プロローグ
5月3日
ゴールデンウィークの真っ最中に僕は街の人気のあるショピングセンターへ向かっていた。
集合時間は確かに午後1時だったかな、ここからショピングセンターまで5分もかからないのに今は12時45分。
「まだ早いかな」
と時計を見ながら言う。
そして、10分間一人で待つことになった。誰を待っていたのかというと、肩まである短髪、眼鏡がチャイミングで背の低い超カワイイ少女だ・・・なんてわけないだろ。と自分に現実を思い出させる。
実際は幼じみのシイナ ユリと中学の頃からの友人カトウ カズヤと僕の3人で、デート?
「ね、この前に言った「死神」の話、まだ覚えてる?」
僕に向かって話題を出すユリ。
「ああ、どっかの島国で超能力者の事を「死神」と呼んでるとかって話だったかな」
数ヶ月前からユリがいつもしている話。覚えていないはずがない。まあ、簡単に言うと、とある島国で特別な魂を持っている者が集って、そして死神になるらしい。この「死神」はただの呼び方で実はただの超能力者になるだけの話。もちろんそんなとんでもない話に興味などない。
「そそ、それだよ。で、あっちの本屋に「死神」のガイドブックが売ってるらしいよ」
とユリが10mほど離れた本屋を指差して、ねね、いこうよと子供みたいに言う。
「別に良いけど、カズヤはどう?」
「・・・・・・」
無言。誘ったのはカズヤだけどユリの前はいつも無言。じゃあ、なぜ僕を誘う時に「シイナも呼べ」といつも命令するのかよ。ユリが好きとかそいうことじゃないと思う。なぜならその表情には恥ずかしい印象より冷たい印象がするから。
というわけでシイナの提案通り本屋に寄ることに。本屋は大きい3つのスタンドが店を3つに分けられるような形になっていた。ユリは例のガイドブックを探しに行き、僕とカズヤは新刊のコーナーへ
「どうやらシイナさんがお前が死神に興味を持って欲しいらしい。なぜか知らないか?」
とユリがいない時に普通に話しかけるカズヤである。
「さあ?なぜだろうな」
「やはり知らないか、まあ当然の事だな」
「なんだ、その言い方」
「興味がなくても本には目を通せよ」
「本?」
その僕の疑問に対してカズヤはただ僕の後ろを指差した。振り向くとその先には一人の女子高生がその「答え」を上下に振っている。もちろん、それはユリが死神のガイドブックを嬉しそう上下に振っているだけのことだが。やはり、その「本」の事だったのか。
そして数時間後、ショッピングセンターを出ると外はもうすっかり暗くなっていた。それまで、ユリに例の本をすすめられて買ったり(実は無理矢理、買わされたけど) 、最近の人気の映画を観たり(金銭的問題でポップコーンはカットされた)、ファミレスの新メニューを食べたりしていた。
「ああ、雨降ってきたよ」
と自分の手で雨粒を感じながら言うユリ
「ダッシュで帰ろう!」
今傘持ってないから
「でも、公園を通るときは泥まみれになるよね」
「まあ、そうなるな」
3人の帰り道はとある公園を通るから靴は泥まみれになることは避けられない。ちなみに公園以外の道は公園を周る形になっているからその方法では遅すぎる、(そして早く帰りたいという理由もあるし)というわけで公園を通るしかない。
10分程度歩いて公園に着いた。靴はやはり泥まみれになっていた
「雨が強くなってるよ。急ご?」
「こんな状況で走るのは危険だ、ペースを下げよう」
今の状況はあまりにも悪すぎる、雨とか泥とかはまだいいけど今は真っ暗な状態になっているのは本当にイヤだ。
そして突然にカズヤがユリに飛び込んでそのまま2人は泥に落ちる。
「?」と思う前に
バン
という高い音が公園に響く。
そして僕たちの後ろに、誰かが近づいてきた。
「チッ」
と舌打ちをして、それからわざとらしく公園のライトの下に足を止めた。その姿は、黒いスーツのボタンははずしたまま、ネクタイも着けていない。黒いズボンは泥だらけになっていた、大男の姿だった。そしてその右手は黒い物体をクルクル回している。
「拳、銃?」
いつの間に雨は土砂降りになっていた。
「やっと来たか」
と、いつの間に立ったカズヤがそう言って2歩を大男に近づく
「させない!絶対に!俺はそのためにここにいるから!」
おいおい、何が起こってる?さっぱりわからんけど。
「お前ら早く逃げろ!」
「しかし、あなたは?」
と心配そうに言うユリ
「いいから早く!」
何だかよくわからんけど、わかった事は3つだけ
まず1つ目-あの大男が僕たちを狙っている、いや狙いはユリだけか。
次2つ目-ここにいたらカズヤと一緒に殺されるだけ。
そして3つ目-今できる事はユリと一緒に逃げる事しかない。
「行こう、ユリ!」
叫びながらユリの手をつかんで走り出す
「でも、カズヤが!」
「僕だってカズヤをおいていくのは嫌だ!しかし、そうするしかない」
必死に公園を走っていると足を滑らせて転んだユリに声かける
「ユリ大丈夫か?」
そう言い、ユリの近くにしゃがむ
「うん、それよりあなたの方こそが心配」
ユリが上半身だけをあげて、ひざに泥をついたまま、僕の目を深く見つめていた。
「何も知らないあなたを巻き込んでごめんなさい。でも、私の願いを聞いてくれるのはあなたしかいない」
「願いって?」
「死神になって、そして金髪の、エリーという少女を、守ってください!」
突然、わけのわからない事を言って、最後にはとても感情的になったユリに僕はただ、
「はあ?」
「え?あ、確かに突然、言われても「はあ」って感じなのは当たり前だけど、私を信じて!」
ユリが頭を左右に軽く振ってうんうんと頷いてから
「今は理解しなくてもいい、ひとつだけ答えて・・・私の願いを叶えるって約束してくれますか?」
ユリが言い終わると今までよりずっと深く、深く僕の目を見つめていた。その瞳は確かに泣いていた。雨粒と涙の区別ができなくても、真っ暗な夜でも、僕は確かにその赤くなっていた目とそこからこぼれる涙を見た。
「ああ、さっぱりわからんけど約束する。だから僕に心配するな。今はユリの方が危ないから」
そう、謎の大男はまだどこかにいるはずだ。しかし、拳銃を持っていたのに先から拳銃の音が全く聞こえない、一発の音以外は一度も聞こえてこない。
「あはは、ターゲット発見だ」
僕たちの真後ろから誰かの声が聞こえた。僕とユリがあわてて立ち上がると振り向いた、その先には突然、大男がいた。
「しまっ」
言い終わる前に大男が動いた。右手の拳銃をユリの頭に向け。それは何を意味するかは言うまでもない。
右手の人差し指が引き金を引き、その後に続く「バン」という音と共に僕がユリの前に飛び出した。
そして時間がゆっくりと流れるかのように、
拳銃から出てきた弾が
空中を一直線に進んで
ユリの頭に少しずつ近づいて
僕はユリを守るために飛び出したが、
もう遅い
衝撃を受けてユリがそのまま倒れる、大男がそれを確認してから去っていくが、今あの大男はどんでもいい。
「ユリ!」
あわててユリの側にしゃがみ込んでその左手を両手でつかむ。
「約束を・・・守れ、ますか?」
「当たり前だ!」
「じゃ、ここで・・・」
そう言い、ユリが右手を僕の手に置き、それから微笑みながら弱弱しく言う
「さよ・・・なら・・・・・」
ユリが目を閉じ、そしてその体の最後の力を失った。
僕は口を開けて何かを言おうとしたが、突然ユリの体からとてもまぶしい光が出てきた。僕の目の前に突然スポットライトを置いたかのような感覚で目をつぶて顔を右腕でかぶるようにした。まぶしい光がしばらく続いてからやがて消え始めた。
目を開けると目の前にあった右手には何か変わった。
「星、印?」
手の甲にはまるでマジックペンを使ってサッサッと簡単に書いたかのように、真ん中に5角形があってその各辺に3角形がある星印があった。しかし、よく見るとそれはほくろのように皮膚の一部になっていた。
右手から目をそらし、ユリを見る。いや、ユリが『いた場所』を見た。
「え?」
周りを見渡す。いない。そう、ユリはどこにもいなかった。
「ユリ?」
名前を呼んでも返事が返って来ない。
「ユリ!」
状況がわかってきた。そして、最後の希望を失う。ユリを見つけても、それはただの遺体を見つける事に等しい。だから希望は絶望に変わる。
「ユゥゥリィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
幼じみの友人が遺体も残さずこの世から消え去った。
こんにちは、ここまで読んでくれた貴方にはありがとうございました。
小説は初めて書いたので色々と素人な感じがしたと思いますけどすみません。
さてこの『死の神』のプロローグを呼んできっと疑問に思った事がたくさんあったと思うけどそれは次回に触れたいので続きも読んでください。あ、ちなみに今回はプロローグなので本番の物語は次回から始まりますのでお楽しみに。