表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編集】童話・詩・エッセイ・他

日本語の表記方法について

作者: 仁井暦 晴人

私が個人的に考えている文章作法・表記方法編です。


 日本語の表記方法についてはJIS規格にガイドラインが示されています。

 JIS X 4051: 2004「日本語文書の行組版方法」というのがそれにあたります。ただし、この規格はあくまでガイドラインであって強制ではありません。

 それならば無視してもいいものかと言うと、そうとも言い切れません。いくら強制でないとは言え、その道のエキスパートが集まって制定されたものであり、歴としたJIS規格です。事実、Adobe InDesign日本語版など、日本語の文字組版を扱うソフトに搭載されている日本語組版エンジンはこの規格に準拠して設計されています。

 先にガイドラインと言いましたが、それなりに細かく規定されています。それでも日本語組版の全てを網羅する規格ではありません。

 小説を書く方が集まる掲示板などでたまに話題に上るのが、空改行の扱いや、鍵括弧内の会話文の最後——つまり閉じ括弧の直前に句点が必要かどうか、また、…や—といった記号は偶数倍の文字数で繰り返して扱うべきか、といったものです。

 例示したものはいずれもJIS X 4051には規定されていません。しかし、出版された小説を読むと、そこには何らかのルールが見受けられます。

 つまり、JIS規格とは別に、出版社ごとのハウスルールが存在するのです。

 ただし、同じ出版社であっても時代ごと、稀には作者ごとに違いがあり、漏れなく統一されているとは限らないことを付記しておきます。

 上記を踏まえ、小説で多く見られるのは、


・空改行は単なる見た目のためではなく、例えば時間経過を表すなどの特別な意味がある場合に使われる

・鍵括弧の閉じ側の直前においては句点が省略される

・省略や引用の意味を持つ…や—などの記号は、偶数倍の文字数で繰り返して使われる


 といったルールです。

 これらは、一つには、文字情報を扱う出版社として「こうした方が見やすい」という提案ではないでしょうか。そしてもう一つとしては「このような表記をした際にはこういった暗黙の取り決めがある」という共通理解を促進するためのものではないでしょうか。

 出版社がハウスルールを採用している理由としては上記の二点が主な理由だと考えています。


 さて、例示した小説ルールのうち、句点の省略についてもう少し書こうと思います。

 句点を省略するというのは、学校の作文で習う書き方と異なります。それについては、一文の終わりを示す句点と閉じ括弧が連続するのは二重化であるという説があり、それなりに納得できます。なぜなら同じ文末の記号であるところの疑問符や感嘆符は閉じ括弧直前であっても省略されないからです。それらの記号には疑問や感嘆といった、文末を示す意味とは別の意味合いも含んでいるため、単なる二重化とは違います。

 実は、もうひとつ理由があると考えています。新聞や情報誌といった情報量を詰め込む出版物の場合、一行の文字数が十数文字程度しかないものが多いです。それらの出版物の場合、長音や拗促音などは行頭にきても構わないという緩い禁則ルールを採用するのが慣例となっています。しかしながら句点と閉じ括弧を次行の行頭に置くわけにはいかず、それらが連続した場合禁則扱いとなる文字がそれだけ増えることとなります。

 今でこそ、禁則処理は組版ソフトが自動的に作業してくれます。しかしその昔、活版であれば禁則処理のためには活字と活字の間に込めものを入れるだの、写植であればオペレータが計算して字送りを手動で変えるだのといった作業コストが発生していました。また、それらが自動化された現在であっても、禁則処理による字送りのばらつきは可読性の側面から好まれない傾向があります。

 よって、読み物としての可読性を重視する出版社としては、句点と閉じ括弧の二重化を避ける方向にベクトルが向くのは自然なことであろう、というのが私の結論です。




 蛇足ですが、三点リーダーと中黒についても書いておきたいと思います。

 三点リーダーについて、中黒「・」複数個で表現するのが何故いけないのか、という意見がたまに見られます。

 個人として趣味で小説の表現に使う分には特に制限されるものではありません。

 しかし、それらの記号類(一般的には約物と呼ばれています)にはその成り立ちからそれぞれ意味があります。

 その中で、中黒には「複数の単語を併置する際の区切り」、あるいは「外来語をカタカナ表記する際の区切り」といった、区切りの意味があります。その他、縦組の場合には小数点の代わりに使うこともあります。

 従って、中黒を本来とは別の用法、すなわちビュレットや三点リーダーの代わりに使うのは間違いです。(ビュレットというのは箇条書きの先頭に使われる小さな黒丸のことで、別の記号があります)


※ちなみにこのテキストは一般的なテキストエディタで作成しており、本文中でビュレットの意味として入力したのは単なる中黒です。すみません。


 一方、三点リーダーには「時間経過」・「静寂」・「余韻」・「省略」などいくつかの意味がありますが、そこに「区切り」は含まれません。

 よって、私の立場としては、両者を混同して使うのは間違いであることを明記しておきたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 組版の規格は基本的に印刷のルールなので、あまり関係ないような。 ただ、段落や句読点などは日本語としての意味があるので、最低限守るとしたらソレ位かなとは思っています。もちろん、それが表現として…
2013/10/17 21:16 退会済み
管理
[一言] とっても読みやすかった
[良い点] 大変勉強になりました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ