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雪の涙

作者: +悠

作者初の短編投稿です。一応、見直しはしましたけど誤字などがあれば指摘していただけると嬉しいです。

 「ああ~寒みぃ」


 俺、五十嵐いがらし健人けんとはそこらの進学校に通う普通の高校2年生だ。


 「煩い」


 「おい、友達への思いやりとか無いのかよ」


 「無い」


 今は登校中。一緒にいるのは七海ななみさち、同じ高校で唯一中学から一緒のヤツ。本当はもう1つ上の高校に行けたはずなのに行かなかった変人。言葉数が少なく無表情で冷めた目をしてるから、中学の時のアダ名は雪の女王。俺は毎日コイツと登校している。


 「ブレザー貸してくれとは言わないけどさ、優しい言葉の1つ位かけてくれても良いんじゃねえの?」


 「私にそれを期待するの?」


 「……できねぇよな」


 「諦めなさい」


 なぜ俺がこんな女王様と一緒に登校してるか教えよう。簡単だ、好きだから。

 いや、言っとくけど俺は正常な人だよ。決して、冷たい目で睨まれてはぁはぁ言うような変態さんじゃない。ああ見えて面倒見が良くて優しい性格に惚れたんだよ。


 「ほい、じゃあ」


 「ええ、ちゃんと5分待ってから来てよ」


 ここは学校から少し離れた場所。誤解を受けないために俺たちは、いつもここで別れて別々に学校に到着する。

 俺としては軽く辛い。




 「……どうしよう」


 うん、ホントどうしよう。

 俺が悩んでいるのはこの手紙のせいだ。今朝俺の机の中に入っていた。内容を要約すると『話があります。放課後屋上に来て下ださい』的な感じ。


ってか今時ラブレター出す人っているんだな……


 俺は好きな女子以外から告られても付き合ったりする気はないので、まぁそこまでなら悩むことはなかっただろう。でもさ、でもさ、差出人を見たらなんとまさかの学校1の美人さんなんだよ。確かに俺が好きなのは七海だけどちょっと位心が揺れるのはしかたないよね。ね!



 「何やってんだ五十嵐ぃ?お前、絶対に先生の話を聞いてないだろ?」


 「えっ……すいません」


 そういえば授業中だ。完全に忘れてた。




 授業中に決心をした俺は、とりあえず七海に相談することにした。女子と男子だが、アイツはかなり話かけすい。

 なぜかって?簡単。アイツ俺以外の友達いないから。それに俺は誰にでも優しい人的なキャラだし。

 たまに「お前ってあんなヤツにでも無条件で優しいよな~」とか言われると、ちょっと良心が痛む。だって下心MAXなんだもの!


 「なあ、七海」


 「何?」


 「簡潔に言おう。ラブレターの返事に困ってる相談に乗ってくれ」


 漫画ならブブッ!!って効果音が出そうな勢いで、七海が飲んでいた牛乳を吹いた。

 あ、言い忘れてたけど今は給食の時間ね。


 「誰から?」


 「え……狩野山だけど」


 「美人じゃない?」


 「いや、そうなんだけど……実は俺さ、好きなヤツがいてな……でも狩野山は美人だし……ってことでお前に相談なんだ」


 その好きなヤツはお前なんですけどね!

 もちろんの事、そんなこと言えない俺は頑張って声や顔に出ないように必死でポーカーフェイスを保っています。

 すると七海は、牛乳を拭いていたハンカチを俺に投げつけ、呟いた。


 「(…勝手に……しなさいよ)」


 「え?」


 「勝手にしなさいよ!!」


 机を叩きつけて立ち上がりながら七海は叫んだ。突然大きな声を出したせいでクラスの視線が集まっていることも気にせず、七海は教室を飛び出して行った。


 「七海……?」


 その後で、何人も俺に「どうした?」と尋ねてきたが、俺はただ「なんでもない」とだけ返していた。そして、七海は放課後になっても教室に帰って来なかった。






 「五十嵐君、好きです!付き合って下さい!」


 俺は今、屋上にいる。用はもちろんあのラブレターの返事だ。狩野山は、もじもじしながらもまっすぐに俺の方を向いて、言ってくれた。だから、俺もしっかり返事をしたいと思う。


 「狩野山、俺は」


 と、そこまで言いかけた時、唐突に出入り口の戸が開き…七海が……飛び出してきた。


 「止めて」


 「七海…さん……?」


 「何で、お前が?」


 七海は目尻に涙を溜め、普段なら考えられないような大声と言葉数の多さで叫んだ。


 「イヤなのよ!!アンタから誰かのことを好きだって聞くのとか、ラブレター貰ったって聞くのとか!私以外の女子といるのとか!怖いの!!アンタが私の傍からいなくなるのが!私と一緒にいてくれなくなるのが!好きなのよ!!どうしようもない位アンタが好きなの!愛でも何でもないただのエゴだけど!私は……私は!ずっとアンタの傍にいたい!!」


 「わっ、わたっ、私も好き!七海さんに負けないぐらい五十嵐君が好き!!」


 俺は思わず言葉に詰まってしまった。でも、いわなくちゃいけない。2人ともちゃんと伝えてくれたんだから俺も、伝えないと。


 「俺は、七海が好きだあああぁぁ!!!」


 それを聞いて、狩野山は納得したように屋上から走っていった。後に残ったのは俺と、七海。


 「本当よね、嘘じゃないわよね。狩野山さんを追い払うために適当なとこ言ったんじゃないわよね。ちゃんと、本当に…………私のことが、好きなのよね?」


 「ああ、俺は七海が、七海幸が好きだ」


 「私、嫉妬深いよ?すぐやきもち焼くよ?アンタが私以外の女子といるのとか見たら拗ねるよ?それに大学にでも会社にでもにアンタついて行くわよ?」


 「だから何だよ、俺はお前が大好きなんだよ。そんな事くらいで嫌いになるなんでムリだ」


 言った途端、七海が嗚咽を鳴らして泣き始めた。

 

 「何だよ…泣くなよ」


 「煩い、嬉し涙よ」


 その涙は俺が初めてみる、雪の女王の涙だった。

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