これで本当に良かったんでしょうか?」
「何を今更、後2時間ですか。まぁ、相手は無防備なこちらの兵士達を嬲って殺しているのでこの兵士数でも持つでしょう」
「2時間後に何があるんですか・・・?」
「言ってませんでしたか?」
紅葉が嘘としか聞こえない事を言うが老人は深くは追及しなかった
「ワイバーン師団の到着です。ワイバーンとドラゴンの上には大体30万を超える軍団が待機して居ます。ドラゴンって凄いですね、上に人が大量に入るコンテナを何台も載せても飛ぶんですから。オスプレイ何て比べるまでも無いですよ」
このドラゴン達は背中に巨大なコンテナを背負わされそのコンテナに乗っている人達に成るべくGが掛らない様に飛びながら、コンテナ内部は高所を飛行する為魔法による暖房設備が管理されている
今で言う、空のキャンピングカー並みの充実さだ
しかし、老人はその事を知らず体を少し前に出しながら、馴れない大声を出そうとした
「ど、どういうことで・・・?!」
老人が言葉を紡ごうとしたがそれは紅葉の手に持っているナイフが老人の心臓を刺しており叶わなかった
老人は終始紅葉の言っている事と自分の胸に刺さっているナイフを疑問に思いながら溢れ出る温かい血流を肌に感じながらその場に倒れた
「ゥ!・・・・・・・」
最後に言葉を必死に紡ごうとするが喉に競り上がって来た血が血反吐として吐血され。その言葉も空しく発される事はなかった
意識が途切れそうになるがそれでも老人は強く立ち上がろうとするが、もう自分の体温と大差ない地面に再び倒れ意識が朦朧として最後に
「ご苦労様でした」
紅葉によるそんな言葉を聞き意識が途切れた
その後師団が中央に集まって居る敵軍団を包囲殲滅した
そしてその光景を映像越しに見ている黒雲は深く溜息を吐いた
「何でこんなにあいつは面倒なんだよ」
どうでしたか?
今回は久しぶりの心理学を使う回となっています。参考になるかは全く分からないですが・・・
作中で書いたサブリミナル効果は映像や繰り返し何度も音声を聞かせて潜在的に植え付ける等がありますが紅葉は刷り込ませたい所を強く印象的に語り掛けると言う感覚です
話は大きく変わりますが内容が難しくなって来ているなと知り合いの作家さんからも言われますし自分でもそう少し思っています。分かり難い所は作者の描写不足なので追記で幾らでも直したり、説明出来るので教えて頂けると非常に嬉しいです
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ではまた次回